昨日、11月14日が「いい樹脂の日」だったことを皆さん、ご存知でしたか?
そこで前回を継いで、今回もまた樹脂、つまりはプラスチックの異物混入についてお話していきましょう。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:合成樹脂

 

「合成樹脂」とは何か

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

さあ、そんなわけで続き。
11月14日「いい樹脂の日」にする、合成樹脂・プラスチックと樹脂の異物混入のお話、後編です。

参照派:11月14日は「いい樹脂の日」

…で。
ここまで話をしておいて、ナンなのですが、そもそも「樹脂」ってなんでしょうか。
考えてみたら、それさえもはっきりとさせないまま、色々なものをひっくるめて「樹脂」として話してきてしまいました。

それに、「合成樹脂・プラスチック」なんて書いていますが、それらは違うのか同じなのか、それすらも解説せぬまま、ここまで書いてきてしまっていました。
そんなわけで少しばかり、この「樹脂」というものについて解説しておきます。

あ、ぼくはあくまで食品衛生の専門家なので、かるーく触れるだけにしますね。
ここらへんの専門的なお話については、他で調べてみてください。

というわけで始めますが。
まずここで「いい樹脂の日」とされている「樹脂」というのは、本来的にはプラスチックのことではなく、松ヤニやうるしのような「木のヤニ」のことを意味します。
しかしこれらは、一般的には「天然樹脂」と呼ばれています。

ではここで「樹脂」と呼ばれているものは何なのか。
それが、その天然樹脂を真似て、石油を原料として人工的に量産されたもの。つまりは「合成樹脂」です。

プラスチックも合成樹脂も、基本的には同じものです。
つまり、人工的に合成された樹脂のことをプラスチック、あるいは合成樹脂といいます。
(以下から総じて「合成樹脂」と呼びます)

合成樹脂には、加熱によって柔らかくなる「熱可塑性樹脂」と、加熱により硬さが増す「熱硬化性樹脂」があります。
しかし我々の生活のなかで多く日常的に使われるのは、前者である「熱可塑性樹脂」のほうです。
一般的なプラスチックを熱するとぐにょぐにょになりますよね。で、冷やすと固まる。これが「熱可塑性樹脂」です。

で、その「熱可塑性樹脂」において最も普段使っているのが、「汎用プラスチック(汎用樹脂)」というものです。
まあ、一般的に「プラスチック」「合成樹脂」と言ったら、その多くはこのことだと思っていいでしょう。
とにかく安くて使い勝手がいい、というのがその特徴です。
文具やバス・トイレ用品、食器など、我々の生活はこうしたプラスチック、合成樹脂を材料としたものにあふれています。

更にはレジ袋などで使われる、いわゆる「ポリ袋」。
これも「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」といった「汎用プラスチック」に分類される合成樹脂を材質としたものです。

作成画:合成樹脂の区分
合成樹脂の区分

このように合成樹脂は、様々な形態、用途として広く使われています。
そしてそれは、当然ながら食品工場や厨房などでも同様です。
その結果、合成樹脂の異物混入というものが、時として発生しうるのです。

挿画:合成樹脂

多岐に及ぶ合成樹脂異物

これらの話からもわかるように、合成樹脂というのはとにかく種類が多い。
だから一言で「合成樹脂・プラスチック」といっても、ビニールからシリコン、エポキシのタグ位までメチャクチャ用途の幅が広い。

そもそも、合成樹脂というのは、金属やガラスなどに比べ、軽量で加工しやすく、また水や薬品にも強く、大量生産が安くできる、というのがそのメリットです。
また種類も多いため、様々な用途に適したものを作りやすい。
それが合成樹脂というものです。

合成樹脂・プラスチックの特徴
  • 安価で大量に生産しやすい
  • 軽量である
  • 薬品に比較的強い
  • 耐久性が高く、腐敗しない

こうした特徴の結果、ふと周囲を見渡してみれば我々の生きる現代生活はありとあらゆる合成樹脂・プラスチックに囲まれている状況です。

例えば今、ぼくはパソコンに向かってこうやってこの記事を書いているわけですが、実際に今こうやって触ってカタカタと打ち込んでいるキーボードからそのケーブル、マウス、モニターの枠、スピーカー、横にあるスマホのカバーやフィルムにペン、果ては座っている椅子のパーツや飲んでいるお茶のペットボトルに、ぼくが今着ているシャツのボタンなどなどなどなど、考えてみると合成樹脂・プラスチックに完全に囲まれまくっており、それなしの生活というものは全くもって送れません。

工場や厨房だって勿論、同じこと。
当然そうなれば、時として異物要因となりやすくなります。
そこで、様々な合成樹脂・プラスチックの異物が世に出ることになるのです。

挿画:驚く

どんな合成樹脂の異物混入があるのか

では、どのような合成樹脂の異物混入があるのでしょうか。
その代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

合成樹脂・プラスチック異物の代表例
  • 包装資材片
  • 手袋片
  • テープ類
  • 清掃用具片、ブラシ類の脱毛
  • 調理器具の破片
  • 容器・コンテナの破片
  • 文具の破片、パーツ類
  • 施設の破損部

うーん、例を挙げていったらキリがないですね。
代表的なところを解説していきます。

挿画:解説

包装資材片

まず、一番多いのは資材の包装袋を切って開封したときに生じる、切り口の破片です。
前回最初にお話した事例も、これでしたね。
このケースは本当に多いんです。

これと、次に挙げる使い捨て手袋の破片というのが、合成樹脂異物の2トップです。

食品工場や厨房では、日々、様々な多くの資材を扱います。
そうした資材は多くがポリエチレンなどで出来た合成樹脂製の袋に詰められており、それを切って開封することで使用します。
まあ、ご家庭でもそうだと思いますけど。
でそうした際、チョッキンと切った切り口を食材内に落下させてしまうことがあります。
これが合成樹脂で最も多い異物混入例です。

一般の食品工場では、開封カッターを使って開ける際、完全に切らずにすることで切り落としを抑止したりなど、様々な工夫をしてその混入防止につとめています。
が、なかなかこれという決定打、根本的解決策がないのも、この袋の切り口の異物混入問題の難しいところです。

手袋片

これも次いで多い事例ですね。

食品工場や厨房内では皆、使い捨ての手袋をつけて作業を行います。
人間の手には多くの微生物が付着しており、場合によっては黄色ブドウ球菌など、食中毒すら起こしかねない菌を持っている場合だって少なくありません。
こうしたものを製品に付着させないため、作業時には手袋をするのです。

それだけではありません。
作業中にはどうしたって、様々なものが手に触れることになります。
何かを持つ。触る。握る。掴む。つまむ。
そうしたときに、それらが汚染されていれば、その手を介してこれまた製品を汚染することになります。
それを防ぐために、何度か手袋を交換することになります。
結果、一日に何度か手袋を交換することになるため、使い捨ての合成樹脂製の手袋を多用するのです。

が、しかしこれが何か作業中にひっかけてしまうこともないわけではありません。
勿論、手袋メーカーも開発に力を入れているため、そうそう敗れることのない耐久性の強い手袋が最近は出回っています。
多少引っ張ったり、力を加えたくらいでは破れないものが大半です。
ですが、それでもやはり鋭利なものに引っ掛けてしまえば、敗れることだってある。
その結果、手袋が破れてしまい、その破片が混入する、といったことが起こる場合があります。

ところで全く関係のない話ですが、去年の5月くらいかな、一時期コロナウイルスの影響で、マスクと同様にこの手袋が市場に出回らず、不足したことがあります。
ちょっと油断していたので、ぼくも少しだけ被害にあってしまいました。

挿画:手袋

テープ類

場内でのセロハンテープなどの使用を禁止、使用制限している食品工場は多いことでしょう。
貼ったこと、ものへの定数管理ができず、「なくなってもわからない」状況となってしまうからです。

異物混入の発見が遅れるのは、異物が「なくなってもわからない」からです。
工場内、厨房内には様々なものがあります。
これらが「なくなったらすぐにわかる」ようにする。定数定位置管理というのは、そのための工夫です。
そのため、工場内の補修や書類の掲示、固定にテープ類を使用することは、原則的にあまり進められるものではありません。

ですがそれでも作業によってはやはり使わざるをえない、などという場合もあるかもしれません。
こういう場合、剥離したテープが食品内に混入する危険性が生じることをしっかりと把握することが必要です。
補修で使うのであれば、あくまで一時的な仮補修のみとする。
なぜなら、やがて経年劣化し、剥離してしまうことも考えられるからです。

ブラシの脱毛

清掃用具や調理器具として、ブラシを使うときがあります。
この場合、ブラシからの脱毛が食品内に混ざってしまい、異物となることがあります。

こうならないよう、食品工場ではブラシの毛の色を製品の色と全く異ならせ、脱毛がわかりやすくしているところもあります。

文具類の破片、パーツなど

キャップ式のボールペンなどを場内で使っていると、そのキャップがなくなってもわからなかったりします。
そんな場合、それらも異物要因となることがあります。

ちなみにこうしたことが発生しないよう、工場内ではキャップ式ではなくノック式のペン類をよく使用されます。
マジックなどでも今や工場内での使用はノック式が常識となってきています。

挿画:ノックペン

まとめ

今回は前編、後編と二部にわたって、11月14日「いい樹脂の日」にあわせて、合成樹脂・プラスチックの異物混入について、お話をさせていただきました。
そしてこちら後編では、「合成樹脂」とは何かという解説、そして合成樹脂の異物の実例について、解説させていただきました。

主な合成樹脂の異物混入には、このようなものがみられます。

合成樹脂・プラスチック異物の代表例
  • 包装資材片
  • 手袋片
  • テープ類
  • 清掃用具片、ブラシ類の脱毛
  • 調理器具の破片
  • 容器・コンテナの破片
  • 文具の破片、パーツ類
  • 施設の破損部

このなかでもとくに上2つ、「包装資材片」と「手袋片」がしばしば問題になりやすいので、覚えておくといいでしょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画