★公開日: 2022年3月30日
★最終更新日: 2022年4月2日
食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。
改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

桜吹雪と花粉症
ここ関東地方、東京近県ではいよいよ桜も開花。
何でも東京都内では今週末が桜満開の見頃であり、来週には散り始めるところが出てくる、とのこと。
まさに今、桜吹雪真っ只中、というわけです。
よってぼくの日課であるランニングも、この時期が一番楽しかったりするのですが、しかし。最大にして致命的な問題が、一つあるのです。
それは、何を隠そう、「花粉」です。
いやだってなんかこのところやばくないですか、花粉。ってぼくだけ!?
こないだなんか、走りながらクシャミ止まらなくなりましたからね。
おかげですっかり死にかけてしまっている、今日この頃でありま、ま、ま……ふぇーっくしょん!
さて、そんな桜吹雪と花粉まみれの3月最後のウィークリーニュース、行ってみましょうか。

アニサキス食中毒、4年連続最多
といっても、ぶっちゃけ今週のニュースは、ちょっと少ないというか地味めです。
そんな大きなものも見られませんでした。
そんな中、今週のトピック。
先週に厚生労働省が発表した昨年2021年度の食中毒年度統計において、アニサキス食中毒が全体的に増えている、というニュースがあがっています。
【昨年の食中毒発生件数 アニサキスが4年連続最多】
(2022年03月24日)
病因物質別では、アニサキスが344件で最多となり、全体の半数(48.0%)を占めた。
次いでカンピロバクターが154件(21.5%)、ノロウイルス72件(10.0%)と続き、この3物質で全体の8割近くを占めた。
アニサキスによる食中毒は前年比42件減少したものの、2018年にカンピロバクターを抜いて以降、4年連続で最多となった。直近7年間の推移は15年127件、16年124件、17年230件、18年468件、19年328件、20年386件、21年344件と高止まり傾向となっている。…(以上引用)
(ニッポン消費者新聞)

先週もお話した通り、毎年この時期になると、昨年度の、つまりはここでは2021年の食中毒統計まとめが厚労省から発表されることになっています。
当然このデータ自体は誰にでも見ることの出来るもので、ちゃんとこのように厚生労働省のホームページに公式に掲載されており、いつ誰でもアクセスし、ダウンロードするようになっています。
で、そこにおいて、2018年以来、4年連続で食中毒の原因のトップランカーをアニサキスが独走している、というのがこのニュースです。
先週のニュースでも触れましたよね、実はアニサキス食中毒が増えている、って。
では、どのくらい増えているのか。
これ、実は今それに関する記事を執筆中ですので、週末にもあげられると思います。
でもその前に、ちょろっとだけ小出ししておきましょう。
…というか、実は昨年の夏に書いたうちの記事のなかに、アニサキスに関するものがありまして。
で、ウチではすでにその記事に、それがよくわかるデータを掲載していたのです。
この記事が、そうですね。
で、ここにぼくが作成した、こんなグラフがあります。

これはぼくがその厚生労働省統計をもとに自作したデータです。
で、これを見ると一目瞭然。
水色の折れ線が、アニサキスによる食中毒件数です。
そのうえで、2018年を見てください。
黄色のカンピロバクターや茶色のノロウイルスを超えて、原因物質のトップに躍り出ていますね。
しかも、これがそのまんま2019年、2020年を独走している。
そして。
昨年もこの勢いのまま、トップランカーを走ってみせた、という結果となっているのでしょう。
おっと。
この続きは、今週末に新たなデータを出しながら、詳しくお話していくとしましょう。
★追記(2022年04月02日):
そのアニサキス食中毒の最新情報をまとめた記事をアップしました。
こちらになります。

急速凍結機が今の食品業界のトレンド!?
さて、お次は、こんなところを。
食品衛生にはダイレクトに関わりはしないのですが、今の食品業界のトレンドを知るには、ちょっとばかり面白いものじゃないかなと思います。
というのも、「日本食糧新聞」に、サラヤの急速凍結機の紹介記事が報じられていたんです。
【サラヤ、急速凍結・脱気包装で調理提案】
(2020年03月28日)
サラヤが提案する急速冷凍機と脱気包装機を組み合わせた新しい調理システムが、小規模な食品工場、ホテル・レストランや飲食店の厨房(ちゅうぼう)を中心に採用実績を伸ばしている。
急速凍結機「ラピッドフリーザー」=写真=は食品を充てんしたパックをマイナス30度Cの冷媒液に浸け込む方式で、一般的な気体による凍結と比べて短時間での凍結が可能。
急速凍結なので食材の細胞破壊は最小限に抑えられ、解凍時のドリップや食感の悪化などを防ぐ。…(以上引用)
(日本食糧新聞)
有料記事の導入部だけですが、これだけで十分です。
つまりこれ、「急速冷凍機と脱気包装機を組み合わせた、新しい調理システム」、だそうです。
いかがでしょうか。
これを聞いても、ふーん…って感じですか?
だと、ちょっとばかり食品業界へのアンテナとそこへの想像力の感度調整が必要かもしれないですよ。
これ、要するに「自家製冷凍食品が簡単に作れる」っていう機械です。
そしてそれが今、俄然注目されている。
これは昨年くらいから見られ始めた、新しい食品業界の流れの一つと言ってもいいんじゃないでしょうか。
どういうことか。
正直言うと、ぼくは食品製造や調理のプロでもなんでもなく、純粋に食品衛生屋なので、こっちに余り詳しくありません。
なので、もっと詳しい方々は「今更かよ」と思うかもしれません。
そこらへんはド素人のタワゴトだとスルー、あるいは「そうじゃないよ」というのであれば、むしろ教えていただきたい。
その上で、お話を進めましょう。
本来、ブラストチラーなどをはじめとする食品製造上の冷凍工程というのは、それなりに大掛かりだし、コストがかかります。
しかも大量生産が基本ですし、また当然ながらそれらを保管するためには、高額の冷凍倉庫が必要になります。
ですから小規模の飲食店などは全く向いていないわけです。
にも関わらず、コロナ禍以降、外食は控えられた一方で、冷凍食品需要が高まり、冷凍食品市場が盛んになってきた。
それは、よくわかる。
だったら飲食店だって自分の料理を冷凍食品化出来て、流通に乗せられたらビジネスチャンスも広がるに違いない。
それも、よくわかる。
だけど従来は上のような事情で、冷凍食品というのはそこまで手軽に扱えなかった。
実はすでにこうした液体急速凍結機(リキッドフリーザー)というのは、これ以外にも世にもあったんです。
例えば食肉やマグロなどの冷凍のためのものなど。
しかしそれだってそれなりに大型のものだったのですが、しかし。今やこのように、液体急速凍結機(リキッドフリーザー)のコンパクト化、低価格化、お手軽化の技術が急速に進んでいる、ということです。
実は昨年、このサラヤさんとこよりも先駆けて話題になっていたものがありました。
それが、「テクニカン」さんのところの「凍眠ミニ」というものです。
いわばこの流れのパイオニア的存在でした。
【1.凍眠 ミニとは】
セントラルキッチンを有さない飲食店など向けにデザインされた小型の液体凍結機です。
大型の「凍眠」同様、液体(アルコール)で食品を冷凍させます。約50cm四方のコンパクトサイズであり、100V電源でお使いいただけるお手軽なリキッドフリーザーです。
食材の冷凍保管や作り置きなどはもちろん、ECサイトでの販売を始められる飲食店様にお選びいただいております。…(以上引用)
いかがでしょうか。
この「凍眠ミニ」の解説が言いたいことはつまり、小規模で飲食店用のオリジナルな冷凍食品が作れますよ、というものです。
コンパクトで場所を取らず、少数ロットで作れて、しかも100V電源で使えるというのも、飲食店には嬉しいところでしょう。
それを駆使してこれで、話題になるような街の名店が、その店の名物料理を冷凍食品にしてECサイトなどで販売したらどうでしょう?
めっちゃ、欲しくないですか?
そして先月。
この「凍眠ミニ」が、満を持してかさらにグレードアップした新機種を導入し、拡販を狙っている、とのニュースが日経新聞に掲載されていました。
【冷凍機製造のテクニカン、飲食店向け小型機拡販】
(2022年02月28日)
業務用冷凍機器を製造販売するテクニカン(横浜市)は、飲食店などに小型急速冷凍機を拡販する。
今夏にも冷凍能力を2倍超に高めた新機種を投入するほか、同社が運営する冷凍食品専門店で扱う商品についても飲食店と連携する。
新型コロナウイルス禍の影響で飲食店の持ち帰り商品や冷凍食品の需要が高まっている動きに対応する。…(以上引用)
(日本経済新聞)
もう一度、言います。
スーパーで売っているような一律規格の「そこそこ美味いよね」な大手冷食じゃなくて、もうまもなく「個性を発揮出来る飲食店レベルで、手軽に冷凍食品を作ってECサイトなどで販売出来るようになる」ってことです。
しかもその規模ならば受注時に冷凍すればいいわけですから、イニシャルコストも維持費もかかる大きな冷凍庫とか、店舗になくたっていいわけです。
いかがでしょうか。
これ広まったら、結構な食品ビジネスモデルの革新になると思いませんか?
大手冷凍食品も、今の特需にウハウハしている場合じゃなくなる、って思いませんか?
当然ながらこの動きは、これで終わらないでしょう。
事実すでに大手サラヤがこれをキャッチして動き出しているのですから、これからも更に各社での開発、そして低コスト化、技術革新が進むことでしょう。
そう考えたら、ちょっとワクワクしますよね。

味の素冷凍食品、冷凍米飯を千葉工場に集約
さて、最後のニュース。
余り大した話ではありませんが、その一方で、大手冷食メーカーはと言えば、こんなニュースが。
味の素冷凍食品は、冷凍米飯を千葉工場に集約する、と発表しました。
【味の素冷凍食品 冷凍米飯を千葉工場に集約 CO2約7千t削減】
(2022年03月30日)
味の素冷凍食品は、23年3月をめどに冷凍米飯の自社工場を千葉工場に集約し、大阪工場での生産を中止する。
冷凍米飯領域でのコモディティ化や低価格化が進む中、ブランド力や、「ザ★チャーハン」とおいしく減塩を実現するという健康栄養製品などへの集中をさらに高めるために生産体制の再編を行う考えで、冷凍米飯専用工場である千葉工場へ19億円を設備投資する。
また、低炭素型炊飯ラインを導入することでエネルギー効率を高めるとともに、きめ細かな炊飯管理を可能にし、生産性の大幅向上、環境対応、高品質の独自価値製品への対応力を向上させる。
年間で、20年度国内工場総排出量の約12%に相当する約7千tのCO2排出を削減する見込み。
…(以上引用)
(食品新聞)
ちなみに実はこれを報じる2週間ほど前、味の素グループは、2050年度までにカーボンニュートラル目標を発表したばかりだったりします。
ここらへんも一応、押さえておくといいでしょうね。
というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。
