★公開日: 2022年2月16日
★最終更新日: 2022年2月18日

食品衛生のプロが、気になったメディアのニュースを紹介・解説したり、あるいは日々の衛生管理業務で起こったお話などを、さらっと簡単に触れていきます。
毎週水曜日は、出来るだけ一週間くらいに起こった食品衛生界隈のニュースをさらっとまとめてピックアップしたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

それでは、今週2月3週目の水曜ニュースチェックです。

挿画:2月のイメージ

 

飲食店の弁当で65人がウェルシュ菌食中毒に

まずは、ここらからいきましょうか。
2月10日、大分県の飲食店による弁当が原因で、65人ものウェルシュ菌の集団食中毒が発生したとの報道があがっています。

【弁当で65人食中毒 飲食店を2日間の営業停止処分 由布市】
(2022年2月10日 17時26分)
今月7日、由布市の飲食店の弁当を食べた会社の従業員65人が下痢や腹痛などの症状を訴え、大分県は食中毒と断定し、この飲食店を10日から2日間の営業停止処分にしました。…(以上引用)
(NHK NEWS WEB)

ウェルシュ菌食中毒は、その声質上、集団化しやすい、という特徴があります。
こちらでは65人が発症を訴えていますが、割と3桁レベルの大規模な集団食中毒にも至りやすかったりします。
これについては、ウチでも以前書いた通りです。
下の記事を参考にしてみてください。

またカンピロバクターなどの食中毒に比べ、ウェルシュ菌の食中毒というのは、夏だけでなく、意外とこのように真冬にも比較的起こりやすいのが特徴です。
それは、ウェルシュ菌による食中毒というのは、主に加工・調理した食品の冷却の失敗によって起こることが多いからです。


Wikipedia

アニサキスによる食中毒が複数発生

またその一方で、アニサキスによる食中毒が、いくつか発表されています。

2月11日、埼玉県越谷市のイオンレイクタウンで、刺身を買った男性がアニサキス食中毒を発症したと報道されました。

【刺し身食べ、男性腹痛…アニサキス摘出、埼玉・越谷市が行政処分】
(2022年2月11日 07時44分)
埼玉県の越谷市は10日、イオンレイクタウン店の食品売り場でアニサキスによる食中毒が発生したとして、営業停止1日間の行政処分を行ったと発表した。…(以上引用)
(埼玉新聞)

これ以外にも、2月10日には東京都台東区の飲食店でシメサバを食べた2名が、東京都墨田区の魚介類販売で、その数日前には石川県輪島市の寿司店で刺身9種類食べた男性らが、やはりアニサキスの食中毒を訴えました。

なお、アニサキス食中毒に関しては、別途記事を書くとします。

「大豆ミート食品類」JAS規格制定で注目高まる!?

さて、先週「大豆ミート」のニュースを取り上げましたが、それに続いて。
日本の味噌メーカーのシェア率トップ企業である「マルコメ」が、長野県の本社工場に大豆ミートの製造ラインを増設した、とのニュースが入っています。

【マルコメ本社に大豆ミート製造ライン設置、丸大豆専用、大豆臭92%カット】
(2022年2月16日)
家庭用大豆ミートの国内販売シェアトップのマルコメは、生産能力の拡大が必要と判断し、長野県の本社内に大豆ミートの製造ラインを増設した。
(略)
新生産ラインの大きな特徴は、「お客様から寄せられる『大豆臭(独特な異風味)』を92%カットした。これまで使用していた脱脂大豆ではなく、丸大豆を加工することによって、圧倒的にクセの無い『大豆のお肉』の生産が可能となった」とする。…(以上引用)
(食品産業新聞)

このように「美味しさ」の追求をあきらめない日本企業の強さは、今後のフードテックの中でも強い持ち味となる可能性が大きいのではないでしょうか。

さらに。
興味をひく記事が同時期にこちらの「食品産業新聞」に記載されていました。
これ、ちょっと紹介しておきましょう。
「大豆ミート」のJAS規格制定について書かれたものです。

【大豆ミート JAS制定でピラミッド構造化、調製大豆ミート食品は入門的位置づけ】
(2022年2月14日)
大豆ミートの2022年の大きなトピックはJAS(日本農林規格)制定だ。
これまでの大豆ミートは、牛肉などの畜肉を混ぜたハイブリッドタイプの商品も投入されてきたが、大豆を主な原材料に使用した加工食品が「大豆ミート食品類」として規定されるため、それらはJASに該当しなくなる。その上で動物性を完全に使用しない「大豆ミート食品」と、乳や卵などは使用する「調製大豆ミート食品」に定義が分けられることになる。…(以上引用)
(食品産業新聞社)

ここで押さえておくべきなのは、まず新たに制定される「大豆ミート」のJAS規格というのは、これまでもあった「畜肉混合を主としたもの」ではない、ということ。
つまり、今後の「大豆ミート」はそうした、ほぼ植物性による人工肉を方向として目指している、というのがまずの一点だということになります。

で、その上で。
動物性を完全に使用しない「大豆ミート食品」と、乳や卵などを使用した「調整大豆ミート食品」の2つに分かれる、とのこと。
これが二点目になるのでしょう。

その上で、ヴィーガン市場などを見ながらもしばらくは乳や卵などを使用した「調整大豆ミート食品」が市場のメインとなることを見越しつつ、しかしここにはないですが、もっとさらなる先の食肉という将来性を考えながら、動物性を完全に使用しない「大豆ミート食品」の発展を、国政としては見ていかないと食の安全供給などに対応出来ない、というのがここから見えてくるところでしょう。

いずれにしたって、今後の鍵は「大豆の生産」なのは間違いないでしょう。
食品に携わる立場であれば、そこはちょっと念頭に置いてもいいかと思います。
って上の年始で話した通りですね、これ。

挿画:大豆

三幸製菓、工場火災

はい、今週のメインはやはりこれでしょう。

先日2月11日深夜、新潟の三幸製菓の工場で、大規模な火災が発生。
これによって死者まで複数出た様子です。

【「三幸製菓」工場火災 せんべいの焼き釜周辺から出火か】
(2022年02月17日 19時44分)
村上市にある、菓子メーカー「三幸製菓」の工場で6人が死亡した火災で、製品のせんべいを焼くために使う焼き釜の周辺から火が出て、燃え広がったとみられることが捜査関係者への取材で新たに分かりました。…(以上引用)
(NHK)

挿画:消防車

最初に一応、断っておきましょう。
まず、この件に関しては、ぼくの専門分野の扱いでは全くありません。

ぼくの専門はあくまで異物混入対策や食中毒防止、そのための有害生物防除(防虫防鼠)や微生物対策、そしてそれらをとりまくマネジメントシステムといった、「食品安全」における食品衛生の専門家です。
ですからこのような、製造現場上の安全対策となる安全衛生とは、ややながらジャンルが違います。
つまり、食品製造環境をめぐるプロではあるのですが、やや反れる、という感じです。
なので、ここはそもそもがお門違いだ、ということを前提と踏まえて、扱うことにしています。
(とはいえ、一般の方々よりは食品の製造現場に詳しいですけど)

ですが、やはり食品製造現場、「食」を作る場に携わる身の一人としては、やはり無視の出来ないニュースでもあるのもまた事実です。
よって現状においてこれ自体かなりセンシティヴな話題ではあるのですけど、本件についてはまた別途の記事で、少しばかり触れようかと思っています。

というわけで、今週はこの辺で。
ではまた来週。

 

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