★公開日: 2022年4月30日
★最終更新日: 2022年4月30日
いよいよゴールデンウィーク。
食品工場も、あるいは場合によっては飲食店などもこの時期は稼働をやめて休みを取る、なんてところもあるのではないでしょうか。
ではそんなGW前に、今何をしなくてはいけないか。
そんなこの4月末、GWの長期休暇を前にした「今すべき防虫対策」について、具体的にお教えしていくとしましょう。
なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

Contents
GWこそ、この5つの「防虫対策」をしよう
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もしこちらから来られた方は、まずは「前編」を最初に読んでください。)
さあ、そういうわけでこちら、後編です。
色々と更新し進めているうちに、GWに突入してしまいましたが、まだ全然間に合います。
というかむしろ、これからでしょう。
GWにすべき5つの防虫対策。
この大型連休のうちにやっておきたい、プロ推薦の防虫対策5つを、前回、そして今回とお伝えしたいと思います。
GWの大型連休前に、絶対食品工場や飲食店でやっておくべき5つの防虫対策 |
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こちらですね。
で、前回は上の2つについて解説していきました。
つまり、1の「カビの除去清掃」と2の「虫の発生源の除去清掃」です。
1、2のこれらは、工場や厨房が動いていないときに進行しやすい、虫の内部発生を食い止めよう、というものです。
つまりは、虫の内部発生防止対策ですね。
工場内や厨房内というのは、どうしたって食品を扱う以上、虫の餌となるものが多い。
そしてそこから人がいなくなると、その発生に気が付かない、放置してしまう、そういうことになってしまう。
だから、工場や厨房の稼働が止まる前に、まずは清掃を行って、こうした休みの間での虫の発生をさせないようにしよう。
これが上の2つになります。
さて、ここまでが前回のお話でした。
ここから、今回の本題に入ります。
それ以外にすべきこと。
それは3の、工場や厨房に人がいない間の、虫の「外部侵入防止対策」。
それから4の、このタイミングでの、生息昆虫の駆除。
それから5の、これらの対策の効果確認のための準備、です。
それでは、以下、順に説明していくとしましょうか。

隙間箇所や破損部、クラックの補修
内部発生対策と外部侵入対策はセットで行うべし
3つ目にすべきこと。
それは工場や厨房に生じてしまった隙間箇所や破損部、クラックに対する補修です。
これは、工場や厨房に人がいない間に、虫の「外部侵入」を防ぐ、という対策です。
以前にも何度か書いていますが、そもそも工場や厨房に虫がいる、ということはその要因、理由として外から入ってきた、つまりは「外部侵入」したものなのか、それとも侵入した虫がそこに前回挙げた生息条件、「水・餌・温度・すみか」を満たして「内部発生」したものなのか。
そのどちらかになります。
これをぼくら専門家は、このように区別して考えます。
その虫はどうしてそこにいるの? |
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「要因」(リスクマネジメント)から考える昆虫の分類
これを詳しく、より高度に考えたのが下の記事です。
詳しくはこちらを参考にしてみてください。
ここではわかりやすさ重視で進みます。
さて、前回のように、工場や厨房に人がいない間に虫の発生を抑えるというための清掃を行うことはご理解出来たことでしょう。
しかし、実を言うと、ただそれだけでは片手落ちだという他にない。
何故なら、折角虫の発生条件である「餌」をなくしたところで、外からその間に入ってきてしまったら意味がないからです。
つまり、虫の「内部発生対策」と「外部侵入対策」はセットで行うべし、ということです。

虫を「入れさせない」ということ
少しばかり補足しておきます。
「理屈はいいから、具体的には何をしたらいいの?」という方は、ここは飛ばして次の項に進んでください。
しかし食品工場の品管さん、管理者さんのレベルなら、このくらいの知識は持っておくべきことがらです。やはりここはしっかりと読んでおくべきでしょう。
さて、以前の復習です。
どんな防虫対策であれ、全ての防虫対策というものは次の4つのレベルでのリスクを防ぐために行われています。
防虫対策のリスク区分 |
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逆に言うなら、これら4つのリスクを回避する目的で、ありとあらゆる防虫対策というものは行われるものです。
こうしたリスクは外側から内側に向かって考えていくといいでしょう。
いかに、工場に虫が誘引されないようにするか。つまりは「環境リスク」のための対策。
いかに、工場の中に虫が侵入されないようするか。つまりは「侵入リスク」のための対策。
いかに、工場に入ってしまった虫が拡散しないように抑えるか。つまりは「拡散リスク」のための対策。
いかに、そうした虫の内部発生を抑えるか。つまりは「発生リスク」のための対策。
わかりやすく言うと、これら4つのリスクのための対策というのはこういう目的で行われています。
どんなリスクのための防虫対策か |
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虫を「寄らせない」「入れさせない」「すぐに捕まえる(虫を広げない)」「発生させない」。
つまりはこの4つのために防虫対策が行われているのがわかるでしょう。
イメージ的にはこんな感じでしょうか。

なお、これらについての詳しい解説は、下の記事を参考にしてみてください。
さてこれに寄せて考えてみると、「長期休暇の間に清掃しよう」という前回のお話は「発生リスク」を抑えよう、ということでした。
しかしそれではまだ残る3つのリスクが存在します。
「環境リスク」と「侵入リスク」、「拡散リスク」ですね。
このうち「環境リスク」というのは、休みの間ですとある程度やれることが限られてしまいます。
まあでも、休暇の間に敷地内の緑地、植栽を整備したり、側溝を清掃したり、ゴミを片付けたり、などということはできるでしょう。
そうした長期休暇の間にこそできる「環境リスク対策」は非常に有効ですから、やっておくべきです。
(本当はこれらも5選の一つとして入れたかったんですけどね)
で、今回ここで考えるべきは、人のいない工場や厨房における「侵入リスク」をどうするか、ということです。
それと論を少し進めてしまうと、次に解説する「燻煙駆除」、つまり休みの間の駆除施工というのは「拡散リスク」に対する対策です。
つまり、工場内に生息している虫が休みの間にあちこちに広がってしまうことを抑える、そのために殺虫剤で駆除してしまおう、ということです。

どのようなところを補修すればいいのか
つまりは、工場や厨房がしばらく動かないこの間に、虫が入ってきそうな箇所を直してしまいましょう。簡単に言えば、そういうことです。
ではどんなところを補修すればいいのでしょうか。
具体的には、このような箇所です。
GW中に直したい箇所 |
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このような虫の侵入要因となるような箇所は、この連休の休みのうちにコーキング材などでシーリングしたり、パテなどで埋めたりといった対策をしておくべきでしょう。
そもそも、こうしたハード的な外部侵入対策というのは、短期的にも長期的にも効果が持続するのが特徴です。
ですから、まだそこまで虫の活動力が高まっていない今のうちにこそ行っておく必要があります。
そうすることで、この後の夏場における防虫管理結果が大きく変わってくるからです。
それと今すべき理由の一つが、この時期非常に増えるタカラダニです。
これらはちょっとした壁面のクラック(ヒビ割れ)などからもたやすく侵入してくるものです。
これについては下の記事に詳しく書いてありますので、どうぞ参考にしてください。
また都心部での工場や店舗では、壁面の破損部や、パイプ貫通部や電源ケーブル引き込みなどに生じている隙間というのは、ネズミの侵入経路にもなりかねません。
とくに警戒心が非常に高いネズミは、人のいない長期の休みなどで侵入することが非常に多いものです。
2年前、コロナ禍による緊急事態宣言で東京の街から人が消えた結果、クマネズミが街や店舗にあふれていたことを思い出してみてください。

場内生息昆虫の駆除
おっと、最初から結構な尺を費やしてしまいました。
ここからはサクサクといきますね。
長期の休み中にやるべきこと、それは今この現状で工場や厨房に生息している虫の一斉駆除、です。
これをプロはよく「リセット殺虫施工」、なんて言ったりするのですが、そのとおり。
一旦、今いる虫を全部死滅させて、場内をリセットさせるのです。
とくにこの時期は、丁度虫が増え始める時期になります。
前回の話に出たような虫の内部発生も、いよいよこのあたりからスタートすることが多いものです。
これ、本当によく勘違いされることなんですが、清掃によって虫の生息条件はなくなりますが、しかしそれによって直接的に虫が死ぬわけではありません。
清掃では虫は直接的に殺せないのです。
いや、だからといって清掃なんて必要ない、と言っているわけじゃないですよ?
虫の「駆除」と「清掃」はセットで行うべし、と言っているのです。
では何をやればいいのか。
専門家に依頼する、それもいいでしょう。
効果的にはそれが一番高いでしょう。
でもそのぶんだけコストは必要です。
そこで一番簡単な、今すべきことをお教えします。
くん煙剤を使うのです。
つまりはモクモクと煙によって虫を駆除する殺虫剤。
そう、例えば「バルサン」とか「アースレッド」とか。
あれらをホームセンターや薬局などで購入し、使うのが一番簡単で手っ取り早く、コスパが高いでしょう。
ぼくはこのような場合、「バルサン」をおすすめしています。
このバルサンには、家庭用ではなく業務用もありますので、探してみてください。
ただし、一点ご忠告をば。
一般の方々はくん煙剤は万能だと考えがちです。
製造ラインや厨房の機器内、洗浄機の内部や作業テーブルの中、冷蔵庫のモーター部などなど。
こうしたところまでしっかりすみずみまで煙だから届いてくれて、そして中の虫を全部死滅してくれるだろう。
そう思って全く疑わない方々が相当数おられるかと思いますが、実際にはそこまで都合のよいものでもないものだと思ったほうがいいでしょう。

ライトトラップのメンテナンス
最後に今このGWにすべきこと、それがライトトラップのメンテナンスです。
具体的には、ライトトラップの中の誘虫ランプの交換、そして中のトラップの交換および設置です。
ライトトラップ、つまりは捕虫器。
このような、天井から吊るされたり高い壁に設置されたりしている、青白い光を放って虫を誘引させ、粘着状のトラップで捕まえるという、こういう器械のことです。

そしてこのライトトラップのメンテナンスというのは、今までの4つの対策を行う前提で行っておく、というのが重要です。
ではどうしてこのタイミングにするのか。
ここに2つ、明確な理由があります。
まず1つ目が、今までの4つの対策の効果判定です。
内部発生を抑えるため、清掃した。
外部侵入を抑えるため、補修した。
今いる虫をいなくさせるため、駆除を行った。
これらが果たして本当に効果が出ているのかを確かめるため、その効果判定のためにライトトラップのメンテナンスを行って、確認するのです。
それからもうひとつの、理由2つ目。
あの青白い光を放っているランプのことを「誘虫ランプ」と呼ぶのですが、この誘虫ランプというのは、ただ点灯してついていればいいというものでは、実はありません。
実はあの光による虫の誘引力というのは、半年くらいしかもたないのです。
およそ6ヶ月もすると、その虫の誘引力というのは80%以上も低下してしまう、と言われています。
ですからその誘虫ランプ長期放置しているライトトラップは、ほとんど誘引力を失っているただの青い光、だということになりかねないのです。
何度も話しているとおり、丁度このGWのタイミングというのは虫が増えだす時期になります。
外の自然環境では虫の活動が活発になるため外部侵入も進みやすくなりますし、工場内や厨房内では室温上昇とともに内部発生が起こりがちになります。
ですから、このタイミングでライトトラップの性能を高め、防御力のパワーアップをしておくことは、非常に有効な手段となるのです。

まとめ
今回は、前編、後編と二部にわたって、GW前にすべき5つの防虫対策についてお話させていただきました。
もう一度、その5つの防虫対策を見てみましょう。
GWの大型連休前に、絶対食品工場や飲食店でやっておくべき5つの防虫対策 |
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工場や厨房の虫というのは、「内部発生昆虫」と「外部侵入昆虫」に分けられます。
それぞれそこにいる原因が違うので、それぞれの原因についての対策が別途必要になります。
そこで、今回は「内部発生昆虫」について、その生息条件である「餌」を除去する「清掃」をまず行う。
これが上の2つ、1「カビの除去清掃」と2「発生源の除去清掃」です。
そして一方で、「外部侵入昆虫」については、3の設備の問題、破損や隙間などを埋めることで、侵入を防ぐ、という対策を行う。
しかしすでにもう場内にいる虫は、どうにかして駆除しなくてはいけない。
だから4の「燻煙駆除」を行ってそれらを死滅させ、場内の虫の生息をリセットさせる。
そして最後に5で、これらが果たして本当に効果があったのか、問題がちゃんと解決されているのか、問題としてまだ残っていないか、その効果判定のためにライトトラップのメンテナンスをしておく。
どうでしょう、これらって極めて論理的な、合理的な対策だと思いませんか?
そして重要なのは、「このGWという防虫対策シーズンのスタート段階、初期のうちに行っておく」ということです。
何故なら、今なら問題が深刻化しないうちに解決が可能だからです。
病気だって、初期段階なら治療がたやすくすむじゃないですか。
病気を放置してしまったら、それだけ大きな手術が必要になりますよね。
それと同じだと思って、どうぞこのGWのうちにこれらを行ってみてください。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
