★公開日: 2022年3月25日
★最終更新日: 2022年4月2日

食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:春分の日

 

桜を前に雪が降った3月下旬

さて、皆さん。
この下書きを最初に書くべくパソコンに向かっていたのは、実は2022年3月22日のことだったのですが。
なんと。
そのとき窓の外では、雪が降っていました。

そう、この3月22日、関東地方では、なんと「雪」が降っていたんですねえ。
桜の開花を前にして、この3月下旬に、まさかの積雪。
雨まじりのみぞれではありますが、これぼくの住んでいるところでは下手するとつもりかねない様子です…。

しかもニュースではやれ電力不足だと報じているわけですが。
まあそれはよそにおまかせするとして、うちでは今日も平常運転、毎週水曜日のニュースチェックをやっていくとしましょうか。

挿画:分析

厚労省、2021年度データ発表、食中毒数激減を容認

もう、のっけっから今週のトピック、いってしまいましょう。

厚生労働省は、昨年2021年の食中毒発生状況を発表するとともに、2021年は、2020年に続く最少件数の更新年であったことを発表しました。

【厚労省、食中毒件数が最少を更新 コロナ影響より色濃く】
21年(1~12月)の食中毒事件数717件、患者数1万1080人、さらに患者数2人以上の事件数340件がいずれも直近20年間で最少だったことが厚生労働省のとりまとめで分かった。
事件数が最少だった前年をさらに下回った。
1件当たりの患者数が500人以上の大規模事例は2件にとどまり、患者数は合計4441人で全体の4割を占めた。
同省が17日開いた食中毒部会で、委員からは「良好な傾向が続いている」との声が聞かれた。…(以上引用)
(日本食糧新聞)

もう、今週はなんと言ってもこれに尽きますね。

ていうか、このニュース自体がどうという以上に、ああもうこの厚生労働省の昨年食中毒データ統計が出る時期かあ…と、そういう毎年恒例の年度末行事だったりするのです。

そう、毎年この時期になると、昨年度の、つまりはここでは2021年の食中毒統計まとめが厚労省から発表されることになっています。
そしてそれを受けて、厚労省の総評がこのようなものだ、というのがこのニュースの主旨だったりします。

で、このこの手の話、「コロナ禍以降食中毒件数は比較的抑制気味にある」という話はぼくもウチやこの前身となるブログで何度となくしてきましたし、別にぼくだけでなくあちこちで時折言われてきたことです。
それがこの2021年度の統計のとりまとめ時期に、数値として現れた。
そういうものでしょう。

参照画:過去5年間の食中毒発生状況
日本食糧新聞

厚労省データを「日本食糧新聞」さんがまとめた表がこれなんですが、実はこれらについてもちょっとしたデータの見方といいますか、ポイントってのがいくつかあります。

まず「食中毒が多い」もしくは「少ない」というのはそもそも「件数」と「患者数」を一般的には見比べることで総合的に評価するものです。
食中毒での「死者数」というのもですね、そりゃごくたまにですがポツリポツリあったりするのですが、高齢者がノロウィルスやら自然毒を持つ植物などを食べたりですね。でもこれは特例と扱ってもいいでしょう。
重要なのは、やはり何を置いても「件数」、です。

まず「発生件数」の、のきなみの減少。
ここですね、2年連続で4桁に至っていない。それをもって、厚労省は最少更新だと言っているわけです。
ま、ここらへんについては、手洗いの習慣化だったりアルコール殺菌の徹底だったり、外食産業の市場変化だったり、食の安全安心に関わる意識がコロナ禍によって更に高まったり云々である程度予測の出来るところが背景にあるのは言うまでもないでしょう。
衛生意識が高まれば自ずと食中毒も減るものですからね、そういう意味では「減った」と評価してもいいんじゃないでしょうか。

一方、患者数については、いやぱっと見なんとなく減ったかな感もあるのですが、そこまで顕著に減ったという状況でもない。
つまり、如実に減っている「件数」に対し、「患者数」がそこまで減らない。
これは幾つか理由があるのですが、最大の理由として、ここ数年大規模な集団食中毒が幾つか発生している、というのがあります。

例えばウェルシュ菌やら病原大腸菌やらの食中毒では、給食などを経て、数十人、数百人、ヘタをすると千を超える患者数に広がります。
そしてこの数千人規模もの集団食中毒というものが、ここ近年何度か起こっているのです。
つまり事件数に対し患者数が多い年、というのはそういう規模の大きな集団食中毒をどこかに含んでいるものです。

しかしそれでも件数における減少傾向がうっすらと見えるのは、まだ上の統計を細かく分析したわけではありませんが、なかでもこうした事件数と患者数をともに押し上げる最大要因のひとつであるノロウイルス食中毒自体が大きく減っているから、というのは間違いなくあるでしょう。

というのも食中毒件数のトップランカーというのはもう決まっていて、これはカンピロバクターとノロウイルスなんですけど、この2つの食中毒がここ3年でかなり減少しているんです。
コロナ禍、それに関わる外食を控える傾向、安全意識の向上…。
いくつか理由は考えられるのですけど、それに対して増加傾向にある食中毒要因もあったりします。
なんだと思いますか?

実は、アニサキス、なんですよ。

おっと、ここらへん結構面白い話でもありますんで、後日、データをあげてまた別に記事で取り扱うとしましょうか。

★追記(2022年04月02日):
そのアニサキス食中毒の最新情報をまとめた記事をアップしました。
こちらになります。

挿画:分析

アサヒグループ食品、幼児向けおやつに金属異物混入、回収

「アサヒグループ食品」は、先日、幼児向けのおやつに金属の異物混入が発生し、商品回収を自主的に行うことを報告しました。

【幼児向けおやつ回収 金属混入―アサヒグループ食品】
(2022年03月16日)
アサヒグループ食品は16日、幼児向けのおやつ「1歳からのおやつ+DHA 黒豆きなこクッキー」について約3万5000個を自主回収すると発表した。
微細な金属の混入が分かったため。
同社によると、健康被害は出ていない。…(以上引用)
(JIJI.COM)

異物混入による回収ロットとしては、数万レベルと、そこそこ大物の対応。
健康被害が出ていないので、自主回収対象ですが、クレームコストとしては様々合わせ得ても数百万円くらいはいくんじゃないですかね。

混入異物は「温度センサーのケーブルの一部」と書かれていることから、製造工程上、成型したクッキーの焼成工程上で関わるなんらかの部品であり、そこで劣化や破損などの問題が生じた、というのがおおよそのところだと思います。

このように、混入異物が拡散する危険性の考えられる工程由来の劣化物であること、対象が幼児であるのも含めて健康被害の危険も考えられること、などで比較的回収対象を広げたのでしょう。


アサヒグループ食品

「JFS規格」認証・適合証明の取得企業、2,000超える

JFS規格の取得企業が2000社を超えた、という報告があげられていました。

【日本発の食品安全管理規格「JFS規格」認証・適合証明の取得組織数が合計2,000件を突破しました】
(2022年03月14日)
この度、食品安全マネジメント協会(JFSM)が開発・運営する、日本発の食品安全管理規格「JFS規格」認証・適合証明の取得組織数* が合計2,000件を突破したことをご報告致します。…(以上引用)
(JIJI.COM)

このJFS規格については、何週か前のニュースでも触れましたね。

「JFS」、つまり「JFS(Japan Food Safty:ジャパン・フード・セーフティ)」というのは、2016年に発足した「一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)」が定めた、日本発にして日本初となる国際標準規格の食品安全マネジメントシステムです。

ま、ものっそい乱暴に言ってしまうと「JFS規格」というのは、実質、日本オフィシャルのHACCP、あるいはISO22000など、です。
このJFS規格は、この日本国内では、お上お墨付きのマネジメントシステムであるうえ、比較的中小企業が取り組みやすく、比較的安価で認証が可能なうえにわかりやすく、そのため今かなり人気のある認証規格です。

で、この「JFS規格」には幾つかのレベルがあって、各社、それぞれのレベルに合わせた規格認証を取得しているわけですが、そのなかでも人気が高いのが、「JFS-B」というものです。

JFS規格
  • FS-C:国際取引に使われるGFSIベンチマークスキーム(ISO22000と同格あるいはそれ以上)
  • JFS-B:HACCP12手順の実施を含む(HACCPシステム)
  • JFS-A:HACCPの考え方を取り入れた一般的衛生管理中心
参照画:JFS規格
JFS規格の管理水準

つまり実質的に「JSF-B」の認証を取得するというのは、HACCPシステムの認証を取得することとを意味します。
というか今、一般的に「HACCP認証を取得する」というと、およそこの「JFS-B」のことであるのが割とポピュラーになってすらいます。

挿画:HACCP

というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。

 

業務案内

 

  • 防虫対策のお悩み
  • 微生物対策、5S/サニテーション(清掃洗浄)
  • 検査、異物混入対策
  • 各種コンサルタント業務のご依頼
  • 食品衛生、HACCPやマネジメントシステムのご相談
  • 講習会、公演、執筆などのご依頼
  • その他、当サイトへのご意見、ご指摘など

 

ご相談・調査・見積無料。
以下よりお問い合わせ下さい。