★公開日: 2022年2月2日
★最終更新日: 2022年5月8日

皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

さあ、年をまたいでお待たせしてしまいました。
少し間が飽きましたが、「プロが本気で教える防虫管理」シリーズ、前回の【24】の続きに、ぐいーっと戻ります。
前回【24】では工場の防虫管理上のゾーニング、ということで「汚染区域」「準汚染区域」「清浄区域」と3段階に区分する、というお話をいたしました。

ではその知識を使って実際に御自身の工場をゾーニングしていく方法を、今回は具体的に教える。
そんな実践的な回となっています。

【今回行うこと】「防虫管理図面」を実際に作ってみよう
  1. 工場内、厨房内のレイアウト図面を作る
  2. 各部屋名を入れる
  3. 場内のヒト・モノの動線を記入する
  4. それにあわせて、工場内の清浄度区分(ゾーニング)を2・3段階で行う
    「清浄区域」、(「準清浄区域」)、「汚染区域」

 

防虫管理計画設計を振り返る①目標設定

「あーーーっ!」

 

…という間に油断していたら、ですねえ。

「プロが本気で教える防虫管理」シリーズも年をまたいで、しかもそこから更に1ヶ月を過ぎてしまいました…。
続きを書き遅れたこと、続きはまだかという方々、まことに申し訳ありません。

ここで随分と間が空いたので、最初にこれまでのおさらいから行くとしましょう。
もう続きで読んでいただいているから知っているよ、と思われる方は、ここはスルーして次の次の項の今回の本題から読んでいただいても、まあ、一応は構いません。
でも…きっと、新しい気付きや理解もあるかも…ですよ?

てなわけで。
「プロが本気で教える防虫管理」シリーズ、そのうちの「防虫管理計画設計」編をこれまで2回ほど進め、今回は実践編の3回目になります。

ちょっと、ここで一旦お話を止めてしまってアレですが、理解のため少しだけお付き合いを。

もしあなたがこれから、このところのメタボを気にして、健康のためにジム通いをし始めようと思うじゃないですか。
でもジムには色々な人がいますよね。
例えば、プロテイン携帯しながら、ガチムキでバーベルを上げ下げしている、マッチョメン。
あるいは、エアロバイクにハァハァしている、ちょっと小太りの近所のおばちゃん、おっさん。

さて、あなたは何を目指して、このジムに来たのでしょうか。
つまり、あなたの最終的な「目標」はなんですか?

ガチマッチョメンですか?それとも、ちょっとスリムになりたい、ですか?
いやゴリマッチョを別に目指していないけど…ってなりますよね、大概は。

挿画:ゴリマッチョ

このように、どのようにゴール設計をするか、で、つまりは最終目標をどうするか、でジムの通う頻度から期間、行うエクササイズの種、負荷なども変わってくる、というのはなんとなく判りますよね。
さらにはパーソナルトレーナーをつける。
生活改善を行う…。
そういう選択肢も入ってくるでしょう。

これを自分の体の「健康管理」だとすると、その「管理」の「目標設定」ってのをある程度決めておかないと、んじゃ何をするかがわからなくなる、というのは一目瞭然ですよね。

そしてそのためには、んじゃ自分が現状どのような体になっているか、という「現状把握」も重要ですよね。
今太ってしまっているのか、そうでもないのか。
生活習慣は乱れているのか、そうでもないのか。
これらを無視して、いきなりガチマッチョになりたい、といっても段階というものがあります。

こうした「現状把握」のもとで、「目標」を設定する、というのは防虫管理という「管理」においたって、当然ながら基礎中の基礎になります。

そこで防虫管理を行う最初に、そうした目標をおぼろげなりにも設定しておこう、というのが「防虫管理計画設計」編①、でした。
そしてそこでは最終的な目標としての「上位目標」を設定し、その上でこれをなし得るような「達成目標」を設定していこうよ、というのがここでの概ねのお話でした。

防虫計画の設計にあたって
  • 「目的」を明確化させる
  • その「目的」を果たしうる「目標」(「上位目標」)を設定する
  • その「上位目標」を果たしうる「達成目標」を設定する
作成画:管理の中で、上位目標と達成目標を設定する

防虫管理計画設計を振り返る②ゾーニング

さて、続いてお次は「防虫管理計画設計②」、ゾーニング、です。

ここでは防虫管理においての目標設定をするにあたって、「製造工程においてどこが防虫管理において重要なのか」というHACCP的な考え方に基づいた、基礎的な整理・区分を行いました。

つまりは、虫が生息してはまずいレベルを2~3段階に分けて、工場や厨房を見てみようということです。

いきなり虫をゼロの空間を作ろうというのは、人間が考えているほどたやすいものではありません。

だって、どんなに高度な超一流医薬品メーカーの製造施設、人工細胞製造工場だって、虫はゼロじゃないんですよ?
それが、資材や人間がたくさん出入りしてはドアやシャッターをばかばか開放している食品工場がそれを超えてクリーンな環境を作る、なんていうのはぼくら専門家から見ればそれはもはや、理想の空論をはるかに超えた、空想というもの。
残念ながら、それは完全なる現状把握不足。現実を見ないままの物言いでしかありません。

そりゃ確かに気持ちはわかりますが、ならばこそ。順序を踏んでいかないで、うまくいくわけがないのです。
基礎を固めず、素人の思い込みや理想論だけでは何事もうまく進むことがありえないのが、世の常というものです。
先の話で言うならば、今までメタボの運動不足だったのに、そんな現状を棚においてすっ飛ばし、いきなり「ゴリマッチョにならないと許さない」と言いだしているようなものです。

ということで、ここではそのゾーニングの基礎的な考え方をお教えいたしました。

ただし、ここで1つポイントがあります。
そえは「防虫管理」でのゾーニングは、「微生物管理」を目的としてゾーニングを施しているHACCPの考え方とはそこに若干のズレがある、ということです。
詳しくは、記事のほうを読み直してみてください。

食品工場での防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域:汚れた状況でいるエリア(事務所、前室、機械室など)
  • 準清浄区域:製造にダイレクトに関わらないエリア(通路、倉庫、洗浄室など) ※なくても可
  • 清浄区域:製造エリア
    (店舗では、厨房や調理エリアが「清浄区域」。それ以外は「汚染区域」)
挿画:三段階の清浄度

防虫管理図面を作ろう

さあ、これら①②を踏まえた上で、いよいよ今回の本題、③に進むとしましょう。

前回②で、工場や厨房をどのようにゾーニングすればいいか。はある程度理解されたかと思います。
そこで次の③では、それを実際に自身の工場や厨房に落とし込んでいくとしましょう。
つまり、御自身の工場や厨房のゾーニングを、これから実際に行っていくのです。

そのためにはどうすればいいのか。
あなたの工場や厨房の、「防虫管理図面」を作るのです。

清浄度区分(ゾーニング)をはじめとした、各種の工場内衛生管理情報、なかんずく防虫管理情報を記載した図面を、衛生管理図面(または防虫管理図面)といいます。
防虫管理計画にあたり、まずこれを作成することは非常に重要であり、最初の一歩でもあります。

衛生管理図面(防虫管理図面)の目的(作る意味、メリット)
  • 清浄度区分や動線をビジュアルで把握できる
  • 各種防虫機器の図面管理ができる
  • 工場の特質が把握できる
  • 現状の衛生評価がしやすくなる
  • 問題や要因、対策の把握がしやすくなる

と、このように衛生管理(防虫管理)の基本となるのが、衛生管理図面(防虫管理図面)です。

尤も、そんな厳密な図面を作成する必要なんて、全くありません。
ましてやCADで作るような建築図面なんて、全く必要ありません。
ご自身のパソコンにある使い勝手のいいソフト、例えばExcelやPowerPointなどでも全然、十分すぎるくらいです。
なぜなら、重要なのは図面としての厳密性ではなく、情報のビジュアル化に他ならないからです。

ですから、図面作成ソフトの使用法の習得なんかに時間を割くくらいなら、そのぶん自分の工場がどのような状態かの分析に費やすほうが、数百倍は意味があるでしょう。

何なら、紙に手書きだって構いません。
いや最初はそれでいいです。本当に、それでいいです。というか寧ろ、そうしてください。
ただし、「やるとやらないのとでは全然違う」、これだけは長年やってきたプロとして、断言しておきます。

さあ、御託はこのへんで。
それでは、まずは工場の基礎図面を、ささっと作成していきましょう。

工場や厨房の建築図面、ありますか?
なにかしら、工場や厨房の大まかなレイアウト図面は、ありますか?
部屋や通路、倉庫など場内構造のレイアウトさえあれば何でもかまいません、自身の工場や厨房を上からみた基礎図面をご用意いただき、これを元に作成していきます。

え、そんなものはない?
だったらもう、白紙に書いてしまえばいいじゃないですか。
設備のレイアウトなんていらないです。
どこにどんな部屋があるのか。それだけでいいのです。
ちなみに工場調査段階では、ぼくらプロだって図面が用意できなければ皆、そうしています。

くれぐれもですが、ざっくりで構いませんからね。
簡単な構造と、各部屋、名称、そのくらいは入れておくといいと思います。
最初はこんな感じでいいでしょう。

作成画:防虫管理図面

動線を把握しよう

さて、骨組みができましたよ。
次にやるべきことは、各種「動線」の流れです。

動線は大きく分けて、
「モノの動線」「ヒトの動線」とに分かれます。

「モノ」とは、製品。
つまり、原材料がどのように入ってきて、どのような工程を経てどのように加工され、製品や調理品として作られ、場合によっては包装梱包され、または保管され、そして出ていくのか。
そうした、製品の流れのことです。

一方で「ヒト」とは人間。つまりはその「モノ」を作る従事者の導線です。
どのようにその工場や厨房へと入って、そして出ていくのか。

つまりは大まかな工場の、モノの流れとヒトの流れを図面上で把握します。

把握すべき動線
  • 「モノ」の動線:資材・製品の工程上の動線、包材の動線、機材(台車、番重)の動線、廃棄の動線、など
  • 「ヒト」の動線:入退場の動線、作業の主動線、など

ちなみにこれらは、すべてを細かくまで記入しなくても結構です。
おおまかな流れを、図面に矢印で入れていけばそれで全く構いません。
重ね重ねですが、重要なのは全体の現状把握であり、そのためのビジュアル化なのです。

よくわからなければ、せめて資材がどう入ってきて、どういう工程を経て、どう出ていくのか。
そのざっくりとした「モノ」の動線だけを最低限押さえておいてください。
何故ならば、そうすることによってどの部屋を守ればいいのか、どの部屋が重要管理の対象になるのか、見えてくるからです。
まあ、ご自身の工場や厨房でしたら、誰よりも自分がよくわかっていることでしょう。

作成画:防虫管理図面

どうでしょうか。
ヒト、いやそれ以上にモノの流れの把握によって、このような清浄度区分(ゾーニング)の目安がなんとなく、定められてきたのではないでしょうか。

食品工場での防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域:汚れた状況でいるエリア(事務所、前室、機械室など)
  • 準清浄区域:製造にダイレクトに関わらないエリア(通路、倉庫、洗浄室など) ※なくても可
  • 清浄区域:製造エリア
    (店舗では、厨房や調理エリアが「清浄区域」。それ以外は「汚染区域」)

ところで、実際にやってみると、動線のクロスが意外と多いことを知ることでしょう。
食品衛生では、交差汚染はないほうが当然理想的です。
しかし限られた空間で多様な作業にあたらざるをえない現場では、実際はそうもいかないことが多いことがわかるはずです。

以上、これで動線把握がある程度完了しました。
続いては、清浄度区分です。
これまでをもとに、ゾーニングを実施します。

挿画:ゾーニングのポイント

清浄度区分(ゾーニング)をしよう

さあ、ここでやっと、前回のお話です。
2段階、あるいは3段階でのゾーニングを進めていきます。

しかしここで注意点。
まずはその前に、今一度動線を確認してみましょう。
ヒトの流れ、モノの流れに対し、清浄度は定められていくものです。
具体的には、外側から内側へ。奥部に行くにつれ、よりクリーンなほうへ。

その上で、2段階、あるいは3段階に塗りわけていきます。
大体のイメージはこんな感じですね。

作成画:防虫管理図面

まとめ

いかがでしょうか。衛生管理図面が作成できましたでしょうか。
これまでの流れ、つまりは「防虫管理図面」の作り方を、ここでもう一度まとめます。

「防虫管理図面」の作り方
  1. 工場内、厨房内のレイアウト図面を作る
  2. 各部屋名を入れる
  3. 場内のヒト・モノの動線を記入する
  4. それにあわせて、工場内の清浄度区分(ゾーニング)を2・3段階で行う
    「清浄区域」、(「準清浄区域」)、「汚染区域」

とりあえずここらへんまでは進んだでしょうか。
うーん、とそう悩むほどに難しいことではありません。
何せご自分の工場や厨房です、
A4白紙にペンと蛍光ペン2~3本を用意して、大概なら10分もあれば十分に事足りることです。

さて、衛生管理図面ができたぞ!と思う前に、あともうステップだけあります。
もう少しだけお付き合いいただければと思います。
では次の【26】④にお進みください。
次の【26】④で、その管理図面を完成させるとともに、その図面から見ることのできる防虫管理のポイントについて、解説していくとしましょう。ではまた。

 

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