★公開日: 2022年5月4日
★最終更新日: 2022年5月27日

毎週水曜日は、ウィークリーニュースチェックの日。
出来るだけ、ここ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをピックアップしていきます。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:GW

 

大阪の集団食中毒は黄色ブドウ球菌が原因と判明

さあ、大型連休、ゴールデンウィーク真っ只中の本日。
そして天気も快晴続きときた。
さぞかし皆さんも、あちこちとお出かけするなどで楽しんでいるところでしょう。

で、ぼくはといえば、ここに来てまさかの子供らにコロナ濃厚接触者、発生。
おかげで予定していた家族のドライブが、まさかの中止という事態。
仕方なく自宅待機しつつ、このようにブログに向かったり事務仕事をこなしているここ数日です。うぐぐ…。

さ、気を取り直して今週のニュースやっていきましょう。
今週は結構盛りだくさんです。

まずはこれ。
先週のニュースで取り扱った、大阪での集団食中毒の原因が「黄色ブドウ球菌」と判明しました。

【税務大学校の食中毒断定…大阪・枚方市保健所】
(2022年04月29日)
 大阪府枚方市の税務大学校大阪研修所で、研修中の多数の職員が腹痛などの症状を訴えて救急搬送された問題で、市保健所は27日、食堂で出された夕食と患者の便から黄色ブドウ球菌が検出されたと発表した。

保健所は集団食中毒と断定し、給食業務を委託されていた業者の営業所「コンパスグループ21372」(大阪府枚方市)を28日から3日間の営業停止処分とした。
保健所によると、患者は18~22歳の男女52人。22日の夕食で提供された「チキンの赤ワイン煮」「味噌(みそ)野菜炒(いた)め」から黄色ブドウ球菌が検出されたという。…(以上引用)
(読売新聞)

先週、ここで大阪の税務大学校で集団食中毒が発生し、重症者を含む48人が症状を訴えた、というニュースをお伝えしました。
そしてその後、どうやら最終的に発症者は52人にまで増えたようです。

そしてその原因が、なんと「黄色ブドウ球菌」ということが、判明しました。

「黄色ブドウ球菌」というのは、人間の皮膚や粘膜、鼻や口内などに普通にいる、いわゆる「常在菌」なのですが、こいつが厄介なことに多くの毒素を作り出す。
かの舞の海は、その技の多彩さゆえに「技のデパート」なんて呼ばれましたが、この黄色ブドウ球菌はさながら、「毒素のデパート」。
そのくらい多彩の毒素生成菌だったりします。
しかもこの毒素が、熱に強い。

なにせ今回の原因は、「チキンの赤ワイン煮」と「味噌野菜炒め」。
いずれも高温調理を要するもので、例えばこの後のニュースで挙げるカンピロバクターや、あるいは病原性大腸菌などなら、そもそもからしてこの時点で失活します。
ですが、黄色ブドウ球菌というのはこいつ本体が加熱で死んだとしても、その生成された毒素が残っってしまった。そこでこのように集団食中毒となってしまった、というわけです。

ちょっと興味深い題材なので、これについてはまた別の記事でお話するとしましょう。

参照画:黄色ブドウ球菌
Wikipedia

さて、「黄色ブドウ球菌による集団食中毒」と言われて、ぼくら食品衛生に長らく関わる者達がいの一番、真っ先に最初に浮かぶ、というか直結すること。
それはもう、間違いなく日本最大規模の集団食中毒を発生させた、雪印乳業の食中毒です。

2000年を迎えて半年ほど経った初夏のこと。
今から20年ちょい前のことです。
ぼくがこの仕事について数年したあたりのお話ですが、入業界最大大手だった雪印乳業が、黄色ブドウ球菌による食中毒で、1万3000人以上もの発症者を出したのです。

原因は、製造工場での停電。
これによって黄色ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシン)を生成させてしまい、それが大量の牛乳を汚染し、関西地方を中心に市場に出回ってしまった。

当時、大規模な食品事故がたてつづいた2000年代初頭、その最大ともいえる事件であり、これらのことからやがて食品衛生法の改正へとつながっていく。
そんな、あの悪夢の事件をふと思い出すような、今回の食中毒事件でした。

参照画:大阪税務大学
朝日新聞

群馬県の前橋市でウェルシュ菌の食中毒

こちらも集団食中毒。
群馬県の前橋市、高校の学食で43人が食中毒を発症しました。

【前橋育英高の学食で食中毒、43人が下痢や腹痛訴え…シチューなどバイキング形式で提供】
(2022年05月02日)
 前橋市は1日、前橋育英高校の学生食堂で集団食中毒が発生したと発表した。

食堂を利用した生徒ら43人が下痢や腹痛などを訴え、このうち6人から食中毒の原因となるウエルシュ菌が検出された。全員が快方に向かっているという。
 発表によると、4月25~27日に食堂で夕食を取った234人のうち、15~21歳の男性40人と女性3人が発症した。
 食堂では、八宝菜やクリームシチューなどがバイキング形式で提供されていた。市は食堂を5月1日から3日間の営業停止処分とした。…(以上引用)
(読売新聞)


Wikipedia

こちらは集団食中毒のド定番、ウェルシュ菌です。

ウェルシュ菌の食中毒というのは、このように得てして集団化しやすいのが特徴。
ですが先の黄色ブドウ球菌による食中毒とは違って、比較的軽症ですむことが多いものです。
これについてもまた後日、別の記事でもう少し詳しく触れるとしましょう。

なおウェルシュ菌の食中毒については、以前にも詳しく記事を書いていますので、そちらも興味あれば是非どうぞ。

カンピロバクターの食中毒が早くも続出

続いては、カンピロバクターです。
こちらは小規模ながらも、今時期あたりから毎年、そろそろ全国各地で出始める時期に突入。
そして今年も早速ながら、ポツリポツリと報告が入り始めました。

まずは徳島市での焼肉屋さんで、9人が発症。
しかも鶏レバーや牛タン刺し身、というベッタベタのありがち原因物質です。

【徳島市の焼き肉店で男女9人が食中毒 カンピロバクター検出】
(2022年04月28日)
 徳島県は27日、徳島市一番町1の焼き肉店「焼肉ホルモン酒場けんちゃん」で17日に食事をした19~26歳の男女9人が発熱や下痢などの症状を訴え、このうち客6人と従業員1人の便から食中毒の原因となる細菌「カンピロバクター」が検出されたと発表した。1人が入院したが既に退院している。
 県安全衛生課によると、9人は鶏レバーや牛タン刺し身などを食べた。20~22日に発症し、複数が受診した医療機関から23日に徳島保健所に連絡があった。県は食品衛生法に基づき、27日~5月3日の7日間、店を営業停止処分にした。…(以上引用)
(徳島新聞)

このように、食肉の加熱不足でおこりやすいのが、カンピロバクター。
その典型ともいえるものです。

またその一方で、福岡県で、これまた「鶏のタタキ」でカンピロバクター食中毒が発生。
これまた定番ですね。

タタキだから表面を炙ったり加熱したりしたのでしょうが、加熱が甘かった。
それと、実は。カンピロバクターって肉の内部にも少しくらいは潜ることができるんですよ。

また都内でも、8人の発症が報告されています。

とはいえカンピロバクターは、これからが本番。
こんなものでなく、あちこちであがってくるかと思います。

参照画:カンピロバクター
大阪市

ネズミトラップが英国で使用禁止に!?

ちょっとここで面白いニュースを。
なんと英国で、ネズミ用の粘着トラップを使用禁止になるという法律が成立したというのです。

【英、ネズミ捕りシート使用禁止 「非人道的」と批判】
(2022年04月30日)
英国で4月に、ネズミを捕獲するための粘着シートの使用を禁止する法律が成立した。
ネズミ捕りの手段として日本を含む世界で広く利用されているが、「多大な苦痛を与える可能性があり、非人道的だ」と批判が出ていた。
こうした粘着シートは「グルートラップ」と呼ばれる。わなに掛かったネズミは動けないまま24時間以上生き続け、疲労や飢餓などによって死に至る場合が多い。野生動物やペットが引っ掛かってしまうケースもあるという。
 法律ではこのわなを使用する免許を例外的にプロの害虫駆除業者にのみ発行する。免許なしで使用した場合は最高6カ月の禁錮刑や罰金などの罰則がある。2年後に施行され、一般市民は事実上使うことができなくなる。…(以上引用)
(JIJI.COM)

「ええ!?
チュークリンが法的に使えなくなるの!?」

そう思ったかた、ぼくと同業の食品衛生関連かPCO関係のかたですね。

「こうした粘着シートはグルートラップと呼ばれる」なんて書かれていますが、日本ではこれを「グルートラップ」なんて普通、プロは呼びません。
「セロテープ」や「ボンド」、「サランラップ」、「宅急便」などの商品名(登録商標)のように、これは普通「チュークリン」とぼくらのこの食品衛生の世界で呼ばれ使われるものです。
それが海外とはいえ、法的に禁止なる時代が来るかもしれないとは、いやはや…。

参照画:チュークリン
工具専科

ちなみに野生動物やペットが捕まることも、確かに時折ですが、あります。
ありますが、屋外で使うものでは基本ありません。
そんなことをすれば、あっという間にホコリやゴミが付着して使い物にならないからです。
まあ、倉庫や前室、機械室などの屋外に近い箇所に設置して、鳥などが捕まることは確かにありますがね。

ただし、ネズミの駆除方法って、実はそんなに多いわけではありません。
基本的には、「毒殺」するか、「捕殺」するか、の二択です。

しかしネズミを毒殺する、というのは、一般的に考えられているよりも難しいものです。
というのも、一口食べてコロっと死ぬような毒を使えないし、致死量を食べないし、そんなに美味しくも食べてくれないからです。
だから継続して何日も食べて蓄積させて殺すのです。
だから時間がかかるし、人間が考えているほどそう継続して食べてもくれない。

となると、「捕殺」しかない。
でもそれだって簡単にできるものではない。
とくに問題になりがちなクマネズミという生物は、非常に警戒心が高いし、賢い。
だから檻(ケージトラップ)などで捕らえる、なんて簡単な話ではない。

そこで、この粘着トラップ、チュークリンの出番です。
まあこれだってネズミには覚えられてしまいがちなのですが、それだって檻よりはまだ捕獲確率はずっと高い。
しかも檻(ケージトラップ)に比べれば安価だし使いまわしが効くので、多量に敷き詰めることで捕獲効率をさらに高めることができる。
というよりも、「それしかネズミを駆除する方法が、この世には現実的にない」のです。

尤も、英国でも駆除業者には使用を認めるなどしていますが、この波があまり日本にはきてほしくない、ぼくを含めた食品衛生やPCO関連者ならそう一般的に考えるところでしょうね。

挿画:ネズミ

政府、食品ネット通販への表示を指針化する方向へ

最後に。
政府は、インターネットでの食品通販に対して、いくつかの重要な表示を行う指針を作成する方向を示した、というニュースが入っています。

これ、有料記事なので細かいことまで書きません。
なので詳細については、各自で調べてみてください、としか言えないのですが。

とりあえず流れとしては、今までいわゆるECサイト、食品通販サイトですね。ここでの個々の章Y品に対する食品表示について明確な表示義務ってなかったのですね。
そりゃ確かに商品自体には食品表示法などでの様々な表示義務ってのはあるんですよ。
でも、それって商品自体が消費者に届くまでわからなかったわけです。
で、例えば届いて「あれ、これアレルギー物質入ってんじゃん」とか、ね。

そこで政府は、このECサイトにも表示しろよという方針で、今後動くこということがここで報じられている主な概要です。

食品表示法から考えて、実際にはこんなところでしょうか。

ECサイトで今後表示すべき項目例
  • 消費・賞味期限
  • アレルギー情報
  • 原産地情報
  • 栄養成分
  • 保存方法

おっと、ここらへんで今週は終えておくとしましょう。
他にも金属異物混入などあるのですが、長くなってしまいました。

ではまた来週。

 

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