★公開日: 2022年6月9日
★最終更新日: 2022年6月11日
最新ニュースから気になる話題を、プロ目線でコメントする。
そんな今回のニュースは、先日に発表された「大豆ミート食品類」のJAS規格について、です。
実を言うとこの話題は、今の食品業界の時代の流れを知る上でも重要なキーとなるでしょう。
どうぞ、今のうちにしっかりと押さえておいてみてください。
今回この記事を読むことで、食品技術の最先端の向かう先が、それとなく見えることになるはずです。
なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)
本日の時事食品ニュース |
|

まだ始まったばかりで世間では余り理解されきれていない話だから、今のうちに押さえておくといいにゃ。
この記事の内容 |
|
Contents
執筆者紹介と本日のポイント
まずは、ご挨拶を。

…とまあ、こんなぼくがこの記事を書いてます。
そして今回の一言ポイントは、ハイ。
「大豆ミート食品は二種類ある、それは動物性原材料を使わないものと、それ以外だ」、です。
んじゃ、早速ながら本題、行きましょう!
日本初の大豆ミート食品類JAS規格
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)
「食品業界ニュースピックアップ」。
食品衛生関連のニュースに対し、専門家としての解説を加えていく、こちら。
本日のお題は、前回同様「大豆ミート食品類」について制定された新たなJAS規格について、その内容や解説をしていきましょう。
まず、そのニュース紹介。こちらです。
【大塚食品 肉不使用「ゼロミート」ハンバーグ2品で“大豆ミート食品類JAS”認証取得】
(2022年05月23日)
大塚食品は5月18日、「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」と「ゼロミート チーズインデミグラスタイプハンバーグ」の2品において、日本初となる「大豆ミート食品類JAS」の認証を取得した。8月以降に、JASマークが付いた「大豆ミート食品」のゼロミートに順次切り替わる。…(以上引用)
(食品産業新聞社)

ええと、少しだけ簡単に解説しておきます。
まず、「大塚食品」さんのこれら二品の「ゼロミートハンバーグ」という商品は、日本で最初の「大豆ミート食品類JAS規格」の認証取得商品として、先月、報道発表されました。
こちらはいずれもそれらのうち、「大豆ミート食品」として認証されています。
で、そのJAS規格、「大豆ミート食品類JAS規格」が制定されたのは、実は今年2月のこと。
つまり、どうやら実は昨年から、この「大豆ミート食品類JAS規格」というのは、制定に向けて動いていたのです。
正直、食品表示の面でしか食品衛生に交わらないこっちの話は、実はそこまで詳しくないのですが(ぼくの専門ジャンルは厚生労働省管轄なので)、どうやらこの「大豆ミート食品類JAS規格」というのも、かなり「大塚食品」さんが先導になって農水省側にけしかけ、進めてきたお話のようです。
ここらのより突っ込んだゴリゴリなお話は、ぼくのような「食品衛生のサワリ」程度ではない、食品表示ガッチガチな専門の方々がお詳しいでしょう。
そこらへんの諸事情は、ごめんなさい、他にお譲りいたします。

「大豆ミート食品類」とは
さて、そんなわけで前回にてJAS規格がわかったところで、この「大豆ミート食品類」についてもう少し説明していくとしましょう。
そもそも「大豆ミート食品類」とは、どうやって作られるものなのですしょう。
その製造工程を追うことで、自ずと性質が見えてくるこちでしょう。
まず。
「大豆ミート食品類」の主な原料は、その名の通り、大豆です。
そして、それを加工することで、「大豆ミート食品類」の原材料である「大豆ミート原料」を作ります。
つまりここで言っている新規JAS規格の対象である「大豆ミート食品類」とは、そもそも「大豆」を加工することで作られる「大豆ミート原料」から作られるものなのです。
ここ、まずはポイントです。
何を言ってるんだ…となりそうなので、まとめておきますね。
「大豆ミート食品類」 |
|
つまり、原料である「大豆」を加工して「大豆ミート原料」が作られ、それを原材料にして「大豆ミート食品類」が作られる、というのが大きな製造意上での流れです。
おっと。もう一つ。
ここでぼくは、「大豆を加工して」と言いましたが、この「加工」にも規定があって、次のようないずれのことがそれらに含まれる、とされています。
つまり上の枠内「1.」での【加工(加熱・加圧など)】には、正確には次のようなことが含まれている、というわけです。
まあ、これについては一応「そういうものがあるのだ」というくらいに思っていればいいでしょう。
「大豆ミート原料」への加工とは |
|
さて。
こうして「大豆」が加工された「大豆ミート原料」に、調味料を加えてハンバーグやミートボール等のような肉状の形状へと加工したものが、いよいよこの「大豆ミート食品類」となります。
まとめると、つまり「大豆」という原料が、上の条件で加工され、場合によってここで添加物や調味料(卵や乳などもここに)が加えられて「大豆ミート原料」になる。
それが肉製品型に加工されたものが、「大豆ミート食品類」であるという。
この流れは、今回の大豆ミート食品類JAS規格において、結構ながら重要です。
というのも、「大豆ミート食品類JAS規格」というのは、言ってしまえば「大豆だけで作られているのか、そうじゃないのか」を区別するための法的な「取り決め」の整備、だからです。
なので、そこにおいて原材料がどうなっているのか、何を使っているのか、その結果に商品がどうなるのか、を規定することは、この大豆ミート食品類JAS規格の最大の根底です。
おっと、勿論この後に、そこにおいてどのように規格が区分されているか、を解説しますのでお待ちください。
ちなみに、この「大豆ミート食品類」以外の、動物性原材料が含まれないもの、例えば豆腐や湯葉や大豆粉(大豆ミート食品の原料になることもあり)などは、「大豆加工品」として区別されていたりします。
これも一応ですが、頭の片隅にでも置いておいてください。
「大豆ミート食品」と「調整大豆ミート食品」
さて。
サクサク行くとしますが、この「大豆ミート食品類」には、2つの基準が存在します。
一つが「大豆ミート食品」であり、もう一つが「調製大豆ミート食品」です。
大豆ミート食品類 |
|
先にも言ったように、原材料に何が使われているのか、その結果商品がどうなっているのか、がこのJAS規格制定のポイントです。
では一体それが、どうなっているのか。
それが、これです。
これら「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」の違いは、例えば大豆たん白質含有量の違いだったり、大豆ミート原料のアミノ酸スコアだったりと幾つかあるのですが、最大の違いはやはり、原材料に卵や乳といった動物性原材料を使うかどうか、といったところでしょう。
「大豆ミート食品」は原材料に「動物性原材料及び、その加工品」を用いないよう規定されています。
しかしこれに対し「調製大豆ミート食品」は少しばかり基準が緩やかで、「動物性原材料」である卵と牛乳(食用鳥卵及び乳)の使用と、調味料としての加工品は使ってもいい、としています。
前の項で「大豆ミート食品類」はどう作られるのか、を枠内で解説しましたよね。
これ。
「大豆ミート食品類」 |
|
これらの2つの【加工】の段階、特に「2.」の【加工】の段階において、ざっくり言うなら卵や乳を用いないのが「大豆ミート食品」であり、ここで卵や乳が加えられるのが「調製大豆ミート食品」だ、ということです。
なお、なんでも市場の大豆ミート商品のほとんどがこの卵や乳を用いた「調製大豆ミート食品」なのだそうです。

大豆ミート食品類の表示方法
ここはもう、サクサクっと結論だけ、いきましょう。
これら「大豆ミート食品」と「調製大豆ミート食品」は、それらの製品に次のような表示がなされるようにされています。
大豆ミート食品類の表示について |
|
このように大豆ミート食品類には、「大豆肉様食品」という表記方法も各々ゆるされています。
そして、これらを容器包装の見やすい箇所へ記載することと、加えて「肉ではありません」のようにこれらが食肉ではないことを、あわせて見やすい箇所に記載する、というのがその表示要項となっているようです。

日本初の大豆ミート食品類JASとなった大塚食品
いかがだったでしょうか。
ここまでのお話で、新たなJAS規格である「大豆ミート食品類」をおわかりいただけたところで、やっと冒頭の話題に戻るとしましょう。
はい、振り返ると。
「ボンカレー」で知られる「大塚食品」さんの大豆ハンバーグ2品が、この大豆ミート食品類JASの初の認証取得となった、というのが、先月下旬のニュースでした。
ウチでも先週、ウィークリーニュースで扱いましたね。
これです。
いかがでしょうか。
上の記事にも書いたように、このニュースをわかりやすーくイチから解説すると、なんとここまでかかるんですよ!(笑)
おっと、それはさておいて。
今回、大塚食品から出された大豆ミート食品類JASの認証取得商品は、次の二品です。
「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」と「ゼロミート チーズインデミグラスタイプハンバーグ」。

これらの商品の、右上を見てください。
いずれも、アミノ酸スコア100、動物性原材料不使用、大豆たん白質含有量10%以上、の条件を満たした「大豆ミート食品」であり、それをあかすように、「特色JASマーク」が表示されています。
そう、前回に解説したこれです。

これが、この「大豆ミート食品類JAS規格」を表しています。
これね。
本当は、近所のスーパーなんかで手に入ったら、おまけで簡単な食レポしようかなって思っていたんですけど、ごめんなさい。
大手スーパーを三店舗ほど回ってみたのですが、見当たりませんでした。
で、そこで実感したのですが、やっぱりあれですよね、
代替肉、大豆ミートというのは、この現状段階ではまだやっぱりスーパーなどでは「はじっこにちょろっとお情け程度に置いて数品」程度なんだな、と。
確かに市場に出まわり始めたとはいえ、これから、という存在なんでしょうね。
勿論、これからどう広がるか、がこの大豆ミートビジネスなのでしょうが。

まとめ:大豆ミート市場の実情
今回は、新たに制定された大豆ミート食品類JASについての解説を行いました。
実はこの日本の大豆ミート対応は、欧米に比べてかなり出遅れてしまっている、というのが実情です。
というのもベジタリアン文化が浸透していない日本では、その消費量も少ない状況であり、市場ニーズ自体がそれほど高くはなかった、という理由もあったからです。
しかし2010年代中頃くらいから、日本でも大手の参入が続いており、ようやく活気づくものとなってきました。
モスバーガーが大豆ミートのパティを使ったハンバーガーを出したのが、2015年。
これに追随して、ロッテリアやフレッシュネスバーガー、バーガーキングなども商品を投入。
同時期、大手味噌メーカーのマルコメも、大豆ミートを商品化。
こうしてこの頃くらいから、大豆ミート市場が日本でも注目されていくようになり、その数年後には日本ハムや伊藤ハムなどの大手加工肉メーカーも、ここに加わっていきます。
今ではファミレスなど大手外食チェーン店でも、こうした大豆ミートがメニューに見られるようにもなってきました。
また上ではスーパーマーケットなどでの扱いに「これから」のようなことを書きましたが、それでも売り場の拡充が進んでいるのは事実のようで、このようなニュースもあがっています。
【イトーヨーカ堂、大豆ミート販売3割増 売場位置もポイント】
(2022年06月10日)
イトーヨーカ堂で大豆ミートの販売が好調だ。
今年1~4月の売上高が前年比3割も伸長している。健康志向で人気が高いほか、売場の位置も販売が伸びたポイントだ。精肉売場のひき肉コーナーと隣接し、ひき肉タイプの大豆ミートとの併売効果も高めている。…(以上引用)
(日本食糧新聞)
今回のこの農林水産省によるJAS規格制定も、こうした日本市場の動きにあわせての行政対応です。
以上、このように、今後さらに注目の集まるであろうこの大豆ミート。
まずは、ここらへんを基礎知識として改めて昨今のプラントベース食品業界を眺めてみると、色々と見えてくるものもあって面白いでしょう。
それでは。