★公開日: 2022年3月2日
★最終更新日: 2022年3月3日

食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

それでは、今週3月1週目のウィークリー・ニュースチェックです。

挿画:ひな祭り

 

鳥取の農業高校の食品科がJFS規格取得

昨日3月1日、鳥取県にある農業高校、鳥取県立倉吉農業高校が、「JFS-B」規格を取得した、という報道が入ってきました。

【JFS規格証明取得 倉吉農高、全国で2校目】
(2022年03月01日)
 倉吉農高の食品科食品コースが、国際的に通用する食品安全の管理規格「JFS(ジャパン・フード・セーフティー)」の中の「JFS-B」に適合証明された。
適合となったのはハム、ベーコンなどの食肉製品と福神漬けなどの農産物加工品で、高校では全国で2校目。…(以上引用)
(日本海新聞)

「JFS」って、何?
…という方は、少しばかり勉強が足りないかもしれませんね。

「JFS(Japan Food Safty:ジャパン・フード・セーフティ)」というのは、2016年に発足した「一般財団法人食品安全マネジメント協会(JFSM)」が定めた、日本発にして日本初となる国際標準規格の食品安全マネジメントシステムです。

ま、ものっそい乱暴に言ってしまうと「JFS」というのは、実質、日本オフィシャルのHACCP、あるいはISO22000など、です。

さてこの農業高校が取得したのは、そのJFS規格のうちの「JFS-B」というものだという。

で、その「JFS-B」って何だよ、という話なんですが。
このJFS規格にはレベル別に3種類あるんですね。
で、それぞれ「JFS-A」、「JFS-B」、「JFS-C」と求められるレベルが高くなっていきます。

JFS規格
  • FS-C:国際取引に使われるGFSIベンチマークスキーム(ISO22000と同格あるいはそれ以上)
  • JFS-B:HACCP12手順の実施を含む(HACCPシステム)
  • JFS-A:HACCPの考え方を取り入れた一般的衛生管理中心
参照画:JFS規格
JFS規格の管理水準

この「JFS」は、この日本国内では、お上お墨付きのマネジメントシステムであるうえ、比較的中小企業が取り組みやすく、比較的安価で認証が可能なうえにわかりやすく、そのため今かなり人気のある認証規格です。
今、一般的に「HACCP認証を取得する」というと、およそこの「JFS-B」であるのが割とポピュラーになってすらいます。

で、その「JFS-B」の規格認証を、鳥取県の農業高校の食品科食品コースが取得した、というのが今回のこのニュースです。
一般的にはこの「JFS-B」というのは、食品企業の製造工場などで取得するケースが多いので、このように農業高校が取得するのは珍しいです。

…と思ったら、これは今回は全国2校目だとか。
なんでも2020年に、石川県立翠星高校が日本初のJFS-B取得を果たしたのだとか。
ああ、そういえばこれ、当時ニュースチェックしてて見たことあるわー。今思い出した。

さて、この鳥取の農業高校の話に戻るとして、このニュースの最後のほうに、「同校は18年に県内の高校で初めて県食品衛生条例に基づく「県HACCP」の適合施設に認定されている。」とあります。
これは鳥取県が自治体として出しているHACCPがあるのでしょう。そこにも認定された、ということですね。

挿画:食品工場のイメージ

相次ぐ異物混入で佐賀県の小学校給食停止

佐賀県の小学校で給食への異物混入が相次ぎ、昨年の12月から給食が停止している、というニュースが取り上げられています。

【異物混入相次ぎ停止も 給食の安全と安定供給へ何が必要?】
(2022年02月24日 19:30)
624人の児童が通う佐賀大学附属小学校。去年12月6日から給食の提供を停止しています。その理由は異物の混入が相次いだため。12月までおよそ1年半の間に10件、プラスチック製樹脂の破片や髪の毛などの異物が給食から見つかりました。…(以上引用)
(SAGA TV)

この佐賀県の学校給食への異物混入は、以前にもこの記事(↓)でニュースの例として挙げたことがありますね。
まだ問題続いてたんかい!

さてこの記事で、ぼくが「ん?」と首をかしげたのは、やれ専門家だというよくわからない大学教授が、異物混入事故のことをなんだかしたり顔で語っているわけです。

「異物混入を肯定する気はないが、異物混入は起こらざるを得ないぐらいのもの」「冬場は静電気が発生しやすい。毛糸のセーターの一部が引っ張られたり、髪の毛が入るということはないわけではない。それはもう避けようがないものだと思う」…(以上引用)
(SAGA TV)

どんな文脈でこれらが語られていたのかここからは全くわからないのですが、とりあえずこのまんま受け取るとすると、食品製造の現場に関わるひとなら、「ああ、そりゃー混入するわ」とため息を漏らすんじゃないでしょうかね。
つまりはこの程度の認識のひとの言葉だ、だということです。

どういうことかというと、普通の食品工場の感覚であれば、「ていうか、そもそも毛糸のセーターなんていう異物要因をわざわざ場内に着て入らないし、であればそういう無塵衣で体を覆うし、それを持ち込まないために入場ルールが定められているわけだし、ばらばらと静電気で毛髪が入らないようにするための着衣着帽だろう」というのが常識です。

給食の環境はそうじゃないんだ、というのも一応わからなくはないですが、でもこれは「避けようがない」のではなくて、「避ける努力をハナからしていない」であって、そりゃあ異物混入もするわな、という話。
要するに改善というのを放置しとる側の言い訳です。
つまりは「異物混入を肯定する気は(ゼロじゃ)ないが、(この程度の管理と環境と改善状況しかしないから)異物混入は起こらざるを得ないぐらいのもの(と捉えてもらいたい)」程度にしか考えてない、ってことですよね。

…ていうかこれ、よくよく読むと、ほんと内容的にデタラメばっかりで、ちょっと余りにひどいなー。
呆れ顔とため息しか出ませんわ。

挿画:給食

ひきわり納豆が拡大中の納豆市場とは

少しばかり、勝手に気になった食品業界ウォッチネタを。
納豆業界のなかで、ひきわり納豆市場の成長とその動向が注目されている、ということのようです。

【納豆 ひきわり市場が拡大 売上げアップへ品揃え強化】
(2022年02月26日)
ひきわり納豆の市場が拡大している。
20年のコロナ特需の翌年も同市場は拡大。食べ方も丸粒の納豆と同様にご飯へかける割合が増えており、引き続き伸長が見込まれる。市場をけん引する大手メーカーもひきわり納豆のラインアップを強化し、売場の売上アップと買い上げ点数アップに貢献していく。…(以上引用)
(食品新聞)

というのも、元々納豆市場自体、発酵食品の人気や健康志向なニーズなどから、ここ10年くらい伸びの好調な市場でした。
その結果、2016年年以降は毎年過去最高を更新し続けており、2020年の伸び率は過去最大となった、とも言われています。
というのもこの2020年初頭、国立がん研究センターが、日常的に納豆を摂取する層は死亡リスクが10%以上も低下すると発表。
これらのことがテレビなどのメディアで取り上げられ、納豆特需状態となったことは、記憶にもまだ新しいことかと思います。

そしてなかでもひきわり納豆の売上は、これらにおいてここ5年程度で約1.7倍へと増加。
さきのメディアの影響をはじめ、ここに加えてかねてよりの新型コロナウイルスの生活影響、買いだめなどがそこには関係していたのでしょう。

しかしそんな成長ぶりのなか、今年においてはそのメインの購入先である量販店への消費者の来客頻度が落ち着きつつあります。
ここで次の市場戦略、購入数や単価アップを業界が狙っている、ということ。

とはいえ納豆市場というのは古くからの食品産業のお約束どおり、元々、中小企業が多く、トップ数社がそのシェアの過半数をごっそり握っている、という構造です。

納豆市場シェア上位企業
  1. タカノフーズ(「おかめ納豆」など)
  2. ミツカン(「金のつぶ」、「くめ納豆」など)
  3. あづま食品
  4. ヤマダフーズ
  5. マルキン食品
  6. 丸美屋

茨城県のタカノフーズと、愛知県のミツカン。
これが納豆業界の東西二強と呼ばれており、これだけで市場シエアの過半数以上、とも言われています。
さらに言うなら、上のトップ6社でほぼ8割近くを占めているのだとか。

さて。2位のミツカンさんですが、ミツカンというと「味ポン」などのお酢のイメージですよね。
そのとおり醸造酢メーカーの老舗であったのですが、同じ発酵食品ということもあって、自社で培ってきた高度な発酵技術のノウハウを駆使することで、1997年に納豆業界に新規参入。
それ以来、ここ20数年で急激にめきめきと頭角を現し、トップをおびやかすような存在となった、ということです。
そういえば、こっち関東じゃ昔は「金のつぶ」って見なかったような…。

挿画:納豆

大阪で「フードテックジャパン」初開催

最後に、展示会の情報に、さらっとだけ触れておきます。
来週3月9日から、大阪で初となる「第一回フードテックジャパン」が開催される、ということです。

第1回フードテックジャパン大阪
  • 会期:2022年3月9日~11日(金)
  • 会場:インテックス大阪
  • 主催:RX Japan㈱
  • 同時開催展:インターフェックス、再生医療EXPO、ファーマラボEXPO、

【フードテックジャパン [大阪] とは】
本展は、食品工場・飲食店向けのロボット、IoT・AI、製造・調理機器、HACCP・衛生管理などが出展し、来場する食品メーカーや飲食店と商談する絶好の場です。

医薬品や化粧品の製造展として知られる「インターフェックス」を中心にした展示会の一画で、DXなどの食品製造や飲食店の最新技術展がなされる、ということなのでしょう。

去年の9月、東京開催での「第二回フードテックジャパン」については前に記事に取り上げましたね。
今回はその始めての大阪会場版、というわけです。

挿画:第2回フードテックジャパン2021

というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。

挿画

 

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