★公開日: 2022年6月2日
★最終更新日: 2022年6月2日

毎週水曜日は、ウィークリーニュースチェックの日。
出来るだけ、ここ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをピックアップしていきます。

食ネコ
食ネコ
Gブログ始めて割と一杯一杯なんだけど、ウィークリーチェックくらいはやっていきたいにゃん。

はい、助手を雇いました。笑
食ネコ。食品衛生に詳しいうちのサポートヌコ役ってことで、時々顔を出してはポイントを伝えてくれたり、時に相談役までこなします。
今後共によろしくです。

 

スタバでYoutuberが異物混入遭遇

先週、Youtuberのサワさんが高速道路のパーキングエリアにあるスターバックスで購入したフラペチーノに、異物混入を発見して話題になった、との報道がなされていました。

【スタバのフラペチーノに「異物混入」 YouTuberサワヤン・サワ報告…運営「再発防止に努めたい」】
(2022年05月26日)
 人気ユーチューバー「SAWAYAN(サワヤン)」のサワさんがツイッターで、コーヒーチェーン大手スターバックスコーヒーで購入した「キャラメルフラペチーノ」の中に異物が混入していたと報告した。
 サワさんは異物について「食品品質保持剤」としているのに対し、スターバックス コーヒー ジャパンはJ-CASTニュースの取材に対し「断定することはできかねますが、おそらく包装材のよう」だとしている。…(以上引用)
(J-CASTニュース)

上の記事を見る限り、今回の混入異物は「食品品質保持剤」となっています。
ぼく自身、このYoutubeを見てないので定かではないのですが、要するに脱酸素剤の類のものじゃないですかね。

この「脱酸素剤」というのは、主に常温保存される密閉包装の中の食品のカビをいかに発生させないか、そのために包装内に入れるものです。
有名どころでは、三菱ガス化学さんの「エージレス」というものです。この業界では、「セロテープ」とか「バンドエイド」、「宅急便」みたいに、登録商標自体がその一般名になっているくらいにメジャーです。

挿画:エージレス(脱酸素剤)
三菱ガス化学(株)

そもそもカビというのは、空気がないと発育しません。
そこで長期常温保存の食品に対し、カビを発生させないように、包装内の酸素をなくしてしまえばいい。
それがこの「脱酸素剤」の役目です。
中の鉄の働きで酸化によって酸素をなくすんです。

詳しくはこちらの記事にありますので、興味があれば読んでみてください。

さて、こんなものがどうしてフラペチーノに混入したのかは不明とのこと。

スタバだったらクッキーの類とか、そうした何か小包装のものに入っているようなものなので、普通に考えてもフラペチーノの原材料に使うものではない。
であれば、例えばそれらから出した脱酸素剤を「チョイ置き」してしまった結果、落下して入ったのか、いずれにせよよくはわかりません。

でもこれは明らかに店側の問題となりそうですね。

参照画:スターバックス
スターバックスコーヒージャパン

三幸製菓が火災後初の記者会見

本日、今年2月に火災を発生させてしまった三幸製菓が、事故後初となる記者会見を行ったことで報道にあがっています。

【遺族「まだ納得はしていない」 三幸製菓 工場火災後初の記者会見】
(2022年06月01日)
 今年2月、新潟県村上市の三幸製菓荒川工場で起きた6人が死亡した火災で三幸製菓は5月31日、記者会見を開きました。会見を見た遺族はさらなる真摯な対応を求めています。…(以上引用)
(NST新潟総合テレビ)

この件については、すでに色々と書いているのでそちらを読んでいただければ、と思います。
これ、今読み返してみても、我ながらいいこと書いているな…(笑)。

さて、火災から三ヶ月が経過していますが、未だ工場再開がストップしている、というこちら。

遺族の発言というニュースの報道記事に対し、ぼくがあれこれここで言う気もないですけど、でも基幹工場を止めるというのは企業にとっては死活問題です。
事故は事故として、それと工場再開は全く別の話。

三ヶ月工場の稼働ストップとなると、製造メーカーとしては経営上の大きな痛手。
早くの再開を期待します。


毎日新聞

ヒラメでのクドア食中毒で38人が症状

ここ数日、ヒラメによる寄生虫の食中毒が続いています。

まずは5月28日、群馬県でアニサキスによる食中毒が発生。

そしてその後、今度は新潟県で同じ寄生虫による食中毒ですが、こちらはクドア。
まあ、ヒラメの刺身とくればクドア、と浮かぶところですよね。

【ヒラメに寄生“クドア食中毒”が発生 38人が下痢や嘔吐の症状も命に別条なし】
(2022年05月30日)
 新潟市保健所は30日、ヒラメに寄生したクドアを原因とする食中毒が発生したことを発表しました。
25日、新潟市西蒲区のホテル・富士屋から「24日の宿泊客の5人に嘔吐や下痢の症状がみられ、そのうち3人が救急搬送された」と新潟市保健所に連絡がありました。
 保健所が調査した結果、23日と24日に宿泊し、夕食を食べた114人のうち、38人が嘔吐や下痢など消化器症状があることが判明しました。
 患者3人からクドア・セプテンプンクタータという寄生虫の遺伝子が検出され、夕食のヒラメの刺身に寄生していたものと断定。…(以上引用)
(NST新潟総合テレビ)

しかもこのように割と珍しく、クドアの中規模食中毒です。

このところクドアの食中毒というのは、実は減少傾向です。
その要因は明確にはされていませんが、研究者などによれば、国内での流通対応の向上、そして検疫所対策が高まったため(韓国産の養殖ヒラメが特に問題となりがちなため)ではないかと言われています。

とくにコロナ以降、大人数での食事や宴会の自粛が進んだせいか、ここ2年くらいは目に見えて少なめな印象です。
昨2021年の食中毒統計でも、年間で4件。
過去10年のピークだった2014年が42件だったのに対して、1/10以下です。

ちなみに患者数で言えば、その昨2021年の年間総患者数14人を、この一発で抜き上げた感じです。

簡単に説明だけしておくと、クドアとは「クドア属」の粘液胞子虫の一種で、正式名を「クドア・セプテンプンクタータ」と言います。
00年代終わりくらいまで、しばらくヒラメの刺身による原因不明の食中毒が発生していたのですが、2010年頃になって、どうやらこいつが原因だということがわかりました。

このクドアについては新しい食中毒要因の寄生虫であり、未だよくわからないことが多い存在です。

参照画:クドア・セプテンプンクタータ
クドア・セプテンプンクタータ(広島県)

神奈川県の学校給食でウェルシュ菌の集団食中毒発生

神奈川県座間市の中学校での給食で、ウェルシュ菌の集団食中毒が発生しました。

【座間市の中学校で249人食中毒 学校給食が原因】
(2022年05月26日)
 神奈川県座間市の中学校で、学校給食を食べた生徒と職員、あわせて249人が腹痛や下痢の症状を訴え、県の保健所は調査の結果、給食を原因とする食中毒と断定し給食を提供した業者を25日から営業禁止としました。…(以上引用)
(NHK)

まあ、毎回のことかな。
給食の大規模食中毒と言ったら、病原大腸菌か、あるいはこれ。
ウェルシュ菌についての記事は、こちらをどうぞ。


ウェルシュ菌(Wikipedia)

森永乳業、ヒ素ミルクで慰謝料求め提訴

最後にこれ、いっておきましょう。
大阪で、森永乳業に対し、補償がなってないと5500万円の慰謝料を求めて提訴がなされた、というこのニュース。

今頃になって「森永ヒ素ミルク事件」!?と思ったら、60年以上経ってからの慰謝料提訴だという。

【ヒ素ミルクで森永乳業提訴 慰謝料求め、脳性まひの女性―大阪地裁】
(2022年05月25日)
 1955年に森永乳業の粉ミルクにヒ素が混入し、乳児らに健康被害が出た「森永ヒ素ミルク事件」で、脳性まひになった大阪市内の女性(68)が25日、現行の救済は不十分だとして、同社に慰謝料など約5500万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
(略)
1974年に救済団体が設立され、女性も月約7万円の手当を受給しているが、原告側は訴状で、「救済には全く足りず、(同社から)慰謝料は一切受け取っていない」と主張している。
(略)
女性は提訴後に大阪市内で記者会見し、「(同社は)ここまでの障害を負わせたのに補償が全くなっていない」と訴えた。…(以上引用)
(JIJI.COM)

うーん…。
なんとも言い難いですね、これは…。

でも森永乳業という企業が、この戦後日本の最初にして最悪の「食の安全安心」事件の一つである「ヒ素ミルク事件」を起こしてしまったことに対し、真摯な姿勢を取ってこなかった、とはぼくは全く思いません。

事実、森永乳業はいまだにこのことを忘れないよう経営活動を行っているし、だからこそ他社の大手乳業メーカーと違って未だ液体ミルクの製品開発や商品販売には最後まで慎重でした。
昨年、江崎グリコがとっくに先陣を切り、そこに雪印が続いた、そのあとでようやく市場参戦したのが森永です。
これはそのトラウマと反省からのものに紛れないでしょう。

ちなみに、このニュースに、「月約7万円の手当を受給」とありますね。
どういうことか。

これは、森永乳業が事件発生後、その後遺症に悩む被害者に対して生活保障の支援活動として設立した協会「ひかり協会」からの手当のことでしょう。
このように森永乳業は、この「ヒ素ミルク事件」という暗黒の歴史に対し、60年経った今でも人知れずひっそりと支援活動を継続しているわけです。

食品大手とはいえ、一企業が、宣伝活動一切なくひっそりと、終わりなく、60年以上ですよ?
少なくともぼくは、この姿勢を「反省がない」とは思いません。
それでも果たして「補償が全くなってない」といえるのか、その評価はこの記事からだけでは一面的には出来ないところだというのがぼくの印象です。

あれですね、ちょっとどこかでこの「ヒ素ミルク」事件については、改めてまた書くことにしましょう。

参照画:森永ヒ素ミルク事件
森永ヒ素ミルク事件(毎日新聞)

今週はこんなところかな。

後日、より詳しく幾つかピックアップして、別途取り扱います。
クドア・セプテンプンクタータについても、やっぱり別記事を作っておきたいかな。
結構面白いんですよね、アニサキスとはまた違う側面なんかがあるので。
それでは。

 

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