★公開日: 2022年2月25日
★最終更新日: 2022年2月26日

食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。

…なんですがすみません、更新スケジュールが間に合わず、金曜日になってのニュースチェックとなってしまいました。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

それでは、今週2月4週目のウィークリー・ニュースチェックです。

挿画:梅

 

ノロウイルス集団食中毒

さーせん!
前回までの三幸製菓のお話書いていたら、ノリにノリまくりでド長文になってしまい、ニュースチェックが遅くなりましたー。

というわけで水曜恒例のウィークリーニュースチェック、二日遅れの金曜に追っていくとしましょう。
ここ数日、世間というか世界はロシアのウクライナ侵攻に湧いていますが、それらは他におまかせするとして、ウチは食品衛生の専門なので今週も安定のこっちやっていきますねー。

というわけでまずは軽めのジャブくらいから。
今週も何件か、ノロウイルスの集団食中毒の報道があげられています。
少しばかり拾っていくとしましょう。

まずは2月22日、愛媛県の老人福祉施設で25人がノロウイルス食中毒に発症したとのこと。

【久万高原町老人福祉施設で25人ノロウイルス食中毒】
(2022年02月22日 18時42分)
久万高原町にある老人福祉施設で、入所している男女25人が相次いでおう吐などの症状を訴え、保健所はこの施設で提供された食事が原因のノロウイルスによる食中毒と断定し、施設から委託を受けて食事を調理・提供した業者を6日間の営業停止処分にしました。…(以上引用)
(NHK)

参照画:ノロウイルス
愛媛県

また東京都八王子市でも、その前日の2月21日、こちらも高齢者施設でのノロウイルスの集団食中毒が発生があったことが報道。
14人の発症者が確認されています。

【高齢者施設でノロウイルスの集団食中毒 東京・八王子市で】
(2022年02月21日 22時04分)
 東京・八王子市の高齢者施設で14人が下痢や嘔吐(おうと)などの症状を訴え、東京都はノロウイルスによる食中毒と断定しました。
 東京都によりますと2月13日から15日にかけて、八王子市の高齢者施設の入所者51人のうち14人が下痢や嘔吐、発熱といった症状を示しました。この施設では入所者のほか、12日と13日に給食の調理に携わっていた人にも下痢などの症状があり、ノロウイルスが検出されたということです。…(以上引用)

(TOKYO MX)

その少し前、2月16日には関西国際大学の寮において、ノロウイルスの集団食中毒が発生しています。

【関西国際大の寮で食中毒 ノロウイルス】
(2022年02月16日 21時46分)
 兵庫県は16日、関西国際大の「友愛寮」(同県三木市)で、寮の食事を原因とするノロウイルスの食中毒があったと発表した。食事をした計153人のうち男子学生ら19人が吐き気や発熱を訴え、調理担当者4人を含む23人の便からノロウイルスが検出された。…(以上引用)
(産経新聞)

挿画:ノロウイルス食中毒

アサヒビール、国内2工場を閉鎖!?

続いては、業界ウォッチニュース。
今週のメイン取り扱いニュースですが、大手ビールメーカー「アサヒビール」が、国内2工場の閉鎖を発表しました。

【転機のビール類市場 アサヒが2工場閉鎖へ 飲料も製造の新拠点計画】
(2022年2月21日)
17年連続で縮小が続くビール類市場。アサヒグループジャパンは中長期的な市場動向を踏まえて生産拠点を再編しグループのサプライチェーンを再構築する。
「スーパードライ」などを製造するアサヒビール神奈川工場・四国工場は来年1月末で操業を終了する一方、博多工場は26年をめどに移転。ビール類のほかビールテイスト飲料やRTD、アサヒ飲料製品など、グループの多様な製品を製造する新九州工場(仮称)としての操業へ向けて準備を開始する。
(食品新聞)

参照画:アサヒビール四国工場
(アサヒビール四国工場)松山空港

実はこのコロナ禍のなか、ビール市場シェア不動のNO.1であったはずの「アサヒビール」は、やもすればその座を失うほどに、業績を苦しめられています。

というのもこのビール業界というのは、新型コロナウイルスによる外出自粛、飲食店の営業制限などが続くなか、宅飲み需要の高まりによる缶ビール自体の売上は確かに高まったものの、しかしその一方で、飲み会や宴会、イベントの中止・延期などによって、居酒屋などを主とする飲食店に卸す業務用ビールの出荷数が激減してしまいました。
その結果、ここ数年ほどかけて大きな苦境と一大変革の転換期にさらされていたのが、このビール業界なのです。

そのなかでも業務用ビールの販売ルート比率が元々高かった「アサヒビール」は、このところ、かなり苦戦を強いられているようです。
とくにここ数年、最大の主力商品である「スーパードライ」の売上が低迷したのは、「アサヒビール」にとっては大きな痛手だった。
というのも「アサヒビール」は、競合ライバル企業らに比べるとその販売数量構成が大きく違うのです。

何といっても「アサヒビール」といえば、イコール「スーパードライ」。
80年代から、この「スーパードライ」によって、ビール市場の揺るぎないまでな不動のトップ企業を走り続けてきたのが「アサヒビール」なのです。
つまり「アサヒビール」は、「キリン」「サッポロ」「サントリー」など他の市場トップ勢に比べて、圧倒的にビールの比重が大きいのが特徴なのです。
だからこそその痛手によるダメージが、他企業よりも大きかった。

例えば「アサヒビール」の場合、ビールが6割以上を占めている。
発泡酒や「第三のビール」などといったビール以外のアルコール飲料は、せいぜい40%弱くらいしかない。
対して、最大のライバルである「キリン」は、ビールが僅か33%という構成。
これは「アサヒビール」に対して約1/2程度のものであり、その残り60%以上が例えば「本麒麟」のような発泡酒などの新ジャンルとなっているのです。

このように、「アサヒビール」はビール、なかでも「スーパードライ」への依存度がめちゃくちゃ高かった。
これが、「アサヒビール」がコロナで一人負けしてしまった最大の理由です。
運が悪かったとしか言いようがないですが、それ以外にもやはりそれのみならず、市場や生活様式の変化という要因はそこにも大きく働いている。

例えば、第三のビール「本麒麟」が売れに売れている「キリン」は、それに反して大きく業績を伸ばしています。
この例などは、若者を中心とした長中期的な「ビール離れ」という要因をはじめ、コロナ禍による「宅飲み需要」、出来るだけ安いアルコール飲料をという生活様式のニーズにマッチしていたのでしょう。
事実、「本麒麟」が発売されたのは、2018年3月のこと。にも関わらず、その2年後である2020年3月には、「本麒麟」はすでに10億本を突破するほどの勢いある一大メガヒット商品となりました。

こうして価格的戦略に打って出たキリンの業績が好調な反面、しかし「アサヒビール」はといえば、例えばフタがパカっと開く「生ジョッキ缶」や「マルエフ」などで何度かスマッシュヒットとも言える好成績を記録してはいるのですが、しかし今ひとつ会社全体としての業績好転にまでは届いていない様子。

参照画:アサヒビール生ジョッキ缶
アサヒビール

アサヒビール「スーパードライ」36年目の初リニューアル

そうしたなかでの工場閉鎖ではあるのですが、しかし。
そんな一方で、「アサヒビール」は自社の主力である「スーパードライ」を、発売以来の1987年から36年ぶりのリニューアルをはかっています。

【いよいよ2月21日から! 1987年の発売以来初のフルリニューアル「アサヒスーパードライ」】
アサヒビールは、「アサヒスーパードライ」を、1987年の発売以来36年目で初めてフルリニューアル。
中味・パッケージ・コミュニケーションを同時に刷新し、2月21日から全国に出荷します。…(以上引用)
(GetNavi)

【『アサヒスーパードライ』発売以来36年目で初となるフルリニューアル
中味・パッケージ・コミュニケーションを一新し“新スーパードライ”を訴求】
(2022年01月06日)
アサヒビール株式会社(本社 東京、社長 塩澤賢一)は、主力ブランド『アサヒスーパードライ』を、1987年の発売以来36年目で初めてフルリニューアルします。
中味・パッケージ・コミュニケーションを同時に刷新し、2月中旬以降製造分から、順次切り替えます。
日本国内市場が成熟化し、商品の差別化が難しくなる中で、唯一無二のブランド価値を持つ商品が選択される傾向にあります。今回「スーパードライ」の特長である“辛口”や“シルバーパッケージ”といった価値をさらに磨き上げました。
(アサヒ)

参照画:リニューアルした「アサヒスーパードライ」
アサヒスーパードライ

おお、2月21日から発売、ということは、もう今週からすでに発売が開始されている、ということか!
これは是非とも早く飲みたいところだなあ。

しかも「アサヒビール」は先週に開催された「日本食糧新聞社」による「第40回食品ヒット大賞」にて、先にも触れた「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」が受賞を受ける、などとされていたりも。
またこの「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」も、未だ市場で売り切れの続く人気ヒット商品。
まだまだ「アサヒビール」にも、これらなどによる挽回のチャンスはあるものと推測されます。

またマス層に向けて「アサヒビール」も、こうした時代による生活方式の転換、市場ニーズの変化に対して指をくわえてただ見ているだけでは、当然ありません。
とくに昨年から着手した、DX化を軸とした「微アルコール」による新たなチャレンジに、このところ注目が集まっています。

「微アルコール」というのは、「アサヒビール」によれば、アルコール度数1%未満のビールテイスト飲料、とのこと。
とくに昨年2021年発売されたアルコール度数0.5%の微アルコール商品、「ビアリー」がかなり好調を示しているということ。

しかもこの「ビアリー」のヒットの裏には、「Value Creation室」なるアサヒビールのDX化を計画進行する社内特設のマーケティング、ビジネスアナリスティック専門部署の存在があるなど、ちょっと調べてみるとなかなか興味深い話が出てきたりします。

参照画:アサヒビール「ビアリー」
アサヒビール

ちなみに「アサヒビール」の「スーパードライ」については、昨年、茨城工場の工場見学についての話を書いたことがあるのです。
なので、せっかくなので再掲載の機会を狙っていたのですが、でも「スーパードライ」もリニューアルもしたことだし、どうせだったらまた早々に工場を再見学して、レポもリニューアルしたいところだなあ。
それに、工場で試飲する出来たてのリニューアル「スーパードライ」もきっと美味いんだろうなあ…ってそれかよ!

というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。

挿画:春の乾杯

 

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