★公開日: 2022年1月23日
★最終更新日: 2022年1月28日
最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、今年に入って急激に増加しているノロウイルス食中毒について、最新の報告などを踏まえながらお話するとしましょう。
なんと、あの回転寿司チェーン店「銚子丸」でも、先日、ノロウイルスの集団食中毒が発生してしまったのです。
本日の時事食品ニュース |
|

【回転寿司「すし銚子丸」 客41人がノロウイルス】
回転ずしチェーン店「すし銚子丸」で、客41人がノロウイルスによる集団食中毒。
東京都によると、2021年12月29日、東京・練馬区の「すし銚子丸 大泉インター店」で飲食をした客41人が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えた。
保健所が調査したところ、客からノロウイルスが検出され、全員軽症だという。
調理を担当する従業員からもノロウイルスが検出され、保健所は、この従業員が調理した食品を介して客が感染したと断定し、店を3日間の営業停止処分にした。
改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。
(アイキャッチ画:「すし銚子丸」より)
全国でノロウイルス食中毒が増加してる?
「食品業界ニュースピックアップ」。
様々な食品衛生関連のニュースを取り上げ、専門家としての解説を加えていくこちら。
本日のお題は、ノロウイルスです。
昨年の、11月。
実はノロウイルスについてはそんな晩秋の、ちょうどシーズンが始まる頃合いに、ここで一度扱いました。
とはいえ、この頃はまだそれほどでもなかったものの、しかし。
この2022年を迎えて半月ちょいが経つわけですが、シーズン真っ只中ということもあってか、日本全国の各地からノロウイルスの食中毒の報告が多々あがってきています。
少し遡れば、昨年の12月。
年末12月27日の京都で、ノロウイルスによる集団食中毒が発生。
ここでは、クリスマスの学生寮で、最終的には52人が症状を訴えていました。

【学生寮で集団食中毒、ノロウイルス検出 52人に腹痛や吐き気】
京都市左京区の学生寮で23~24日、34人が腹痛などを訴えて搬送された騒ぎで、京都市は27日、入居している学生らの便からノロウイルスを検出したと発表した。
市は給食が原因の食中毒と断定し、寮内の調理施設について、同日から3日間の営業停止を命じた。
これ以外にも、クリスマス付近では、愛媛県の寿司屋さんで18人が、また長崎県の居酒屋で5人がノロウイルス食中毒に。

【大村の居酒屋で5人が食中毒 2日間営業停止】
長崎県県央保健所は23日、大村市水田町の居酒屋「海豚」で食事をした31~72歳の男女5人がノロウイルス食中毒になったとして、同店を同日から2日間の営業停止処分にしたと発表した。
5人は入院せず、快方に向かっているという。県内で今年確認された食中毒は9件目。
さらにはもう年越し間近となった12月30日にも、都内江戸川区の飲食店で「鰻ちらしと豚しゃぶ弁当」を食べた22人が、また一方でこれまた先程同様の長崎県ですが、そば屋さんで8人、そしてさらに神戸の飲食店で7人が、ノロウイルス食中毒を訴えていました。

【島原の飲食店 8人が食中毒 2日間営業停止】
長崎県は30日、島原市田町の飲食店「そば幸」で食事をした8人がノロウイルス食中毒になったとして、同店を同日から2日間の営業停止処分にしたと発表した。うち3人が病院を受診したが、全員快方に向かっているという。県内で今年確認された食中毒は10件目。

【神戸・三宮の飲食店で食中毒 男女7人が症状】
神戸市は28日、中央区北長狭通2の飲食店「天菜 三宮店」で22日夜に会食した男女7人が発熱や嘔吐、下痢などの症状を訴え、うち3人と店員1人からノロウイルスを検出したと発表した。
思えば、このあたりからぽつぽつと、ノロウイルス食中毒の発生報告が増えていた。
ウォッチャーとしては、そんな印象でした。
そして、年を越しての今年、年始。
まだお正月の1月2日から、早速ながら大阪府は箕面市の飲食店で、13人が年始早々ノロウイルス食中毒に。
それを皮切りに、1月8日には、兵庫県西宮市の焼肉屋で14人が、また岡山県ではお弁当を食べた17人が、さらには栃木県小山市の海鮮居酒屋で6人が、とそれぞれ各地でノロウイルス食中毒を訴えています。
【西宮の飲食店で食中毒 2日間の営業停止命令】
兵庫県西宮市は8日、同市津門宝津町の飲食店「焼肉・韓国料理 明(ミョン)」で昨年12月29~30日に会食した19~53歳の男女14人が発熱やおう吐、下痢などを訴え、うち7人からノロウイルスを検出したと発表した。
【弁当食べた17人が食中毒症状 玉野の飲食店製造】
岡山県は8日、玉野市田井の飲食店「和洋遊膳ふじわら」が製造した弁当を食べた17人が、下痢や嘔吐(おうと)などの食中毒症状を訴えたと発表した。

【ノロウイルス6人が食中毒 小山の飲食店】
県保健福祉部は8日、小山市駅南町4丁目の飲食店「海鮮居酒屋どんさん亭小山店」が提供した食品が原因で、ノロウイルスによる食中毒が発生したと発表した。
県は同日、食品衛生法に基づき、衛生的環境が確保されるまで同店の営業を禁止とした。
この1月8日で、なんと立て続けに3件。
年の始めから順調(?)な発生っぷりですが、さらにその勢いは増していきます。
続いて1月11日、石川県の旅館でお弁当を食べた8人が、また1月15日には、大阪の飲食店でバイキングを食べた19人が、やはりノロウイルス食中毒に。
このあたりから、目に見えるように増えていきます。
「銚子丸」でもノロウイルスの集団食中毒が発生
そして、なんと。
今年に入っての1月13日。
東京都練馬区、回転寿司チェーン店で知られる「すし銚子丸」で、41人のノロウイルスによる集団食中毒の発生が報じられました。

【回転寿司「すし銚子丸」 客41人がノロウイルス】
回転ずしチェーン店「すし銚子丸」で、客41人がノロウイルスによる集団食中毒。
東京都によると、2021年12月29日、東京・練馬区の「すし銚子丸 大泉インター店」で飲食をした客41人が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えた。
保健所が調査したところ、客からノロウイルスが検出され、全員軽症だという。
調理を担当する従業員からもノロウイルスが検出され、保健所は、この従業員が調理した食品を介して客が感染したと断定し、店を3日間の営業停止処分にした。
回転寿司チェーン店でのノロウイルス集団食中毒というと、昨年の8月に「スシロー」で発生した一件を思い出します。
が、こちらは24人。今回はさらにその規模を超えています。
【食中毒事故に関するお詫びとお知らせ】
この度、当社が運営する「スシロー小松島店」(徳島県小松島市)におきまして、ノロウイルスを原因とする食中毒事故が発生いたしました。
(略)
1.食中毒事故の内容について
当該店舗にて2021年8月20日から22日にかけてお食事をされた8グループ24名のお客様から下痢・おう吐・発熱等の症状が確認されました。
所轄保健所の調査の結果、お客様11名、従業員6名の便からノロウイルスが検出されたこと、症状および潜伏期間がノロウイルスによるものと一致すること、お客様に共通する食事が当該店舗で調理、提供された食事に限られること、他に共通の感染経路がないことから、当該店舗にて調理、提供された食事を原因とする食中毒であるとの判断をいただきました。
一方、これに対し、「すし銚子丸」側からも正式なお詫びをこのように発表。
この一件からですね、なんだか最近ノロウイルスの行政報告がやたらめったら多いぞ、とぼくがはっきりと体感していったのは。
しかもその後も、ノロウイルス食中毒の発生は続いています。
これより数日後の1月17日、埼玉県鴻巣市でお弁当屋さんのお弁当を食べた24人がノロウイルス食中毒に。
【24人が食中毒…弁当のサラダ、ハンバーグ、漬物、煮物を食べ ノロウイルス検出、埼玉・鴻巣の弁当店処分】
県は17日、鴻巣市の弁当店「壱番館」で調理された弁当を食べた20~50代男女24人にノロウイルスによる食中毒が発生したと発表した。
そして、昨日1月22日にもまた、愛知県岡崎市の飲食店のお弁当で、6人のノロウイルス食中毒が、発生。
【飲食店の弁当食べた24人が下痢や嘔吐…調理担当者含め6人から『ノロウイルス』検出 店を営業禁止処分に】
(略)
保健所によりますと、1月18日にこの店が調理した弁当を食べた24人が下痢や嘔吐、腹痛など食中毒の症状を訴え、そのうち4人からノロウイルスが検出されたということです。
しかも、昨日の長野県潮崎市では、なんと。
市内の仕出し弁当を食べた103人もの方々が食中毒になるという、大型のノロウイルスの集団食中毒が発生してしまいました。
【ノロウイルスの食中毒103人 塩尻市の弁当店で】
塩尻市内の仕出し弁当店が提供した弁当を食べた103人が、下痢やおう吐の症状を訴え、県はノロウイルスによる食中毒と断定しました。
とまあ、このように昨年末から新年、そしてこの1月にかけて目下、急激に日本全国の各地でノロウイルス食中毒の発生が増えているのです

食品衛生法とノロウイルス食中毒
以上、世ではオミクロン株の大流行と感染がひっきりなしに報じられているなか、実はこのように日本各地のあちこちで現在、ノロウイルス食中毒が発生しています。
さて、今回はそうした報告情報のみならず、食品衛生法とノロウイルス食中毒の関係について、押さえておくことにしましょう。
で、その話をする前に。
以前にも(先のリンクでも)お話したことでもあるのですが、ここで一つ先に強調しておきたいこと。それは、上にあげてきたような事例は皆、れっきとした「食中毒」だということです。
つまり、ノロウイルスに感染した人によって食品が汚染され、その食品を摂取した人が接触感染する、という典型的な「食中毒としてのノロウイルス感染」なのです。
こうしたノロウイルス食中毒は当然ながらぼくら食品衛生の専門分野でありますが、それ以外にもノロウイルス感染には吐瀉物や糞便などからの「飛沫感染」、あるいは残存したウイルスが空気中に漂って吸入し感染する「空気感染」による感染などが考えられます。
しかしこちらは、食品を介しての感染ではないので、食中毒ではありません。
例えば、先日報じられたこちら。
岩手県の保育所で、児童らのノロウイルス集団感染が確認されました。
(NHK:リンク切れ)
ですがこれは、食中毒では当然ながら、ありません。
一方、「すし銚子丸」などの上にあげたような事例は、あくまで「食中毒としてのノロウイルス感染」。
この場合、当然ながら食品衛生法違反対象となされます。
ぼくら食品衛生の世界における、最も重要な法律というものがあります。
それが「食品衛生法第6条」。
ここでも繰り返し挙げている、ぼくらプロならばソラで暗記できないといけないくらいに、重要な法律の条文です。
そこに、こうある。
重要なので、フォントを縮小せずに引用します。
第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
一 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
二 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
三 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
四 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
つまり、飲食店の料理や食品メーカーの製品によるノロウイルスの感染は、この赤字、すなわち「病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがある」食品は、販売・製造などしてはいけないよ、という食品衛生法に反している、というわけです。
ということは、ノロウイルス食中毒を起こした事業体は、この食品衛生法第6条違反だ、ということになります。
するとどうなるか。
法律を違反したのですから、行政による不利益処分対象となります。
これが、いわゆる「食衛法55条適用」というものです。
食品衛生法、第54条、55条にはこうあります。
第五十四条 都道府県は、公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業を除く。)であつて、政令で定めるものの施設につき、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。
第五十五条
①前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
55条、飲食店などの営業者は、都道府県知事の許可が必要ですよ、と。
逆に言うなら都道府県知事が許可しない、となると営業できませんよ、と。
そして食品衛生法という法律を違反しているのですから、「都道府県知事が許可しない」ということになります。
かくして、この食衛法55条に基づいて、ノロウイルス食中毒を起こした飲食店などは、まあノロウイルスのみならず他の食中毒も同様ですが、しばらくの間、管轄の保健所によって行政処分が適用され、営業停止処分とされてしまうのです。
今回のこの「すし銚子丸」も、ほら、そうですね。
まとめ
今回は、ノロウイルス食中毒について、最新の報告情報と、それに加えて食品衛生法との関係性について、お話させていただきました。
本日の時事食品ニュース |
|

【回転寿司「すし銚子丸」 客41人がノロウイルス】
回転ずしチェーン店「すし銚子丸」で、客41人がノロウイルスによる集団食中毒。
東京都によると、2021年12月29日、東京・練馬区の「すし銚子丸 大泉インター店」で飲食をした客41人が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えた。
保健所が調査したところ、客からノロウイルスが検出され、全員軽症だという。
調理を担当する従業員からもノロウイルスが検出され、保健所は、この従業員が調理した食品を介して客が感染したと断定し、店を3日間の営業停止処分にした。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識、またその世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
