★公開日: 2022年5月23日
★最終更新日: 2022年5月24日
もし、食中毒の専門知識に長けた食品衛生屋のうちの冷蔵庫に保存していた豆乳が、臭いが発して酸っぱくなっていたらどうするのか。
実際に今朝起こったばかりのお話を早速ながら、ここでするとしましょう。
なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)
この記事の内容 |
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豆乳がどろっとしている!?
(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)
今朝のことです。
日曜の朝とはいえ、いつも通りに朝タスクを片付け、そしてその最後にはこれまたいつもどおりの朝食を。
とはいえぼくはそんなに朝はご飯を食べません。
まずは、ヨーグルト。
ちなみにぼくは、無糖派。
そして毎朝、ここにブルーベリーを加えることで、さらなる免疫効果を狙うのが、ぼく流です。
そして、続いてタンパク質補充のために、プロテインを。
これもまた、ぼくの毎日の日課となっている朝食(?)です。
ちなみにぼくは、行き着いて今のところマイプロテインの「IMACT ホエイ・プロテイン」を愛用しているのですが、「それよりこっちのがいいよ」というのがあれば教えてください。
さて、いつも通り、こいつを豆乳で割る。
そのため、ここ数年、高薙家では豆乳は欠かせません。
まずはいつもの豆乳を、いつものシェーカーボトルに注ぐ。
そう、プロテインより先に豆乳を注いでおく。
ぼそぼそと溶け切らないプロテインを最初飲んでいたときに覚えた、ちょっとしたライフハックです。

……………と。
えっ………?
いやいや。
………………。
ええっ!?
やだこの豆乳、まるでさっき食べたばかりのヨーグルトみたいに、めっちゃドローっとしてんですけど。
何これ?

これって、
もしかして…
豆乳…
腐ってるぅーーーーーっ!?

豆乳が無菌である理由
さて。
実のところ、これまでの流れというのは、もうすでにぼくのTwitterで報告していたりまします。
その、今朝のTweetが、こちらです。
開封して三日、プロテイン用に豆乳を出して注ごうとしたら、どろどろになってて驚く。
検体を採取し、早速ながら官能評価。
外観、どろっとヨーグルト状、変色なし。味覚、やや酸味と酸臭あり。
乳酸菌や酵母などの変敗微生物による品質劣化と推測されるなど。
そんな食品衛生屋の平和な日曜朝。 pic.twitter.com/onJZf8sbwC— 高薙所長 (@MipYnORP8tDUCf3) May 21, 2022
今回はちょっとこれらを食品衛生的に追っていこうかな、と思ってます。

まず。
問題となったのが、こちらの豆乳。
賞味期限は、6月19日。
まだずいぶん先です。
一般的な豆乳は、一般的な牛乳などとは違って、未開封であるならば常温での長期間保存が可能である場合が多いです。
それは製造工程上で、牛乳よりも高温で滅菌されるため、無菌状態が維持出来るから、というのが一般的な解説です。
脱線してしまうので、牛乳と加熱殺菌の話はどこかで別にもっと詳しくお話します。
ですが、大手乳業メーカーの一般的な牛乳というのは、一旦85℃で予熱された後に、120℃で2秒の超高温での殺菌を(多くは2回)行うことで「ほぼ無菌化する」ことを目的とした(逆に言えば、有用菌をも死滅させてしまい、風味や質を犠牲にさせる)、いわゆる「UHT乳」、「超高温滅菌牛乳」というものです。
でも一般の大手メーカーの牛乳は、冷蔵保管が基本です。
一応、常温保管の牛乳というのも世にはあるのですが、皆さんが知っての通り、いわゆる普通の牛乳というのは冷蔵保管です。
これは牛乳の風味を保つには、120℃2秒の加熱殺菌までしか出来ないからです。
ですが、豆乳の場合は、さらに高い温度での殺菌でも風味が落ちづらい、とされています。
具体的には、135〜150度で1〜3秒とされているらしい、となるとそのぶんだけ滅菌の効果が期待できます。
結果、そのぶんだけ微生物の繁殖の危険性が低くなるため、常温での保存が可能になります。
ちなみに、一昨年、あるいは昨年あたりから、実は常温長期保存可能の豆腐が注目を集めています。
例えばこの、「さとの雪食品」さんが昨2021年に出した豆腐。
量販品で初となった長期間(120日間)常温流通が可能というこちら。
【常温で120日間保存可能な「ずっとおいしい豆腐」5月1日(土)より全国の量販店にて発売開始】
~国内初!量販店流通の常温豆腐~
(2021年04月15日)
四国化工機株式会社のグループ会社である、さとの雪食品株式会社(徳島県鳴門市大津町、代表取締役社長:植田 滋)は、常温で120日間保存可能な「ずっとおいしい豆腐」を、2021年5月1日(土)より全国の食品スーパーなどで発売いたします。
国内の量販店で、豆腐が常温流通するのは初めてとなります。…(以上引用)
(PR TIMES)
これなんかそうですね。
似たようなものはイオンのOEMでも確か出されているんじゃなかったかな。
いずれにせよ、これもやはり豆乳と同様で、高温殺菌と無菌充填しているがゆえに常温保存が可能になっているのです。

豆乳はどうやって造られるのか
さて、ここでもう少し豆乳について追っていくとしましょう。
大丈夫、ちょっと専門的にはなりますが、そんな難しくはありません。
まず、「豆乳として売りたいならこれを守れよ」という法的な規格基準は、農林水産省による「日本農林規格」によって定められています。
それによると、「豆乳類」は、原材料や大豆固形分などによって、次の「豆乳」、「調整豆乳」、「豆乳飲料」の3つに区分されています。
「豆乳類」の区分 |
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細かい規格内容はそれほど重要ではありません。
とりあえず豆乳というのは、「無調整豆乳」=「豆乳」と、「調整豆乳」というのがある、とそこを理解してみてください。
ちな、今回うちで問題になったぼくの豆乳の製品表記は、これ。
大豆100%使用の、「豆乳」です。

「有機大豆」とりますからこれ、「有機JAS」規格対応ですね。
豆乳の下のほうにも書いてあって、JASマークが入ってます。

なお「有機JAS」に関しては、下の記事をご参照ください。
さて、話を戻して。
この豆乳には、上のほうに大きく「無調整」と書かれていますよね。
では、この豆乳の「無調整」と「調整」とは一体何か。
スーパーなどでもこれら2つはよく目にしますよね。にも関わらず、実はあまりよくわかってない方も多いんじゃないかな。
このように、ぼくの豆乳は「無調整豆乳」。つまり原材料に大豆と水のみを使用した、大豆本来の風味の豆乳です。これが「豆乳」と表示が許されている豆乳類です。
つまり「無調整豆乳」とは、日本農林規格でいわれるところの「豆乳」として、原材料は大豆のみ、調味料や添加物などの添加物を加えてはいけない、というものです。
かたや「調整豆乳」というのも、スーパーで目にしますね。
こちらには、大豆と水に加えて、カルシウムや砂糖をはじめとした調味料や添加物が加えられ、風味を飲みやすくしたり栄養調整などをしています。
とはいえ、この加えていい調味料というのも、上の日本農林規格に定められています。
また原材料として、大豆に加えて、脱脂加工大豆なども使用が許されているのが違いです。
さらに、これら2つの豆乳類に加えて、豆乳にコーヒーやフルーツなどで風味を加えた「豆乳飲料」というものもあります。
ただしこれについても、その豆乳の使用量が定められているというわけです。
なおこうした豆乳の表示というのは、「豆乳類品質表示基準」によって定められています。
では、これらの製造工程というのはどうなっているのか。
当然ながらそれら各製品によっても加えられたり省かれたりなどかわってくるのですが、しかし。
主な製造工程は業界団体である「日本豆乳協会」さんのところにあったものが非常にわかりやすいため、拝借させていただくとしましょう。

概ねこのような工程です。
まず原材料である大豆を粉砕(微磨砕)して粒状にしたら、これを加熱することで、大豆の酵素を失活させます。
これによって大豆本来の青臭さなどを抑えたら、次はそれを煮た煮汁(呉汁)を遠心分離して、豆乳のもとを作ります。
ここで除去される繊維質が、いわゆる「おから」です。
そしてこれを120℃以上で高温瞬間殺菌するのです。
上でも書いたように、一般的に豆乳の殺菌温度は135〜150度で1〜3秒です。
さらにこの殺菌で生じた加熱臭を、減圧脱臭機によって脱臭し、冷却。
均一化を経てから、無菌容器に無菌充填する。
ざっくりと言えばこんな具合に、豆乳は製造されることが多いです。

まとめ
今回は、前編、後編と二部にわたって、ぼくの身に実際に起こった豆乳がいたんでしまったことについて、食品衛生の専門家の立場からどのように対応し、評価したのかについてお話させていただいています。
そしてこちら前編では、豆乳の基礎知識について、簡単にお話させていただきました。
いよいよ後編では、この豆乳がどのような状態にあるのか。
腐ってしまっているのか、そうじゃないのか、などについてお話していきたく思います。
更には、これを食べたらどうなるか、についてもお話していくとしましょう。
それでは次回、またお会いしましょう。