★公開日: 2022年2月11日
★最終更新日: 2022年2月12日

皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

前回【25】では、防虫管理を始めるあたってその基礎となる防虫管理図面の作成の方法をお教えいたしました。

この【26】では、それを完成させてしまうとしまうとともに、次の【27】に引き継いで、あなたの工場や厨房で何が問題になりそうなのか、それをこの管理図面から先読みしていく方法をお伝えいたします。

【今回・次回で行うこと】「防虫管理図面」を完成させ、読み取っていこう
  1. 防虫機器・モニタリングトラップのプロット【26】(今回はここまで)
  2. 防虫管理図面の見直し【27】(次回行います)
    ・モニタイングの適切性チェック
    ・潜在的リスクのチェック

 

防虫管理図面を踏まえて

さて、前回までを踏まえておりますでしょうか。
であれば、これまでで下のような手順は踏まえているはずです。

【前回行ったこと】「防虫管理図面」を実際に作ってみよう(【25】参照)
  1. 工場内、厨房内のレイアウト図面を作る
  2. 各部屋名を入れる
  3. 場内のヒト・モノの動線を記入する
  4. それにあわせて、工場内の清浄度区分(ゾーニング)を2・3段階で行う
    「清浄区域」、(「準清浄区域」)、「汚染区域」
作成画:防虫管理図面

まだできていないよー、というかたは、前回に戻って「簡単でもいいですから」それを行ってきてください。
今回はそれを踏まえたうえでのお話となります。
大丈夫、その工場や厨房をいつも把握しているあなたであれば、A4白紙にペンと蛍光ペン2~3本を用意して、10分程度で事足りることですから。

さあ、これらを終えたら次のステップにいきましょう。
ここで、基礎的な防虫管理図面は揃いました。

あなたの目の前にある、その図面。
その図面で「清浄区域」と塗り分けられている箇所。それが、防虫管理上での重要管理点、守るべき清潔エリアです。
と同時に、そこではだからこそ、新たな危険となる昆虫の「内部発生」を抑えなければいけませんよね。

一方で、その図面で「汚染区域」と塗り分けられている箇所。それが、防虫管理上では「防虫ゾーン」、つまり極力昆虫の侵入をそこで抑えたいエリアとなります。

つまり、おおまかな考え方としては、大きく次のようになります。

各清浄度エリアの防虫管理の目的
  • 清浄区域:「発生リスク」の低減
  • 準清浄区域(なければ「汚染区域」が担う):「拡散リスク」の低減
  • 汚染区域:「侵入リスク」の低減
  • (外周環境:「環境リスク」の低減)
4つのリスクのための防虫対策イメージ
4つのリスクのための防虫対策イメージ

外部に一番接する「汚染区域」では、昆虫の侵入をいかに防ぐか、つまり「侵入リスク」をいかに減らすかが重要になります。

続いて「準清浄区域」というのは、そうして侵入してしまった昆虫をいかに拡散させないか、つまり「拡散リスク」を減らすエリアになります。

最も重要な「清浄区域」というのは、それでも侵入してきてしまった昆虫をいかに増やさないか、「発生リスク」を減らすためのエリアです。
(ついでに言うのであれば、この図面にはありませんが、敷地内などの外部周辺環境、建屋外周などは、いかに昆虫を寄らせないかという「環境リスク」に対応するためのエリアとなります)

さあ、このように見ていくと、それぞれの清浄度エリアの防虫管理上での目的というのが見えてくるのではないでしょうか。

挿画:三段階の清浄度

防虫機器やモニタリングポイントの追記

おぼろげながら、それぞれのエリアで何を行うかが見えてきた。
そんな感じかと思います。

では次です。
それを踏まえての、むしろここからが、今回【26】の本題です。
つまり、「防虫管理図面」を完成させるのです。

「防虫管理」の図面なのですから、管理内容を書き込まなければ、それはただの場内の図面でしかありません。
ここまで来たのですから、それではこの「防虫管理図面」に様々な防虫機器やトラップをプロットしてしまいましょう。

さて、ここで質問です。
あなたの工場や厨房に、こういう昆虫の捕獲用のトラップはありませんか?
もし、「ある」という方は、このまま読み進めてください。
もし、「ない」という方は、この項を軽く読み進めた後に、次の項に進んでください。

さて、「ある」という方。
これは「ライトトラップ」という、青白い灯火と粘着性のトラップで出来ている機械です。
タイプは様々ありますが、原理的にはほとんど同じです。
おそらくはこのようなものを天井近くや壁面に設置している、と思います。

これは何のための道具でしょうか。
実はこれ、飛んで移動する昆虫(飛翔性昆虫)を誘引し、捕まえ殺して生息数を減らすと同時に、虫が場内にどのくらい生息しているのか、それを調査する(「モニタリング」、と呼びます)ための道具なのです。

「飛翔性昆虫用」ということは、当然ながら「歩行性昆虫用」もあるのです。
これに加えて、場内の端や隅の床面にも、なんか三角だったり台形だったり四角型だったりの、一般の方々からすれば「ゴキブリホイホイ」とやもすれば見間違いかねないような、そんな昆虫トラップを置いてあったりしませんか?

参照画:床置き式粘着トラップ

これは一般的に「床置き式粘着トラップ」、あるいは「組み立て式床置きトラップ」など、いくつかの名称で呼ばれるものです。

この形状を見ると、ゴキブリ用のトラップかな、と思うかもしれません。
確かにそういうゴキブリ専用のトラップもなかにはありますし、それと兼用の場合もあります。
が、でもこれ、別にゴキブリ「だけ」を対象にしたトラップでは、実はありません。
実は、ゴキブリのみならず、「歩行性昆虫」を対象にした捕獲用トラップなのです。
さらには飛翔性昆虫だってこれでモニタリングすることもあります。

これらは何のために工場や厨房に置いてあるのでしょう。
そう、工場や厨房をモニタリングし、防虫管理を行うために置かれているわけです。
だからそれを、「防虫管理図面」のなかに書き加えていく必要があります。
そうすることで、管理状況を把握しやすくなるからです。

とくに現在、外部業者への年間委託などで防虫管理をお願いしている場合、すでにPCO(ペストコントロール)業者によって幾種類かの捕虫トラップを配置、設置しているはずです。
それを図面にプロットしてみてください。あるいはそうしたものを業者から取り寄せてください。

いやまだ、実はこれから防虫管理を始めるところなんだ。
そういう工場や厨房であれば、こう考えてみてください。
「防虫管理のために、どこに、どんなものを、どう配置すればいいのだろうか」と。

それはおよそ次のようものです。
多くのPCO業者は、このようなものを盛り込んだ提案をしてくるものです。自社管理においても、そこはあまり変わりません。

主なモニタリング用トラップ
  • 「ライトトラップ」(光学式捕虫器)
    →主に、飛翔性昆虫対象
     誘虫ランプによって昆虫を積極的に誘引、捕獲するタイプが主流
     各エリア、各々のリスクが想定される箇所に1台設置を基準とする
  • 「床置きトラップ」
    →主に、歩行性昆虫対象だが、飛翔性昆虫の捕獲も兼ねる
     場内に生息している歩行性昆虫を捕獲する。紙製、或いは樹脂製など
     各室内に1P設置を基準とする
  • 「フェロモントラップ」
    →上のトラップでの捕獲が困難な、貯穀害虫対象
     特殊なフェロモンによって周辺生息の特定昆虫(主に雄のみ)を誘引、捕獲
     穀粉を多用・保管する場合のみ設置
  • 「ゴキブリトラップ」
    →主に、ゴキブリ対象。
     基本的には無誘引だが、誘引剤や喫食剤(ベイト剤)等を使用することもある
     チャバネゴキブリの生息が懸念される場合のみ設置
  • 「鼠用粘着トラップ」
    →鼠対象
     粘着式のトラップによって無誘引で捕殺する
     ネズミの生息が懸念される場合のみ設置(生息調査用の場合もあり)

防虫管理で使われるトラップの主だったところといえば、およそこんなところでしょう。
では、これらの防虫機器の配置ポイントを、図面上にプロットしてみましょう。
おっと、表記の方法にとらわれることはありません、別に決まりもないですから。一例としてはこんな感じです。

これから防虫管理を始めるかたへ

さて、こういう「ライトトラップ」を「持っていない」というかた。
きっと今、こう思っていることでしょう。

「いやちょっと待ってくれよ。
こちとら、これから防虫管理を始めるんだ、何だよ『ライトトラップ』って。
そんなの知らないし、持ってもいないよ。
え、『床置き式粘着トラップ?』何それ?」
と。

わからなくても、今持ってなくても、大丈夫です。ポイントをお教えします。

とりあえず、防虫管理の基本として使用するトラップといったら、上の「ライトトラップ」と、あと「床置き式粘着トラップ」の2つです。

まずは「ライトトラップ」
先に画像を出したこれ、その名の通りにこの青白い誘引ランプで昆虫を集めて誘引し、中に仕掛けてある粘着状のトラップで捕らえる機械です。
1台あたり1~3万円で購入出来ます。
これが、防虫管理のメインアイテムとなりますから、最低でも1台は欲しいところ。
(別記事でお勧めやより詳細な設置ポイント、設置方法などを解説します。お待ち下さい。)

ただしこちらは高めの箇所に取り付けるので、飛んで移動する虫(飛翔性昆虫)しか捕獲できません。
だからもう一つ、徘徊性の昆虫(歩行性昆虫)のための「床置き式粘着トラップ」を使います。
こちらは安価なぶんだけ使い捨てで、月度に1回程度を目安に交換していきます。

参照画:床置き式粘着トラップ

一般のPCO(ペストコントロール)業者であればこの2つは、ほぼほぼワンセットで用いられることがほとんどです。
なぜなら、飛翔性昆虫と歩行性昆虫の双方を対象にしていかないと片手落ちになるからです。

それ以外のものは、環境の必要に応じての使用となります。
まあ最初特別な問題がなければ、この種、とりあえずはライトトラップから始めるとしましょう。

挿画:ライトトラップ

ライトトラップの設置を考える

なお、ライトトラップや床置きトラップの詳しいお話は、また別でじっくりと行うのでご安心ください。
今のところは、そういうものがあって、そういうものが必要なんだ、と思っていただければそれでもう十分です。
(タグや検索によって記事を探せるように、あとでしておきます)

ライトトラップを持ってない、これから考えるんだ、というかたは、ではまず「ライトトラップ」のみを考えて、どこに設置すればいいか、といった考えで読み進めてみてください。
(「床置きトラップ」は、ある程度が理解でき、もう少し進んでから導入してもなんとかなるものです)

自分の工場や厨房の、どこにいくつライトトラップを設置すればいいのか。
それはおよそ、各エリア、各々のリスクが想定される箇所に1台設置が基準、と考えてみてください。
当然ですが、多ければいいというものでもないですし、足らなくても効果はありません。

またライトトラップは、どこにでもつければいいというものでも実はなかったりします。
効果的な場所、逆効果な場所などがあるのですが、これについてもまた詳細に別途記事を詳しく書く予定です。
さしあたり、以下にライトトラップの原則的な設置条件を、簡単に記載しておきます。

もっともこれはあくまで原則であり、実際には電源の関係上や動線、レイアウトなどの関係上で必ずしもこれらが守れない場合もあります。
しかしぼくらのようなプロがライトトラップを配置提案する場合には、有る程度この原則に従うのが一般的です。

ライトトラップの設置原則
  1. 床から高さ1.6m~2mに設置する
    →高すぎるトラップには、微小な昆虫は飛翔能力が低いため捕獲されません
  2. 資材・製品動線の直上から1m離れた場所に設置する
  3. 作業台や保管場所の直上から1m離れた場所に設置する
  4. ラインをまたいで昆虫を誘引しない箇所に設置する
  5. 外部(ドアや窓など)に誘虫ランプ灯火がダイレクトに漏洩しない箇所に設置する
  6. 比較的エリア内を広く誘引出来る箇所に設置する
  7. 100V電源の取りやすい箇所に設置する
  8. ラインや製品に近づけず、出来るだけ室内の入り口付近で捕獲する

いかがでしょうか。
意外と制限が厳しい、と思うかも知れませんね。
いや、実際に現場ではなかなかいい場所がなかったりするものです。

重ねてなのですが工場という限られた空間、しかも電源の位置の限られた室内では全ての条件を満たすことは難しいかと思います。
その場合にはいずれかの条件を妥協せざるをえなくなります。
とはいえ、最低限、1から4位までは、ある程度守れるようにしたいものです。

いずれにせよ、「ライトトラップ」があればそれを図面に加え、なければどこに必要かを図面に加えていきます。

まとめ

結構なボリュームになってしまいました。
段々とハイレベルになってきているのですが、ご理解いただけているでしょうか。

でもね、こういうのは実際にやってみないと学べなかったりすることなので、まずはトライ!ってのがいいと思うんですよね。
細かいところは、これからもここで解説を加えていきます。
「モニタリングって何?どうやるの?」とか、「ライトトラップってどれがいいの?もう少し詳しくどこに設置すればいいか教えて」とかは、間違いなく記事にしていきますから、もうしばらくだけお待ちください。

さて。
まずは、今回のこの【26】では、「防虫管理図面」を完成させるまでに至りました。
本当はここで一緒に図面のチェック、見直しまで行きたかったのですが、さすがにもうお腹一杯でしょう。
ですから、次の【27】でそれを続けて行うことにするとしましょう。

【今回・次回で行うこと】「防虫管理図面」を完成させ、読み取っていこう
  1. 防虫機器・モニタリングトラップのプロット【26】(今回はここまで)
  2. 防虫管理図面の見直し【27】(次回行います)
    ・モニタイングの適切性チェック
    ・潜在的リスクのチェック

というわけで、次の【27】では、この「2.防虫管理図面の見直し」について解説していくとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:ビジネスイメージ

 

業務案内

 

  • 防虫対策のお悩み
  • 微生物対策、5S/サニテーション(清掃洗浄)
  • 検査、異物混入対策
  • 各種コンサルタント業務のご依頼
  • 食品衛生、HACCPやマネジメントシステムのご相談
  • 講習会、公演、執筆などのご依頼
  • その他、当サイトへのご意見、ご指摘など

 

ご相談・調査・見積無料。
以下よりお問い合わせ下さい。