★公開日: 2022年3月18日
★最終更新日: 2022年4月2日

食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

…と思っていたら2週間が経ってしまいました。
まとめて3月上旬のウィークリー・じゃないけどニュースチェックです。

挿画:3月

 

2週間分の食品衛生界隈ニュースを!

いやあ、これぞ年度末。
ごめんなさーい!
ちょっとばかりせわしない日々を送っていたんですけど、あっという間に2週間が経ってしまいましたー。

しかもその他の記事が滞ってしまっていますね。
これは大変失礼しました。
ようやくここ数日、少しばかり落ち着きつつあるので、また通常に戻って更新していきたく思います。

さて。
そんなわけで、二週間分となる食品衛生界隈のニュースを、どどどーっと吐き出し。
なにぶん量も多いので、それぞれ簡単にのみ触れていきます。

まずはこちら。

挿画:ビジネス

東京でアユのいずしによるボツリヌス食中毒が発生

3月1日、東京都が「アユのいずし」によるボツリヌス食中毒が発生したことを伝えました。

(2020年3月1日)
2月17日(木曜日)午後0時40分、新宿区内の医療機関から、「2月14日(月曜日)に入院した杉並区在住の患者が、2月16日(水曜日)昼頃から容態が急変し、瞳孔散大、呼吸不全に陥り、人工呼吸器にて管理している。

患者は発酵食品を喫食しているようであり、症状からボツリヌス食中毒を疑う。」旨、新宿区保健所に連絡があった。…(以上引用)
(東京都)

参照画:ボツリヌス菌
日本食品衛生協会

ボツリヌス食中毒!
珍しいことではありますが、怖っ!
しかも、例によっての「いずし」です。

まず、ボツリヌス菌の食中毒というのは数こそレアなれど、最強の食中毒菌です。
というのも、ボツリヌス菌が作り出すボツリヌス毒素は、自然界最強とすら言われる神経毒だからです。
致死量は、なんとわずか1㎍(マイクログラム)以下というから、その強力無比さが伝わるでしょう。

しかも(例によってというように)この件のように、「いずし」によるボツリヌス食中毒は、日本では時折生じてきていました。

最初の発見は、1951年。
北海道の特産であるニシンのいずしで発生したのです。
そしてその後、様々なことが判明し、日本では昔からボツリヌス食中毒が発生していたことがわかったのです。

ちなみにボツリヌス食中毒を起こすボツリヌス菌はA、B、E、F型菌などがあるのですが、この「いずし」の場合は、得てしてE型が多い。
今回のこれも、やはりE型菌でした。

このE型菌は、タンパク質を分解しないタイプのボツリヌス菌であり、4℃くらいの低温度でも増殖し、毒素を産生するのが特徴です。
ただしA、Bなどに比べるとやや毒性は劣ります。

…などとつらつら書き連ねていると、今回は長文が過ぎてしまいます。
いい機会なので、ボツリヌス食中毒については、また近く別に詳しく独自の記事を書くとしましょう。

★追記(2022年3月27日):
そのボツリヌス食中毒について、記事にまとめました。
かなり面白いものとなっていますので、こちらをどうぞ。

挿画:研究

アニサキス食中毒が各地で多発

さあて、飛ばしていくとしましょうか。
3月に入って、やたらとアニサキス食中毒が多発しています。

まずは石川県。
上のボツリヌス食中毒はアユの「いずし」でしたが、こちらはサバの押し寿司で、アニサキス。

【サバの押し寿司食べたら腹痛…40代男性の胃から『アニサキス』食中毒と断定し直売所を営業停止に】
(2020年3月5日)
アニサキスによる食中毒が連日続いています。4日午後4時ころ、金沢市内の医療機関に腹痛を訴えて受診した患者の胃からアニサキスが検出されました。

能登中部保健福祉センターによりますと、患者は2月28日に志賀町生産物直売所でサバの押し寿司を食べました。…(以上引用)
石川テレビ

このニュースで「連日続いています」と書かれているのは、この地方メディアに前日の3月4日、イワシの刺し身によるアニサキス食中毒が報道されたばかりだからです。

【イワシの刺身食べたら腹痛が…男性の胃から“アニサキス”検出 販売したスーパーの一部営業停止に】
(2020年3月4日)
石川県輪島市のスーパーで買った刺身を食べた男性が食中毒となり、県はこのスーパーの魚介類販売部門を4日、営業停止処分としました。…(以上引用)
石川テレビ

更にはこの石川県では、先日13日にも、回転寿司でのアニサキス食中毒が報じられる有様。

【回転寿司店で食中毒…50代男性から『アニサキス』検出 営業停止処分に アジやバイ貝など食べる】
(2022年3月13日)
金沢市の回転寿司店で男性1人が食中毒症状を訴え、市はこの店を13日一日営業停止処分としました。
(略)
金沢市内ではアニサキスによる食中毒が増えていて、去年は1年間で4件でしたが、今年はですでに今回を含め3件報告されています。…(以上引用)
石川テレビ

随分多いな、と思って石川県のホームページを見てみると。
成程、確かに今年に入ってアニサキス食中毒が連発していることが判ります。

そしてこのことは勿論ながら、石川県のみに限ったことではありません。
例えば、福井県でも今月、同じくイワシの刺し身によってアニサキス食中毒が生じています。

【鮮魚店で買った刺し身にアニサキス…福井の男性が食中毒、食べて2時間後に症状】
(2022年3月2日)
福井県の福井市保健所は3月1日、同市中央1丁目のプリズム福井内の鮮魚店で購入したイワシの刺し身を食べた、市内の80代男性が胃痛や吐き気などの症状を訴え、食中毒と断定したと発表した。…(以上引用)
(福井新聞)

また地方のみならず、東京はじめ関東近県でもポツポツとアニサキスの食中毒報告があがっています。

このように、このところ3月に入ってやたら目にするようになったのが、このアニサキスによる食中毒でした。

なおアニサキスに関しては以前記事を書いていますので、こちらをご参考にしてください。
またこれだけ件数が増えているのなら、少し改めて取り上げ直すとしようかな…。

★追記(2022年04月02日):
そのアニサキス食中毒の最新情報をまとめた記事をアップしました。
こちらになります。

秋田のいぶりがっこを救え!?

以前、食品衛生法の改正によって秋田のいぶりがっこが危機に瀕しているとか言われているけれど、でもこれって自治体の怠慢の自業自得じゃね?って話をさせていただきました。

で、これらに対し、秋田県は補助金制度を行うことを決定した、とのことです。

【食品衛生法改正でピンチ いぶりがっこ製造施設の整備支援へ】
(2022年3月7日)
去年、食品衛生法が改正され、特産の「いぶりがっこ」などの漬物づくりへの影響も懸念されていることを受けて、秋田県は、法律に対応した新たな設備の導入費用の一部を補助することを決めました。
  「いぶりがっこ」などの漬物づくりは、去年6月に改正された食品衛生法で、住居と作業場を切り離すことや水回りの設備を材料や器具の洗浄用と手洗い用に分けることなどが義務づけられました。しかし、県が調べたところ、農家からはこうした設備の導入は難しいという声が相次いでいて、3割余りが「生産を継続できない」と回答したということです。

 これを受けて県は、新たな法律に対応した設備を導入した際に、必要な費用の一部を補助することを決めました。対象は、県内で漬物を作る農家や企業などで、購入などにかかった費用について、1000万円を限度に、3分の1を補助します。
 県は、新年度の当初予算案に関連費用、およそ5000万円を計上しています。…(以上引用)

(NHK)

また地域によっては、共同の加工所の整備などで対応を進めているところなども出てきているようです。

【三種町に共同加工所整備 農家向け、漬物などの製造支援】
(2022年3月3日)
 秋田県三種町鵜川の農産物直売所「ドラゴンフレッシュセンター」を運営する「まごころの会」(梅田ルミ子会長)は、食品衛生法の改正を受け、漬物などを製造する農家が共同で利用できる加工所を整備した。
 個人で施設を整備するのが困難な生産者に向けた対応。4月稼働を目指している。…(以上引用)
(秋田魁新報)

挿画:いぶりがっこ

食品添加物の不使用表示、ガイドライン案まとまる

一方で、食品表示のニュース。
加工食品に対しての食品添加物の不使用表示に対し、消費者庁がもうけた有識者検討会で、その明確な表示ルールを定めたガイドライン案を大筋でまとまった、と報じられました。

【「無添加」表示基準明確に 消費者庁、指針策定へ】
(2022年3月2日)
食品の「無添加」表示に関する消費者庁の有識者検討会は2日までに、表示ルールを定めたガイドライン案を大筋で了承した。
「物質名が不明確な単なる『無添加』の表示」など10類型を、食品表示基準に違反する禁止事項として明確にした。
今月中に正式に策定する。…(以上引用)
(日本経済新聞)

というのも、現状「無添加」、あるいは「人工甘味料不使用」のような、「食品添加物を使っていないこと」の表示方法というものには決まりが存在していません。

その結果、例えば何を添加していないから「無添加」であるというのが曖昧なものや、いかにも健康であるかをうたったような表示、あるいはもともと添加物なんていらないものに(例えばミネラルウォーターなど)わざわざ「着色料不使用」などと表示したり、というものが見られることも。
そのため消費者庁はこれらについて、今後明確な表示ルールを定めていこう、というものです。

詳細については、また別途これについても今後詳しく扱っていくようにしましょう。

挿画:食品表示法

ウクライナ情勢への国内食品業界の対応

最後に、ちょっと昨今のロシア・ウクライナ情勢をめぐって日本国内の食品業界の動向がどのようになっているか、少しばかり触れておくとしましょう。
勿論直接的には食品衛生には関係しませんが、昨今の食品業界動向として知っておいても損はないでしょう。

挿画:ウクライナ 、NO WAR

まずくだんのウクライナ支援のため、今月1日、国連WFP協会は、各企業にウクライナ緊急支援募金を呼びかけました。
これに対し、国内食品業界では各業界団体を通じて、当募金の対応へと向かい始めます。

これらに対し、いちはやく日清食品ホールディングスが支援対応。
現地にて「ハンガリー日清」が即座にインスタントラーメン10万食の提供を近隣諸国の避難民に提供する、と決定。
さらに1億5000万円の寄付を伝えました。

続いてプリマハムなどもウクライナや近隣諸国に緊急人道支援を表明。

さらに幾つかの企業がこの動きに同調。
その結果、現状において食品業界はじめ6億円5000万円以上の寄付が集まったことが伝えられています。

【日本の食品界、国連WFP協会呼び掛けにウクライナ支援相次ぐ 10億円規模目指す日本の食品界、国連WFP協会呼び掛けにウクライナ支援相次ぐ 10億円規模目指す】
(2022年3月18日)
日本の食品界が国連WFP協会(安藤宏基会長)の呼び掛けに応えてウクライナ支援に立ち上がった。国連WFP協会が1日から開始したウクライナ緊急支援募金が、食品業界を中心に企業から6億円強、個人支援者から5000万円集まった。
(略)
1000万円を超える食品企業を中心とした大口寄付企業は、日清食品、味の素社、キッコーマン、商船三井、明治ホールディングス、日本ハム、伊藤ハム米久ホールディングス、サントリーホールディングス、ハウス食品グループ本社、ファミリーマート、プリマハム、キリンホールディングス、キユーピー、江崎グリコの14社。
前記企業を除き食品関連企業・団体は泉南乳業、一正蒲鉾、DSP五協フード&ケミカル、塩水港精糖、フードテック、まつおか、丸美屋食品工業、日本ジフィー食品、湖池屋、日本即席食品工業協会。そのほかの業界と合わせて47社の企業が約6億1300万円の寄付をした。…(以上引用)
(日本食糧新聞)

また、食品企業のみならず、ロシアへの事業を検討し始める企業も続出。
花王は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて50万ユーロを寄付した他、避難民に対し自社のベビー用紙おむつ、生理用品などの製品を提供。
さらにロシアへの輸出出荷および広告活動を一部停止するなどに動きました。

そのほかコカ・コーラなどもロシアでの事業を停止する決定がなされています。

一方、今回のこのロシア・ウクライナ侵攻の動きを受けて、値上げなどにともなう食品市場での混乱が広がるのでは、という懸念の声も高まっています。

【ロシアのウクライナ侵攻 食料市場へ混乱拡大 対ロ輸出入半減も懸念】
(2022 3月11日)
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、食料の国際市場に混乱が広がっている。
日本国内ではすでに食料品の値上げが続き、輸入小麦は過去2番目の高値となることを農林水産省が発表したばかり。
事態の長期化により、さらなる価格高騰に追い打ちをかけそうだ。…(以上引用)
(日本食糧新聞)

 

というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。

挿画

 

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