★公開日: 2022年1月28日
★最終更新日: 2022年1月28日

1月24日から1月30日は、「全国学校給食週間」です。
そこで今回はその「全国学校給食週間」にふさわしく、現在の学校給食と食品衛生について、その基本的なお話や最新のニュースなどを紹介しながら見ていくとしましょう。

最初にお伝えしておきますが、今回、ちょっとボリュームが大きくなってしまいました。
ですが、学校給食に限らず、異物混入についての重要な話が出来たかな、と我ながら思っています。
どうぞ読み逃さずに最後まで目を透していただければと思います。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:給食

 

1月24日~30日は「全国学校給食週間」

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

前回、そして今回も冒頭でもお伝えしたように、1月24日から1月30日というのは「全国学校給食週間」である、ということです。

何故この7日間が「全国学校給食週間」であるか、などはもう前回に触れた通りです。
もしご興味があれば、上のリンク先から前回に立ち戻って、読んでみてください。

そして、これを書いている本日は、2022年の1月27日。
まだあと数日は、その「全国学校給食週間」が続くことになります。
そこで今回もまた、前回に続いての二部構成で、「学校給食と食品衛生」について、お話していきたいと思っています。

そんなわけで、今回は後編ということで、最新の「学校給食と食品衛生」ニュースや情報を交えながら、進めていきたく思います。

挿画:給食

全国各地で発生している学校給食への異物混入

さて、そんなわけで「学校給食と食品衛生」、後編です。

実はこのところ、いつにも増して「学校給食への異物混入」がたて続きに発生していたりします。
その原因は、実は特にはないのですが、それにしてもまあ、ぼくらのようなウォッチャーからすると新年早々から、よく目にするといった状況です。

少し遡ってみてみると、昨年12月末、佐賀県佐賀市にある佐賀大学の付属小中学校で金属片が混入。
給食室の「お玉」の破片であると、報告されました。
なお、こちらの給食は敷地内の給食室で調理している、とのこと。

【学校給食に金属片混入 佐賀市の思斉館中学部】
佐賀市教育委員会は22日、小中一貫校思斉館中学部で同日提供された学校給食のパンプキンスープに金属片が混入していたと発表した。
(略)
市教委によると、金属片は給食室で使うお玉の一部で縦15ミリ、横12ミリ。

3年の生徒が食べようとした際に金属片に気づき、給食の時間が終わってから担任に報告した。スープは小学部にも提供し、約700人が食べたという。
(略)
当日の調理にお玉は使っておらず、教室に運ぶための容器「食缶」を保管していた時に金属片が入り、気づかずにスープを入れたとみられる。

しかもこの学校の給食では、2020年の6月から、クリップや毛髪、ブラシの破片など計10回もの異物混入を繰り返していることが判明されたということが、今年2022年になっての年始に報道されていました。

【米やおかずに髪の毛・クリップ… 付属小の給食、異物混入相次ぎ停止】
佐賀市の佐賀大学付属小学校(豆田幸彦校長)で、給食に異物混入が相次いでいるなどとして、同校が昨年12月6日から給食を停止し、弁当を持参してもらっていたことが分かった。
(略)
2020年6月~21年12月、計10回にわたり、米飯やおかずに髪の毛や金属製のクリップなどが相次いで混入した。食べる前に気づくなどして、健康被害は報告されていないという。

さてその後、冬休みを終えて学校が始まる時期になると、途端に学校給食の異物混入報告があちこちから。
まずは秋田市の小学校で、糸状の金属片が混入。これも同じく給食室での調理。

【小学校の給食に異物 秋田】
秋田市の小学校で17日に出された給食に糸状の金属性の物体が混入していた。けがをしたり健康被害を訴えたりする児童はいなかった。
給食に異物が混入していたのは秋田市の東小学校で、17日午後0時半ごろ、調理員が休憩室で豚肉丼の具をご飯に盛り付け食べようとしたところ、具の中に長さ約1.5センチの糸状の金属製の物体を発見した。

そしてほぼ同日、島根県出雲市の小学校でも、同じくやはり糸状の金属片の異物混入が。
こちらはステンレスたわしの一部だ、という。こちらは付近の給食センターで調理されたもののようです。

【小学校の給食、豚汁に異物混入 「ステンレスたわし」の一部か】
島根県出雲市内の小学校で出された給食の豚汁に、ステンレスたわしの一部と思われる異物が混入していたことが分かりました。

食べる前に気づいたことから児童への影響はありませんでした。
出雲市教育委員会学校給食課によりますと17日、出雲市内の小学校1校で提供された給食の豚汁の中に、長さおよそ40ミリ、太さおよそ1ミリのステンレスたわしの一部と思われる糸状の金属1個が混入していたことが分かりました。

ですが、報道によるとこの給食センターでは(食品工場では常識ではあるんですが)、上のニュースを読む限り、場内でのステンレスたわしの使用は禁止。
勿論ほつれてこのように異物要因となるので、多くの食品工場同様の使用制限をかけているのでしょう。
となると、原料由来からの混入経路が考えられるわけですが、しかしどうも金属探知機を導入しているらしく、「調理前の食材検査では金属反応を示さなかった」と主張しています。

これらの限り、この給食センターは、かなりしっかりと衛生管理が構築されているな、といった印象なのですが、それでもこうやって発生してしまうのが異物混入の怖くて難しいところです。
詳しくは次項に書くとします。

さて、さらに数日後。
三重県の学校給食で、虫の混入が連続して発生した、と報告。

【学校給食の野菜スープから『虫や幼虫』見つかる…無農薬の食材使われ葉を虫が食べた跡も 健康被害の報告なし】
(略)
津市稲葉町の県立稲葉特別支援学校で19日、「野菜スープの中に黒いものがある」と高等部3年の男子生徒が気付きました。
学校が調べると、長さ2ミリの虫が見つかったほか、別の野菜スープからは長さ4ミリの幼虫が見つかりました。

おっと、虫の混入では、昨年12月にも神奈川県相模原市の中学校で、1センチ大のカメムシの混入があったことが報じられていましたね。
こちらは市内業者によるデリバリー式給食。

【中2男子、給食を食べたら…長さ1cmのカメムシの一部?混入】
相模原市教委は10日、市立大沢中学校で同日出された給食に異物が混入していたと発表した。
相模原市役所発表によると、2年生の男子生徒が食べた給食に、長さ1センチほどのカメムシと思われる昆虫の一部が入っていたという。生徒に健康被害はないとしている。

そして、それから先日、愛知県西尾市の中学校の給食において、冷凍コロッケのなかから針金状の1センチ程度の金属片が混入しているのを発見されています。

【給食のコロッケ割ったら“金属片”…中学校の給食に異物 長さ1cmで針金の様な形 生徒が食べる前に気付く】
愛知県西尾市の中学校で21日、給食に針金のような金属片が混入しているのが見つかりました。

異物の混入があったのは西尾市立東部中学校の2年生のクラスで、生徒1人が21日の給食で出されたコロッケを食べようと半分に割ったところ、金属片が混じっているのが見つかったということです。
金属片は長さおよそ1センチで針金のような形をしています。生徒はコロッケを食べる前に金属片に気付いたため、ケガはありませんでした。

学校給食への異物混入というのは、その混入経路から、給食センターなどの調理場での調理段階で異物混入が発生した、という他に、生産者側での原材料に混入していた、あるいは資材として納入した仕入先の食品メーカーで混入した、というケースが考えられます。
これは、冷凍コロッケの中から出てきたことを考えれば、明らかにその冷凍コロッケを製造した食品メーカー側での混入となります。

こうした納入先での混入、製造メーカーでの混入というケースでは、昨年2021年の年末にこんなものがありました。
年始一発目の記事でも書きましたが、昨年12月、大阪市の小中学校の給食で、牛乳の地元製造メーカーがあやまって殺菌用の「アルカリ洗浄剤」を牛乳のなかに混入してしまった、という事件があったのです。

【業者のアルカリ洗剤の混入が原因 大阪市立小学校の牛乳「苦い」問題】
大阪市立小学校の給食で牛乳を飲んだ児童らが体調不良を訴えた問題で、市は28日、過って牛乳にアルカリ洗浄剤を混入させたとして、牛乳製造会社「いかるが乳業」(同市平野区)に食品衛生法に基づく行政指導をしたと発表した。

市生活衛生課によると、同社は今月7日、牛乳を機械で紙パックに入れる工程で、牛乳の殺菌機を洗うための洗浄剤を混入させた。従業員のミスが原因といい、洗浄剤の混ざった牛乳は約3千本流通したとみられる。
これまで市保健所が立ち入り検査などをしており、同課は始末書の提出を指示したという。

今年最初の更新記事でも書きましたが、牛乳の製造工程は、通常、加熱殺菌から充填までパイプラインで行われます。
ですから製造後は、当然ながらそのパイプ内に牛乳が残ったままとなり、これを放置してしまえば腐敗、最悪は食中毒菌の生存、増殖した牛乳によって汚染されてしまうことになります。
なのでそれらの牛乳の除去を含めた洗浄のため、アルカリ洗剤が使用されるのです。

勿論ながら、その後、このアルカリ洗剤は最後に洗浄ですすがれることになるのですが、それを怠ると、今度はパイプ内にアルカリ洗剤が残ることになります。
ですからそれを知らずに再びラインを稼働させれば、牛乳内にアルカリ洗剤が混入することになります。

細かいコトの顛末は知りませんが、ぱっと考えるに、概ねそのようなことでも起こったんじゃないですかね。

挿画:給食

学校給食での異物混入原因は何が多いのか

さて、このように年末年始にかけて早くも様々な異物混入事故が発生しているのがわかるかと思います。
このような学校給食での異物混入原因で多いものとは、一体何でしょうか。

この統計は実はどこにもないので、確認が出来ません。
ですが、上にもあるようなものはやはり多く目にするものばかりです。

学校給食への異物混入に多い異物例
  • 金属片
  • 虫・生物類
  • 樹脂・プラスチック片
  • 毛髪
  • 資材由来物

ここらへんがトップ5じゃないでしょうか。

このなかでも特徴的なのは、金属片が圧倒的に多い、ということです。
一般的な食品メーカーで、金属異物が多い、なんてところがあったら生きていけません。確実に、潰れます。

なぜなら、金属異物の混入はただちに食品衛生法の違反になりかねないからです。

食品衛生法には、「食品に異物混入をしたら違法だ」とまでは、実は書かれていません。
「健康被害を起こすような異物混入」が違法だ、と書いているのです。
前にも触れた、いわゆる食品衛生法第6条、です。
最重要、と言ってもいい条文なので、フォントを縮小せずに何度でも引用します。

第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
一 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
三 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
四 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。

このようにつまりは、「人の健康を損なうおそれのある」異物混入は、販売・製造してはいけない、という旨が書かれているわけです。

そして、調べればわかることですが、先のような虫や毛髪の異物混入で健康被害が起こるケースというのは、実は非常に少ないです。
というか、ぶっちゃけ、ないです。
例えば、飲食店などで頼んだ定食にゴキブリが混入していて、「病気になった」と言ってもそれが法的に認められるケースは、ほぼありません。
何故かというと、その健康被害との因果関係を調べることが非常に困難だからです。
というか、現実的には無理、です。

例えば食中毒にもしなったのであれば、患者の体内(糞便など)から食中毒菌が認められ、そしてそれがその店に行った複数患者で共通して認められたり、あるいは残っていた食材からも発見されたり、あるいは調理従事者などからも認められることで、やっとその健康被害の因果関係が確認されることになります。

ですが、こうした異物混入事故ではそれが出来ないので、健康被害の因果関係を立証できません。

しかしそうじゃない場合の異物混入がいくつかあります。
一つは、上にも複数あげたような、金属異物。
こういうもので口内などを切ってしまえば、異物混入による健康被害が生じた、ということになります。
だから、金属片の異物混入は先の食品衛生法第6条に抵触する可能性が非常に高くなります。

だから各社は製造段階で、金属の混入に対してはコストをかけて設備を導入し、シビアに管理しているわけです。

どうして給食には金属異物の混入が多いのか

ではどうして給食では金属の異物混入が多いのでしょうか。
これは、まずひとつとして、そのような設備へのコストがかけられない、かけたとしてもその調理工程上、またその特質上、それを行うゆとりがない、ということが考えられます。
要するに、金属探知機です。

金属探知機を導入している給食センターは、まだまだ限られています。
また仮に導入していたとしても、なかなか効果的に使えない、そういうことも多々あるでしょう。

前項で述べたことをもう一度繰り返しますが、学校給食への異物混入というのは、その混入経路から、給食センターなどの調理場での調理段階で異物混入が発生した、という他に、生産者側での原材料に混入していた、あるいは資材として納入した仕入先の食品メーカーで混入した、というケースが考えられます。

これらのうち、金属異物が最も発生しやすいのは明らかに、給食センターなどの調理場での調理段階でしょう。
調理器具の劣化、あるいは調理設備の劣化、持ち込み制限物の持ち込み。
そうしたことが原因で発生する可能性が高いからです。

給食への金属異物の混入要因
  • 調理場で金属異物要因になりやすい器具を使っている
  • 調理場で金属異物要因になりやすいもの(定数管理出来ないもの)を調理場に持ち込んでいる
  • 劣化した調理器具を使っている
  • 調理施設内の5S管理不足
  • 調理施設の設備的不具合(劣化・破損)
  • 金属探知機の取り扱い、点検上の不具合

ざっくりと考えて、ざざっとここらへんが考えられるでしょう。

さあ。
こうした状況に対し、あなたならまずどう対応を想定するでしょうか。

こういうときは、食品衛生が培ってきた知恵を使いましょう。
この場合、HACCPにおける「重要管理点」はどこにあるでしょうか。

なるほど、調理器具の劣化、あるいは調理設備の劣化、持ち込み制限物の持ち込み…。
そうしたものは「PP」、つまりは「一般的衛生管理」です。
当然ながらやらなければいけませんが、金属異物混入という危害に対し、ここは重要管理点ではない。
となると、調理がなされ終えた、調理後の給食への金属探知機検査が重要管理点となるでしょう。
一般的な食品工場では、間違いなくそう考えます。
だから製造工程の最終工程で金属探知機検査を行うのです。

しかし、一般的な多くの給食センターでは、仮に金属探知機があったとしても、それがなかなか出来ない。
確かにそれを納入した資材に対し行っているところもあるでしょうが、出来上がった給食に金属探知機を通す(通せる)場合は、その特質上、さらに限られてしまうのです。

前項で、ステンレスたわしの破片が混入してしまった事例をあげました。
これ、この話において、実に非常に示唆に富んだいい例です。

【小学校の給食、豚汁に異物混入 「ステンレスたわし」の一部か】
島根県出雲市内の小学校で出された給食の豚汁に、ステンレスたわしの一部と思われる異物が混入していたことが分かりました。
(略)
市給食センターでは、調理場でステンレスたわしは使用しておらず、調理前の食材検査では金属反応を示さなかったため、検出できなかったとしています。

また、納入業者に聞き取りを行いましたが、異物の混入経路は判明していません。

そして上のように、ここには「調理前の食材検査では金属反応を示さなかった」とある。これはどういうことか。

つまり、納入段階、給食に使うための資材については金属探知機検査を行った。
だから金属異物混入リスクは可能性としてそれほど高くはないだろう。
でも、調理後は行えなかった。
だから、資材由来の可能性は低いけれど、最も可能性が高いであろう(重要管理点である)調理中の混入に対してはわからない。結果的には、そう言っているわけです。

学校給食での食中毒

おっと、思いの外、熱が入って長くなってしまいました。
先を急ぎます。ここから先はシンプルに進めるとしましょう。

さて。
それらの一方で、学校給食での食中毒の発生、というのも時折ですが目にするニュースです。

割と記憶に新しいのが、昨2021年の7月、富山県富山市内の小中学校で、牛乳を飲んだおよそ1900人が病原性大腸菌によって集団食中毒を発生した、というものでしょう。

【牛乳の大腸菌が原因 機械故障で混入 富山の集団食中毒】
(略)
牛乳は富山市の「内田乳業」が製造し、小中学校や保育所など25施設で6月15~16日に給食やおやつとして提供された。市保健所によると、患者数は計1896人だったという。

ここでは、製造元の「内田乳業」でその発生二日前、落雷によって殺菌機の温度センサーが故障し、牛乳の加熱殺菌が十分に出来なかった、ということが報じられました。

また近いところでは、学校給食ではありませんが、昨年2021年の12月、長野県長野市の幼稚園の給食で149人がウェルシュ菌による食中毒を訴えています。

【幼稚園の給食で149人食中毒…「鶏と野菜のコンソメ炒め」が原因か】
長野市は10日、市内などの7幼稚園で今月1日に提供された給食を食べた10歳未満~60歳代の園児や職員計149人が腹痛や下痢の症状を訴え、うち7人の便から食中毒の原因となる「ウエルシュ菌」が検出されたと発表した。

この件については、ぼくも昨年末に記事として取り扱いましたね。
「ウェルシュ菌食中毒とは?」といった基礎的な内容にもなっているので、読んでおられないかたは是非どうぞ。おすすめです。

いずれにせよ、こうした、給食でのウェルシュ菌による集団食中毒は、時折ぽろぽろと起こる事件でもあります。
そして発生すれば、どん、と集団化する。そういう細菌性食中毒の典型です。

またこれも学校給食ではないのですが、昨年11月、東京都内の保育園の給食で17人の食中毒が発生。
これはメニューに出たさんまにヒスタミンがみられたため、と言われています。

【保育園でヒスタミン食中毒 園児17人発症】
東京都は、武蔵村山市の保育園でヒスタミンによる食中毒が発生し、園児17人が発症したと発表しました。全員、軽症だということです。
(略)
17人は園内で作られた給食を食べていて、保健所は、給食に含まれていたさんまの梅みそ焼きが原因としています。

挿画:給食

学校給食での問題発生時の対応はどうなっているか

さて、このように全国各地で割とな頻度で、学校給食への異物混入が報告されており、また時折程度の頻度で食中毒が発生していたりするわけなのですが。
こうした事件が発生した場合、学校側ではどのような対応がなされるように指導、通達されているのでしょうか。

前回、そして上にも書いたことですが、学校給食における基本的な衛生管理の基準は、「学校給食衛生管理基準」というものです。

挿画:学校給食衛生管理基準

この「学校給食衛生管理基準」に対する細かい内容については前回を読んでいただければ、と思います。

で、そこでも書いたことなのですが、学校給食に対して各自治体はこれに従って細かな自治体単位のマニュアルをそれぞれ作っている、といった状況です。
ですから、市町村、あるいは都道府県単位でそのマニュアルに細かな違いはあります。
つまり、学校給食で発生した食中毒や異物混入の対応についても、各自治体によって細かい対応差はあるものです。
ですが、その大元となっているのはあくまでこの「学校給食衛生管理基準」であり。そこに大きな違いはありません。

ですから基本的には、学校でそうしたことが発生した場合。
まずは校長または教頭が、教育委員会や管轄の保健所への連絡責任、状況把握から対応責任があります。

さらには、学校給食の中止判断、保健所の指導に従って児童生徒や教職員の健康状態や喫食状況把握などを行うほか、各種書類を準備・作成します。

問題発生時に学校側(校長)が準備作成すべきものの例
  • 食中毒発生状況報告
  • 学校給食日常点検票
  • 献立表(使用食品)
  • 調理作業工程表
  • 調理室平面図、作業動線図
  • 温度記録簿
  • 検収表
  • 学校給食従事者の検便検査結果
  • 検食簿
  • 学校給食従事者の個人別健康観察記録簿
  • 児童生徒の健康観察記録簿、など

さて。
教育委員会は、それらを受けて、担当者を派遣させ、患者数の発生状況などについての早急な事態把握、確認を行います。
そして先の書類などをまとめながら、患者の受け入れ医療機関を備えるとともに、原因究明、二次感染防止などをすすめながら、保健所と連携して立ち入り検査をすすめていきます。

これらは若干の差もあるでしょうが、各自治体によっておよそマニュアル、ルール化、文書化されているのが一般的でしょう。

挿画:文部科学省

まとめ

今回は、「全国学校給食週間」であるということで、前編、後編と二部にわたって「学校給食と食品衛生」についてのお話をさせて頂いています。
そしてこちら後編では、学校給食で起こった最新のニュースや情報についての解説などを行ってまいりました。

少しボリューミーになってしまいましたが、でも冒頭でも述べた通り、学校給食に限らず、割と重要なことを我ながらお話出来たのではないかと思ってます。

いずれにせよ、学校給食についての、こうした異物混入や食中毒というのは、細かくつぶさにウォッチしていると本当に全国各地で発生しているものです。
そしてそれらに加えて、「この○○市ではこの1年で何件も繰り返し発生している、どういうことだ」みたいな話が、それこそあちらこちらで目にするものとなっています。
例えば、上の佐賀県佐賀市での異物混入がそうですね。

今回の内容でもおわかりの通り、この給食への異物混入というのは「異物混入事故」そのものを考える、実に優れた題材でもあるでしょう。
ですから今後もそうした話題を、食品衛生を考える観点から、ここでは都度取り上げていこうかと思っています。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画

 

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