★公開日: 2022年5月13日
★最終更新日: 2022年5月14日
食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
そんな日々の雑記帳、今日のお題はYoutubeでの勝間和代さんの動画についてお話いたします。
(タイトルなどでは字数の制限上、呼び捨てしてしまっています、すみません)
これね、マジで。
全食品工場の工場長は、今すぐ仕事の手を止めてでも見たほうが、絶対にいいです!
そのくらいにメタクソに秀逸な動画なのです。
全工場長は勝間和代の動画を今すぐ見るべし
簡単なニュースチェックや、日々の衛生管理の現場で起こった話をサラっとしていく、「今日の衛生管理屋の独り言」。
本日は勝間和代さんのYoutube動画についてお話いたします。
いやもうお話も何も、いいから今すぐにでもこれを見ろ、という話なんですが。
Youtubeでの勝間和代さんのチャンネル、「勝間和代が徹底的にマニアックな話をするYouTube」。
ここで、勝間さんが例の知床での観光船沈没事件についてお話しているんですね。
正直、ぼくはこの知床観光船沈没事件については、ここで何も語る気も全くありません。
というか、ぼくが言いたいのはそこじゃないのです。
この事件に対して勝間和代さんが話している内容が、食品衛生における異物混入対策、特に従事者の個々に要因由来がなされがちな毛髪混入対策に対して、あまりに本質をついているのです。
いやそれだけじゃない、食品衛生、HACCPその他の管理において、実に重要な本質的お話です。
その本質とは、まさにこの動画のタイトルになっている、「犯人探しをやめよう」、です。
もうね、
さすがコスパの勝間、何せこの動画は、たった3分で見られます。
だからもう今すぐ、ここまで読んだら、あとは次のリンクをクリックにして、実際に見たほうがいい。
ていうか、見たほうが早い。
ぼくがここでずーっと「管理」について話していることにも、めっちゃつながる内容なんです。
ここで勝間さんが言っていること。
それは、何か問題があった場合、「犯人が誰か」という「人」ではなくて、「仕組みの何が間違っていたから起きたのか」という「構造」へのまなざしだ、ということです。
もうね、ホントこれ。
にも関わらず、たやすく「犯人探し」になってしまう。
で、そうやって構造的な問題にではなくてそれを行った人を探そうとするから、また再発もするし、改善もされないんです。
つまり、「誰かのせいにして切り離して安心したい」から、再発もするし、改善もされないんです。

「犯人探し」社会の何が問題か
この動画をぼくなりにパラフレーズするとしましょう。
「犯人探し」に陥りやすい日本社会の何が問題なのか。
それは、「犯人探し」の目的が、問題解決ではなくて、不安を切り離すこと、溜飲を下げることにあるからです。
つまり、日本社会全体が合理的によくなることを妨げている、というわけです。
なぜなら。
「何か問題が起きたのは、それを起こした犯人がいるからだ」という、この「問題は人にある」が、この「犯人探し」の根幹です。
この「犯人探し」は、ある意味において、実に短絡的で、簡単です。
だって、勝間さんの言うように、「自分ではない」というように、問題の要因から自分を切り離すことがができるからです。
というか、「自分という”人”ではない」という考えそのものが、原因をおのずと”人”に向けさせる行為そのものです。
となると、問題は「犯人」という「自分ではない他の存在」を探し、そこに問題のありとあらゆる原因をなすりつければ、よくなる。
これは、確かに楽かもしれません。
その結果、世で言われている「けしからん」のほとんどの正体が、これです。
「けしからん」と言っているのは「自分ではない他の存在」なので、そこに自分は含まれなくていい。
当然、感情的なレベルで、不安を切り離し、溜飲を下げることが出来ます。
でも、問題は最終的に全く解決されません。
なぜなら、構造的、根底的な要因を「犯人」になすりつけているので、また違う問題が出た場合に、自分が含まれることのない別のけしからん誰かという「犯人」を探すことになるからです。
そして問題の数だけ、「犯人」を探しては、その根本解決がなされないままに「自分ではない誰かのせい」と切り離され、感情的に解決され、しかし問題である構造自体は解決されることがない。
これが今の日本社会だ、とめっちゃくちゃ鋭いことを「それって社会的にコスパ悪いからやめようよ」と、いかにも勝間流の目線から語っているのが、要するにぼくから見たこの動画です。

問題は「人」ではなく「仕組み」と考えるくせをつける
さて。
どうしてぼくがこの動画を、ここでとりあげているのか。
それはこの話は、実は食品工場における衛生管理、あるいは事故防止や異物対策、毛髪対策などにも通じて言えることだからです。
というかそれらの本質そのものだ、と言っても過言ではない。
だからこの動画を、みなさんは知床での事故の話ではなくて、あなたの工場や店舗での異物対策、とくに毛髪対策の話だと思ってもう一度見てみてください。
見え方が全く違ってくることでしょう。
何か、毛髪の乱れがあった。
何か、社内で異物混入が検出された。
何か、持ち込み制限品が作業机にチョイ置きされていた。
何か、清掃不足による虫の内部発生があった。
こんなとき、あなたはどうしますか?
「誰がやった?どこの部署だ?」と「犯人探し」に走りませんか?
「人」の問題に扱っていませんか?
食品工場でこうしたことを、一般従事者ならまだまだいいんですけど、でもそれを管理者がする。したがる。
それって構造、つまりはシステムを、仕組みを「管理する者」の仕事じゃないですよね?
ならば質問です。
あなたの工場に、何人の職員が働いていますか?
そして、ある毛髪混入のクレームが出たとしましょう。
あなたは、その職員数の「犯人」を探すことになります。
また翌日に、違う問題が発生する。
そしてそこでまた、別の「犯人」を探す。
これで、その工場は良くなりますか?
それをあなたは「管理」できますか?
出来ないですよね。
それは何故ですか?
それは、問題の要因を「犯人」という「他人」、「自分ではない他の存在」になすりつけて、それを起こしている本当の構造的原因、つまりは「仕組み」に至っていないからですよね。
要するに、問題は「人」ではなく「仕組み」なのだ、という考えがそこにないからですよね。
これ、実はかなり、というか本質的に重要です。
常に「仕組み」を考える。
どうやってそれがまわるのか。いや、まわしていくのか。構造として考える。
これは「管理」の基本です。

実はこれって、HACCPの基本もそうです。
「人は間違える。だから致命的な問題を起こさないように重要なポイントを守れる仕組みを作って、それを構造的に外さないようにしよう」
これがHACCPの柱としての大元の考え方であり、そのために加熱殺菌工程を重要化させるのです。
ISOも、マネジメントシステムも、品質管理も、みんな同じです。
要するに「管理」とはそういうものなのです。
…という非常に重要な話を無料で、しかも3分で聞けるのだから、まったくもっていい時代になったものですねえ、というお話でした。
ではまた。