★公開日: 2021年11月14日
★最終更新日: 2021年11月15日

本日、11月14日が「いい樹脂の日」だったことを皆さん、ご存知でしたか?
そこで今回は樹脂、つまりはプラスチックの異物混入についてお話していきましょう。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:研究者

 

11月14日は「いい樹脂の日」

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

皆さん、本日11月14日は何の日だからご存知ですか?
実は11月14日は、「いい樹脂の日」なのです。

何でも制定は「中部日本プラスチック製品工業会」とのこと。
プラスチック、つまり樹脂。というわけで、「11/14」(イイジュシ:いい樹脂)の語呂合わせから決められた、というようです。

参照派:11月14日は「いい樹脂の日」

…で、それがどうした、と一瞬なるかもしれませんが、いやでもちょっと待ってください。
せっかくのいい機会です。
今回はプラスチック・合成樹脂の異物混入について、お話するとしましょう。

というのも実は樹脂の異物混入って、結構あるんですよ。
何せ混入異物の検査分析の依頼の中でも、この合成樹脂に対する依頼というのは、指折りなレベルでかなーり多いほうなのです。

挿画:分析結果

合成樹脂の異物混入事故例

正直なことを言ってしまうと、今回これを書こうと思ったのは、次のような異物混入のニュースを目にしたことがきっかけです。
一昨日の11月12日、滋賀県愛荘町の幼稚園で、園児が食べていたクッキーにビニール片が混入していたことが、小さいながらも報じられていました。

滋賀県愛荘町は12日、町立つくし保育園(同町川原)が園児に提供したカボチャクッキーにビニール片(長さ約2センチ、幅0・2センチ)が混入していたと発表した。
健康被害は確認されていないという。

このビニール片は、その形状などから「カボチャのビニール袋の切れ端」だとされています。
恐らくは製造時、何らかの際に包材の切れ端が誤って練り込まれてしまったのでしょう。
後にも触れますが、樹脂混入においては、まあよくある話です。

上の報道によると、これは形状などから「カボチャのビニール袋の切れ端」だとされています。
カボチャクッキーですから、その原材料のカボチャを入れていた袋でしょうか。

実は、こうした包装資材、外装の破片の混入というのは、割とある話です。
ハサミやカッターでジョキンと切ると、その際にビニール片が生じるときがあります。それが混入してしまう。
ニュースには全く書かれていませんが、恐らくは「ポリエチレン」、あるいは「ポリプロピレン」
恐らくは、ここらへんの合成樹脂が異物分析として上がってきていることでしょう。
健康被害がない、というのは、柔らかいものだから口内を傷つけるといったことがなかった、という意味でしょう。

混入異物の区分法はいくつかあります。
以前にもその話をしたことはありますね。

ですが、ぼくらの食品衛生の世界では、このような柔らかな混入異物のことを、「軟質異物」と呼ぶことがあります。
例えば、毛髪混入や紙片、繊維などの混入。
虫、ゴキブリの混入なども、それに入ります。
そして、今回のケースのような包装資材片やビニール片の混入も同様に「軟質異物」の扱いとなります。

実を言うと、このような「軟質異物」である合成樹脂の異物混入原因のトップは、この「包装資材」「手袋」が双璧です。
お客様からビニール片のようなものが混入してしまった、と異物事故の相談がくると、まあそのどちらかが原因であるケースが非常に多いです。
ですからその場合、場内で使われているそれらを一緒に比較分析すれば、何が原因だかがわかります。材質が一致した、と分析結果が出るからです。

挿画:手袋

同じ合成樹脂の異物混入でも扱いが違う?

さて。
実はこの滋賀県愛荘町では、なんと先月10月にも、異物混入事故が発生しています。
こちらは、小学校の給食のカレー内にプラスチック片が混入した、とのこと。

滋賀県愛荘町は12日、秦荘西小(同町島川)に提供した給食のチキンカレーにプラスチック片(長さ12ミリ、幅4ミリ、厚さ2ミリ)が混入していたと発表した。
5年生の児童が一度は口に入れたが、直後にはき出し、けがはなかった。

小さな…と言っていいかわかりませんが、町内で立て続けに異物混入事故。
こちらは給食へのプラスチック片だということですが、いずれもこれらはともに「合成樹脂」の異物混入ということになります。

ただ、こちらは同じ合成樹脂でも、包装資材などの柔らかなビニール片などではなさそうだ。
なんでも破損した泡立て器のプラスチック片であるという。
というとこれは、たとえ同じ合成樹脂の異物混入でも扱いや意味合いが違ってきかねません。

どうやらこっちは、柔らかな「軟質異物」ではなさそうだ。
ということは、実はこっちは硬いものの異物混入、つまりは「硬質異物」の扱いとなりかねません。
となると、金属片やガラス片などの異物混入と同様に分類されることになります。
(注意:場合によりますし、明確な区分がそこにあるわけではありません)

つまり。
同じ合成樹脂の異物混入なんだけど、前者は「軟質異物」の混入事故であり、後者は「硬質異物」の混入事故となります。

混入異物の区分例
  • 軟質異物:虫、毛髪、紙片、ビニール片、繊維、植物編、カビ、ゴムなど
  • 硬質異物:金属、ガラス片、木片、骨片、プラスチック片など

そしてここで大きく双方の扱いが変わります。
というのも、異物混入というのはケースバイケースではあるものの、一般的に「軟質異物」よりも「硬質異物」のほうが、重特性の高い異物混入と扱われることになるからです。
ではそれはなぜでしょうか。

挿画:硬質異物と軟質異物

軟質・硬質で大きく道が分かれる合成樹脂混入

同じ、合成樹脂の異物なのに、双方の扱いは実は異なってくる。
これはどうしてでしょうか。
ズバリそれは、「硬質異物」の場合「やもすれば健康被害へと直結しかねない」からです。
(注意:あくまで状況によります)

どういうことか。

確かにこれらはともに、合成樹脂ということで括られる異物混入事故には変わりない。
でも、ここに大きな分かれ道があります。
それを食べて、口内を負傷した、口の中を切った。
あるいは、その可能性が十分に考えられるとなった場合に、これは「食品衛生法」の違法案件になるからです。

食品衛生の法的根拠は、「食品衛生法」です。
そしてこの食品衛生法では、「企業は不衛生な食品を作ってはいかんよ」と書かれています。
それが「食品衛生法第6条」です。

〔不衛生な食品又は添加物の販売等の禁止〕

第6条  次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

一  腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。但し、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。

二  有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。但し、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

三  病原微生物により汚染され、又はその疑があり、人の健康を損なうおそれがあるもの。

四  不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。

挿画:厚生労働省

はい、これがいわゆる「食衛法第6条」、食品衛生をしないといけない法的理由です。

さて、ここには、「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」は販売・製造してはいかんよ、とあります。
これが重要なのです。

つまり、「異物混入」自体が食品衛生法についての違法なのではありません
「異物混入によって、健康被害が発生する恐れがあるものを製造販売すること」が、食品衛生法上での違法となるのです。

逆に言うなら、それを食べても健康被害の可能性が非常に低い場合、必ずしも違法ではなくなります。
そして「軟質異物」は、虫も含めて、実は「健康被害を起こすおそれ」はかなり低いものです。
気持ち悪いか云々は別として、「軟質異物」で健康被害に直結するケースは、極めて稀ですし、疫学上の臨床データ自体が多くの場合存在せず、その因果関係を立証するのはかなり困難でしょう。

しかし「硬質異物」なら話は別です。
鋭利なプラスチック片で口の中を切った、怪我をした、歯が欠けた。
こうした健康被害が起きた場合、あるいは起きそうな場合には、これは「食品衛生法」の違法対象に、場合によってはなり得るし、そうなるとPL法対象、つまりは賠償責任にもなりかねない。
これらの理由によって、同じプラスチック・合成樹脂の異物混入だとしても扱いが大きく変わってくる、というわけです。

しかもこうなると、食品衛生法を破っているわけですから、時と場合によっては製品回収(リコール)などといったことも企業としては考えざるをえなくなります。

まあ、プラスチック片の混入程度で製品回収にまで動くかと言われたら、しない企業が多いんじゃないかな。くどいようですが、これに関してはケースバイケースでしょう。
というのも、あとで事例をあげてお話しますが、一言で合成樹脂異物といっても様々なのです。
同じプラ片でも、ちょっとした小さなプラ片程度である場合と、破損した鋭利なコンテナ片や番重片などが混入するのだけでも、話が全く変わってきます。
ましてや合成樹脂の混入は、多岐に及ぶので、一概に「こうだ」とはくくりきらないのが現実です。

挿画:ビジネスのイメージ

まとめ

今回は前編、後編と二部にわたって、11月14日「いい樹脂の日」にあわせて、合成樹脂・プラスチックの異物混入について、お話をさせて頂いています。
そしてこちら前編では、合成樹脂の異物混入事故を例に、合成樹脂の異物混入の解説をさせていただきました。

合成樹脂・プラスチックの混入異物というのは多岐に及ぶのですが、大きくそれらは二つに別れます。
それがビニール片や包装資材片、手袋片のような「軟質異物」であるのか、硬いプラスチックの破片のような「硬質異物」です。

合成樹脂の混入異物
  • 軟質異物:包装資材片、手袋片、フィルム片など
  • 硬質異物:プラスチックの破片など

ただし。
断っておくと、これらにおける大きさや形状、材質などにおける具体的な区分基準などは全くありません。
基準となるのは、あくまで曖昧な「健康被害になりうるかどうか」という線引だけです。

よってこれらの区分は、あくまで「異物混入対策上における便宜上の区分」でしかなく、法的基準でも学術上の区分でも全くないですし、本当にケースバイケースです。

さらには硬質異物だから皆すべて健康被害に直結するか、といえばそれもまた微妙だったりしますし、軟質異物だって深刻な場合だって多分にあるでしょう。
というかそもそも異物混入が発生している段階で、大きな問題なのですから。

さあ、次回の後編ではこれらを踏まえて、では合成樹脂の異物とはどのようなものがあるのか、などより深く迫っていくとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:ビジネスパーソン

 

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