皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

さて、少し間が飽きましたが、前回の【23】に戻りますよ。
そこでは「目標」を設定しよう、というお話をいたしましたね。
そしてその「目標」というのは、最終的な目標を達成しうる「上位目標」と、そこに至るための「達成目標」のふたつを考える必要がある、というお話をしました。

ですが、ちょっと待ってください。
その「目標」というのは、どの場所でのお話なのでしょうか。
それをしっかり踏まえていないと、目標自体が建てられなくなります。
そこで今回は、その「どこで」という「清浄度区分」、「ゾーニング」についてのお話をしていきたいと思います。

それでは、早速はじめましょう。

今日のポイント:食品工場での防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域:汚れた状況でいるエリア(事務所、前室、機械室など)
  • 準清浄区域:製造にダイレクトに関わらないエリア(通路、倉庫、洗浄室など) ※なくても可
  • 清浄区域:製造エリア
    (店舗では、厨房や調理エリアが「清浄区域」。それ以外は「汚染区域」)

 

場内をゾーニングする理由

えーと。
のっけからナンなんですが、今回、中級~上級者的な内容となってしまっており、我ながら書いていて少しばかり専門性の高い話になってしまったかなー、と反省しています。

なので。
途中なんだか話の内容が判らなくなってしまったら、無理をしないで、「誰でも出来る防虫管理のゾーニング」の項に飛んでしまってください。
大丈夫、色々とやってみて色々と知識がついてきて、で後になって「ああ、そういう意味か」とわかればそれで十分です。
まず手掛けなければ、何も始まりません。
なので、これからの話がなくてもゾーニング出来るように、ポイントをまとめておきますので、遠慮なくそっちに飛んでしまってください。

…というエクスキューズとそのための処方箋を示したことで、お話を始めていきます。
はい。

挿画

さて。
冒頭にも書いた通り、前回は防虫管理計画のプランニングのうち、「目標」の設定についてお話させていただきました。

目標は、大きく2つあります。
それは、目的のための最終的な「上位目標」と、そこに向かって短期的に達成することでそこに近付くための「達成目標」です。

「目標」を分類する
  • 上位目標
    目的を果たすために必要な目標
  • 達成目標
    上位目標を目指すために、現段階で必要な目標(下位目標)
挿画:上位目標と達成目標

そこで長期・短期の各目標をそれぞれ立てていくわけですが、しかし。
その短期的な「達成目標」を設定する前に、知っておくべき知識が実はあるのです。
その最初の一つが、「どのエリア」を対象にその目標を設定するか、ということです。

つまり、防虫管理上においてある目標を設定するとき、その「目標」というのは工場や店舗の「どのエリア」において目指すべきものなのか、という対象領域をはっきりさせる、ということです。

…と、ここまではなんとなくわかる話かと思います。
なるほど、あるエリアを設定し、そこでの防虫管理上の「達成目標」を立てるのか。
そんな理解で、オッケーです。

つまり、防虫管理においては、ある重要な管理エリアを設定し、そこでの「目標」を設置してそれを達成できているかどうか。
その是非をもって、その工場や厨房の清浄度が良好か否かを評価していく、というわけです。
だからこそ、まずは評価すべき重要エリアとそうでないエリアを区分(ゾーニング)しましょう、ということになります。
どこまでがクリーンで、どこまでをダーティなゾーンとするのか。
それをゾーニングしたうえで初めて、クリーンであることの根拠となる目標値=「達成目標」が俎上に上がってくるのです。

ぼくたちプロでも、ある工場や厨房の防虫管理の設計にあたるとき、真っ先に尋ねるのがこの「どこが重要なエリアなのか」ということです。
これなしでは、そもそもからして防虫管理の設計が出来ません。
だから、まず何を製造、調理しているのか。それを聞いてから、次はそれをするための各種(モノ・ヒト)動線を確認し、それを行いながら「どこが重要なエリアで、どこを重点的に守らなければいけないのか」を確かめていくのがセオリーです。

このことはHACCPの考え方と全く同じです。
虫というリスク、危害要因に対して、どのエリアを重点的に守らなければ異物混入してしまうのか。
つまり、虫に対する「重要管理点(CCP)」はどの工程の、どのエリアなのか。
それを決めてそこを重点的に守り、そのエリアにおけるクリティカルリミットである「達成目標」を設定し、虫の生息数がそれ以下に維持されているかをモニタリングする。
そう、基本的にはまったくもってHACCPと同様の考え方なのです。

そのため、「重要管理点(CCP)」であるエリアの選定が重要になるのです。

挿画:CCP?

HACCPにおけるゾーニング(清浄度区分)の考え方

ですから基本的な清浄度区分は、HACCPなどで一般的に言われているゾーニング手法に沿うかたちで、まずは構わないと思います。

ではその場合、HACCPではどのように行っているのか。
まず工場や店舗内をとくに優先的に管理すべきエリアと、そうではない一般的なエリアとに分けることになります。
そう、いわゆる外部である「一般区域」と、それ以外の内部「作業区域」です。

で、その上で、内部の「作業区域」に対して、より細かく清浄度区分していく。
外部に接触する「汚染作業区域」
製造に携わる「準清潔作業区域」
汚染を持ち込まない「清潔作業区域」
という三段階にです。

作成画:HACCPでのゾーニングの考え方
HACCPでのゾーニングの考え方
衛生管理上のゾーニング例(HACCPでの清浄度区分)
  • 汚染作業区域
    →前室、資材保管庫、製品保管庫、入荷室、出荷室、荷捌き室、通路、入退場室、
    (目安:落下細菌数100個以下)
  • 準清潔作業区域
    →常温倉庫、下処理室、成形室、加熱調理室、調合室、検査室、
    (目安:落下細菌数50個以下)
  • 清潔作業区域
    →充填室、冷却室、包装室、
    (目安:落下細菌数30個以下、落下真菌数10個以下)

これがHACCPでいうところの衛生管理における一般的なゾーニングとされています。
今後HACCPを構築していくにあたり、この手法を基本的に進めていくといいでしょう。
(中小規模の工場では、汚染作業区域と清潔作業区域の2段階でも構いません)

作成画:外側から内側に向かうゾーニングの考え方
外側から内側に清浄度が向かうゾーニングの考え方

具体的にはこのように、外側から内側に向かうにともない清浄度が高まっていきます。
これは基本的に防虫管理においても、そう大きくは変わりません。
なので「HACCP的なゾーニング」と重なるところも意外と多い。

そう、「意外と多い」と言ったのは、「防虫管理におけるゾーニングの考え方」は「HACCP的なゾーニング」と、「全く完全に重なるわけではない」からです。
どういういことか。

つまり、「防虫管理におけるゾーニングの考え方」というのは、HACCPでいうところのこれとは、ちょっとだけ変わっている。
そこだけは踏まえておく必要があります。

もう少しだけ加えるならば。
HACCP上でのゾーニングは、あくまで「製造工程上」でのゾーニングとなります。
だから、「清潔作業区域」となっています。

ですが、防虫管理においては「作業」は関係がありません。
つまり「作業」においてどうかというのではなく、その「清浄度」について、つまりは昆虫生息の汚染リスクに対する「清浄度」の話をしているのだから、「清潔作業区域」という呼称はちょっとヘンです。

そこで用いられるのが、「GMP」(適正製造規範)の考え方。
つまり防虫管理においては、「GMP」上に則って、エリアの区分を清浄度別に、このように考えるのが一般的です。

防虫管理のゾーニング区分
  • 汚染区域
  • 準清浄区域
  • 清浄区域
挿画:三段階の清浄度

防虫管理における清浄区域とは

んーっ…。
小難しくて、ちょっと段々何言ってるかわかんなくなってきたぞ…?

そんな方もおられるかもしれませんね。
そういうかたは、この項を読み飛ばしてもう、次の「誰でも出来る防虫管理のゾーニング」の項に向かってしまってください。
とりあえずHACCPなりのエリア区分というのがあって、防虫管理とはちょっと微妙に違っていて、で防虫管理においてはこういうふうにやりますよ、てのを次の項で学んでいただければ結構です。

というわけで、話をちょっとコアな方向に戻しますね。
さて、
上のゾーニング方法は、HACCP、つまりは「微生物管理」を重点において考えた区分方法です。

というのも微生物管理においては、その特質上、交差汚染をいかに防ぐか、ということが重要になります。
よって、「準清潔作業区域」でリスクを軽減させた製品は、「清潔作業区域」においていかに汚染させないか、拡散させないか、といったことに比重が置かれるのが当然です。

しかし、ここで私たちが考えているのは「防虫管理」です。
「微生物管理」には微生物特有の、そして「防虫管理」には虫特有の性質がありますし、それを踏まえた対応が求められるはずです。

一言で言えば、「微生物は見えないが、虫は見える危害だ」ということです。
このことは割とごっちゃにされがちなので、別途詳しく記事を書くことにします。
ですがここでそのポイントだけを言ってしまえば、微生物と違って虫のリスクは数値化できない、ということです。

ちょっとわかりづらいでしょうか。
微生物のリスク対策であれば、例えば加熱温度を何分でこのくらいの温度で…と数値化することが可能です。
ですが、虫のリスクというのは数値化が厳密には出来ません。
このエリアにこのくらいの生息数に抑えて…ということは言えるでしょうが、しかしそれは絶対的なものにはなりえません。
1頭でもそこに存在すれば、もしかしたら異物混入するかもしれない。
これが虫というものの危害の難しいところなのです。

こうした特徴を持っているだけに、微生物管理に重心をおいたHACCPでいうところの「準清潔作業区域」でも、「清潔区域」でも、虫に対してはその危害の度合いに大きな違いはありません。
また異物として混入すれば、加熱されようが虫はそのまま異物として残りますし、その後の除去作業は困難を極めます。(というかほぼ不可能)

その意味で、防虫管理においてはHACCP的な「準清潔作業区域」と「清潔作業区域」の差はほとんど、いや全く生じなくなります。

ということは、どういうことか。
つまり防虫管理においては、重要管理区域は「準清潔作業区域」+「清潔作業区域」となります。
さらに言えば、汚染作業区域の中でもそうしたことはいえるかもしれません。

勿論、衛生管理において、HACCPの考えにのっとりゾーニングを進めることもまた非常に重要です。
ですが、防虫管理においては、若干異なっているところがある、ということも同時に念頭に入れておいたほうがいいでしょう。

挿画

誰でも出来る防虫管理のゾーニング

はーい、やっぱり難しかったですかね。
大丈夫、ここで誰でも出来るように、ゾーニングのポイントをまとめます。

挿画:ゾーニングのポイント

では防虫管理においてのゾーニングを具体的にどう設定すればいいのか。
まず、大きな規模の工場であれば、3段階に。
店舗や、小ぶりの工場であれば、「準清浄区域」をなくしての2段階に、ゾーニングしていきます。

防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域
  • 準清浄区域 ※なくても可
  • 清浄区域

で。
工場であれば、着衣着帽をして手洗いをし、ローラーがけその他の入場手順を踏んで、エアシャワーを浴びて。
そして入場するエリアまでを、「汚染区域」とします。
つまりは、汚れた状態である場所が「汚染区域」です。

で、製造に関わっているエリアは皆、「清浄区域」。
それ以外の、通路だったり倉庫だったり洗浄室だったりといったエリアは「準清浄区域」。
そこまで細かく設定するほどの規模でもなければ、みんなひとくくりで「清浄区域」でも結構です。

食品工場での防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域:汚れた状況でいるエリア(事務所、前室、機械室など)
  • 準清浄区域:製造にダイレクトに関わらないエリア(通路、倉庫、洗浄室など) ※なくても可
  • 清浄区域:製造エリア
    (店舗では、厨房や調理エリアが「清浄区域」。それ以外は「汚染区域」)

一方、店舗ならもっと簡単です。
厨房は、「清浄区域」。
それ以外は、「汚染区域」です。

まずはこれくらいの知識でいてください。
そんな感じでゾーニングするんだなー、ってイメージしてくれればいいです。
具体的には、次の記事やその次くらいに、実際に管理図面を作る段階でまたこれらを解説していきます。

挿画:ゾーニング

まとめ

今日は、工場内や店舗内を防虫管理上、清浄度別に区分するには、という話を致しました。
ちょっと込み入った専門性の高いお話であるように、もしかしたら思えたかもしれませんね。

とりあえず、防虫管理のゾーニングというのはこのようになっているんだ、と判っていただければそれでいいです。

食品工場での防虫管理のゾーニング方法
  • 汚染区域:汚れた状況でいるエリア(事務所、前室、機械室など)
  • 準清浄区域:製造にダイレクトに関わらないエリア(通路、倉庫、洗浄室など) ※なくても可
  • 清浄区域:製造エリア
    (店舗では、厨房や調理エリアが「清浄区域」。それ以外は「汚染区域」)

さあ、早速自分の工場をゾーニングしてみよう。
そう焦って、マーカーや色ペンを握りたくなる気持ちはわかります。
ですが!
もう少しだけ、待ってください。

重要なのは、こうした知識を如何に貴方の工場に、より効果的に落とし込めるか、です。
どうぞ、真っ白の貴方の工場図面~別に建築図面でなくて結構です、何だったら手書きで各部屋の枠組みだけ書いてあるだけで十分です~をご用意して、次にお進み下さい。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画