★公開日: 2022年6月8日
★最終更新日: 2022年6月8日
最新ニュースから気になる話題を、プロ目線でコメントする。
そんな今回のニュースは、やっぱりここでやっておかないわけにはいかないでしょう、「大豆ミート食品類」のJAS規格について、です。
え、何それ、知らない?
うん、でも大丈夫。今なら全然、大丈夫。
でも差をつけたいなら、今、ここですよ!?
というわけで、ここでしっかりとこの「大豆ミート食品類」の基礎知識を押さえておいちゃいましょう。
なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)
本日の時事食品ニュース |
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今のプラントベース食品業界の指針を知る上でも、この話は押さえておいて間違いないんだにゃ。
この記事の内容 |
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執筆者紹介と本日のポイント
まずは、ご挨拶を。

…とまあ、こんなぼくがこの記事を書いてます。
そして今回の一言ポイントは、ハイ。
「時代は、大豆!」、です。
んじゃ、早速ながら本題、行きましょう!
大事な大豆
(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)
「食品業界ニュースピックアップ」。
食品衛生関連のニュースに対し、専門家としての解説を加えていく、こちら。
本日のお題は、「大豆ミート食品類」について制定された新たなJAS規格について、その内容や解説をしていきましょう。
まず、そのニュース紹介。こちらです。
【大塚食品 肉不使用「ゼロミート」ハンバーグ2品で“大豆ミート食品類JAS”認証取得】
(2022年05月23日)
大塚食品は5月18日、「ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ」と「ゼロミート チーズインデミグラスタイプハンバーグ」の2品において、日本初となる「大豆ミート食品類JAS」の認証を取得した。8月以降に、JASマークが付いた「大豆ミート食品」のゼロミートに順次切り替わる。…(以上引用)
(食品産業新聞社)

「大塚食品」さんといえば、大塚製薬を中心とした大塚グループの一企業であり、レトルトカレーの「ボンカレー」で知られるレトルト食品メーカーです。
その「大塚食品」さんが、今回日本で初めて「大豆ミート食品類」のJAS規格を認証取得した大豆ミートの商品をリリースしたのです。
…てちょっとこれ、ふーん…で?って感じじゃないですか。
確かに言ってしまうと地味めなニュースなんで、注意しとかないとスルーしかねない。
でも実はこれ、時代を読む上で、結構重要です。
とはいえこれをすべて解説していくとなると、「肉じゃないのに」そこそこ複雑になってしまう。
そこで今回は、ぼくが極力わかりやすく説明していきますね。

実は色々ある大豆ミート
昨今注目されている次世代の食品技術の最先端、フードテックの主役といったら、それは代替プロテイン(タンパク質)、あるいは代替肉と呼ばれるような「大豆ミート」であることは、すでによく知られていることでしょう。
ぼくの専門ではないので余りここを広げませんが、2050年、ほぼほぼ間違いなく97億人に世界人口が達する。
そんな世界100億人時代に、その胃袋をどう満たすのか、というのがその話の始まりです。
しかもこれは、何も遠い外国の話などではなく、ここ日本だって他人事などでは全くない、ということです。
つまり近い将来にも、畜肉が食べられない。食べられてもかなり高い値段のものになる。
これは十二分に考えられる話であり、…というか多分、そうなるのでしょう。
と同時に、このことは斜陽の日本産業において食品工業技術を世界に誇って「売り」に出せる、残された少ないリソースにもなりかねません。
そこで、注目されているのが、この大豆ミート、です。
大豆ミートは、一般的に大豆肉などとも呼ばれる、いわゆる「プラントベース食品」の代表的な一つです。
「プラントベース食品」とは、植物性由来の原材料を使って畜産物や水産物に似せて製造される食品のこと。
特にお肉のプラントベース食品については、「プラントベースミート」なんて呼ばれたりもしています。
勿論、「プラントベースミート」の原料は、大豆だけではありません。
他にも例えばグルテン(小麦粉)を使ったり、あるいはえんどう豆を使ったりというものもあります。
ですが、しかしながらやっぱりその代表原料はといえば、大豆でしょう。
例えば、大豆ハンバーグ、みたいなものですね。
しかし、です。
一重にこの大豆ミートと言っても、世には様々な種類のものが溢れているのです。
例えば、こんなふうに。
あれもこれも大豆肉(プラントベース食品) |
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いかがでしょうか。
このように、これらを一緒くたに大豆ミートとしても、その中身はかなり違ってくることになります。
一般的に「大豆ミート」と言われたら、なんとなく大豆オンリーで作られたもの、という想像が最初に浮かぶかもしれません。
ですがこれまで市場で市販されてきた大豆ミートには、この3つ目、つまり牛肉などの食肉を原材料に含んだものが様々溢れていた、というのが実情でした。
つまり、例えば「大豆でつくったハンバーグ」と商品に記載されていながら、その実これらがごっちゃに製造販売されていたのがこれまでだったわけです。
そこでこれらを法的に整備し、行政的にも円滑な大豆ミート市場の活性化のベースを作ろう、というのが今回の目的です。
まずは行政として、大豆ミートに対する「取り決め」を作ろう。
そうした動きが、今回のこの話のスタートになっています。
その結果、「大豆ミート食品類」なる大きな括りが作られました。
これは、今の市場にあるような牛肉などの畜肉(動物性原材料)を混ぜ込んだものではない、大豆や大豆加工品(大豆たん白、脱脂加工大豆)を原材料としていることがポイントです。
これについては、後でもっと詳しく説明するとしましょう。
そうすることで、これまでのような畜肉を含んでいながらも「大豆ミート」をちゃっかり(というわけでもないのでしょうが)名乗っていたものは、これからは「大豆ミート食品類」を規格上名乗れなくなりました。
これによって、まずは日本市場においてはこれまでアバウトだった「植物由来の大豆ミート」を、法的にしっかりと規定しよう、というのがこのJAS規格の狙いだ、というわけです。

そもそもJAS規格って何?
実はこうした「大豆ミート食品類」に対するJAS規格というのは、今年の2月に制定されたものです。
おっと、食品表示などに疎いと、そもそも「JAS規格って何?」となるかもしれませんね。
「JAS規格」とは、農林水産省が定めている「日本農林規格」のことです。
Wikipediaから引用すると、「JAS規格」、つまり「日本農林規格」とはこのように解説されています。
日本農林規格(にほんのうりんきかく)とは、農林物資の規格化等に関する法律(JAS法、1950年公布)に基づく、農・林・水・畜産物およびその加工品の品質保証の規格である。
英語: Japanese Agricultural Standard であるため、一般に頭文字の『JAS(ジャス)』と略されたり、その規格をJAS規格(ジャスきかく)と呼ぶことが多い。
この規格に適合した食品や加工食品の製品には、JASマークと呼ばれる規格証票を付した出荷・販売が認められている。
うーん、よくわからない。
んじゃ、これはどうでしょうか。
皆さん、スーパーやコンビニなどで、食品などに付いているこういうマークを見たことはありませんか。

いや、食品に限らず、様々なところで見たことがあるんじゃないかと思います。
これは「JASマーク」といって、国がある一定の基準以上の品質を備えていることを認めることでつけることが許されるものだったりします。
まず、これが基本の「キ」、です。
JASマークの基準となっている規格というのがあります。
それが、農林水産大臣が定めた品質基準である「日本農林規格」です。
通称、「JAS規格」。これなら聞いたことがあるかもしれませんね。
このJAS規格の法的根拠になっているのが、「JAS法」。
正確には、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」といいます。
これらによって様々な市場の製品が、「JAS規格」として定められているのです。
ちなみにこの大豆ミート食品類JASを認証取得すると、こちらのJASマークを表示することが出来るようになります。

これは「特色JASマーク」と言って、地鶏肉や熟成ハム、あるいは低温管理流通食品など、ある特色を備えた商品に対し、その一定規格を満たしている証として使用されるものです。
実を言うとこれまでは、それら各々に定められたJASマークがあったのですが、2018年にこのマークに統合されたのです。
今回の「大豆ミート食品類」のJAS規格も、これら同様にこの「特色JASマーク」に統合されている、というわけです。
まとめ
ふう、少し長くなってしまったので、ここらで一旦区切るとしましょう。
今回は、前編、後編と二部にわたって、新たに制定された「大豆ミート食品類」のJAS規格についてお話させていただいています。
そしてこちら前編では、大豆ミートのこれまでの実情と、JAS規格について、簡単にお話させていただきました。
少々イントロ的な話が、この前半になってしまいましたが、しかしこれらの前提としての話を理解していないと、いきなりやれ「制定された大豆ミート食品類JAS規格にはこれこれとあれあれがあって…」と言われて、「いや何言ってっかよくわかんない」となりがちです。
そこでここでは丁寧に、この「大豆ミート」とは何かから始まって、JAS規格の基礎話をさせていただくことにしました。
というわけで後編では、ようやくの本題。
これらをベースに、「大豆ミート食品類」のJAS規格とはどんなものかについて、解説していこうと思います。それでは。