食品衛生のプロは、日々勉強を欠かせません。
そこで読んだ本を紹介するとともに、そこで得た興味深い知識などについて、ご紹介していきたいと思います。
今回は大手回転寿司チェーン店「くら寿司」の広報宣伝部長さん、岡本浩之氏著「お魚とお寿司のナイショ話」について触れていきたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

参照画:くら寿司
くら寿司

 

実は飲食業界トップの顧客満足度をほこる「くら寿司」

先日、大手回転寿司チェーン店「くら寿司」の有機水産、「オーガニックハマチ」についてのお話を、三部にわけて細かくお話させていただきました。

挿画:くら寿司のオーガニックはまち
オーガニックはまち

それらでちょっと触れず終いになっていたのですが、実を言うと昨年からの新型コロナウイルス、それによる緊急事態宣言によって外食産業が大ダメージを被って以降、このところライバルである「スシロー」に業績面で大きく水を開けられてしまっていたのも事実。
業界2位をほこるとはいえ、今や独走やまない「スシロー」には大きく引き離されとても追いついてない、といった状況が正直なところでしょう。

ですが「くら寿司」は業績こそライバル「スシロー」に大きく劣っているとはいえ、実は日本一の「顧客満足度」回転寿司店だったりもするのです。
いや、「回転寿司」のみならず、飲食業界においてトップの顧客満足度を誇っているのが、「くら寿司」なのです。
これって余り知られていないことなんですが、凄くないですか?

何せ昨年2020年の「顧客体験価値(CX)ランキング2020」(C Space Japan調査)の結果によれば、くら寿司は日本の全企業において、あの「ディズニー」に次いで顧客満足度が高い、とされたということ。
しかも「ディズニーランド」(7位)を楽勝で超えており、さらにその下には「ヨドバシ」(4位)、「ユニクロ」(6位)、「任天堂」(10位)などそうそうたる企業が並んでいます。

参照画:顧客満足度ランキング
顧客満足度ランキング

日経XTREND

ちなみに言うと、数年前まで飲食店(レストランチェーン店・ファストフード店)での顧客満足度では、1位は「モスバーガー」、2位が「丸亀製麺」、そして「くら寿司」は3位だったのです。
ましてや全業界では、トップ20圏外。
それが、数年で飲食店での1位に上り詰め、そして圏外から全業界2位へとのぼりつめたわけです。

このように「くら寿司」が2位に大きくランクインしたのは、お店での徹底したコロナ対応もさることながら、やはり高いコストパフォーマンスにあるのでしょう。
正直ぼくはどちらかというと「スシロー」派だったりもするのですが(というか家の近所にくら寿司がないので)、しかし「くら寿司」侮るなかれ。
これはちょっと見直さなければいけないかもしれませんね。

挿画:驚く

「お魚とお寿司のナイショ話」

さて、そんな「くら寿司」ですが、その中の人、正確には執行役員であられる岡本浩之さんという方が、今年の2月19日、こんななかなか面白い著書を上梓していました。

参照画:「お魚とお寿司のナイショ話」
「お魚とお寿司のナイショ話」(岡本浩之著)

これは広報宣伝IR本部の本部長でもあられる著者の岡本氏が、これまで「AERA.dot」で連載していた、累計500万PVを超える人気記事「お魚ビッくらポン」を単行本としたものです。

そこにはくら寿司での著者の経験や知識をもとにした、魚と寿司、回転寿司チェーン業界にまつわる話などが書かれており、お寿司のことをもっとよく知るにもうってつけの一冊となっています。

例えば「お寿司は何故2貫ずつ出てくるのか」などといったちょっとした寿司に対する疑問、あるいは「海外での寿司人気ランキングはどうなっているのか」といったようなくら寿司ならではの話。
更には、「マグロはどうして出世魚と呼ばれないのか」といった魚の話などなど…。

一つ例を挙げてみましょうか。

皆さんは、「鮭」と「サーモン」が違う魚だって知ってました!?
日本でよく食べられている「鮭」は「白鮭(銀鮭)」です。
これには体内にアニサキスがいる場合が多いため、生食には向いていません。

しかし、回転寿司で使われるような生食の「サーモン」は、ノルウェーなどで養殖されている「アトランティックサーモン」、あるいはニジマスを海水養殖した「トラウトサーモン」です。
こちらは人工餌を使って養殖されるので、オキアミなどの自然の餌を介して寄生するアニサキスはいないので、生食が可能なのです。

…なんて話が、ここには載っていたりするのです。

反面、読みやすいライトさを求められるWEBコラムという媒体の性質ゆえか、読み応えだったりディープさなどには欠けるものの、しかし回転ずし業界の中の人ならではの話も読めるのが興味深い。

挿画:サーモン寿司

くら寿司のお寿司製造管理システムとは

なかでも最も注目すべきは、「くら寿司」ならではの「お寿司製造管理システム」でしょう。

なんでも「くら寿司」の店内の回転レーン上部には、小型カメラが設置されているというようなのです。
で、そのカメラはお客さんがお皿をちょろまかしていないかどうかを確認…しているわけでは勿論全くなく、どのテーブルがどんな種類のお皿を何枚取ったのか、AIによって分析、把握をしているのだという。

しかも「くら寿司」では、さらにお皿にICチップを装着。
これによって一定時間を経過したお寿司を客席に流さないようコントロールしているのだとか。
こうすることでくら寿司は新鮮なお寿司の提供と高い食品衛生レベルを維持している、というわけです。

さらには「くら寿司」ではこれらを合わせながら、ビッグデータに基づいて今いるお客さんのお腹の減り具合・満腹具合を数値データ化。
これによってお寿司の流しすぎによるフードロスを減少させるとともに、(書いてはいませんが)経費削減を実現化。
さらにはこれをなんとAIシステムによって管理させ、「どのネタをいつ、いくつ作って流せばいいのか」までを判断して指示するのだというのです。

通常、こうした判断は熟練した経験豊かな職人が行うものだったそうです。
しかしこのAIシステムが確率されたおかげで、アルバイトやパートの人たちでも活躍できるようになった。
「くら寿司」の高いコストパフォーマンスは、こうしたことで実現がなされている、というわけです。

そもそも「くら寿司」はじめ、大手回転寿司チェーン店の原価率は、なんと50%程度であるとのこと。
一般的な飲食店の原価率が30%以下であることからすると、これはかなり高い原価率だといえるでしょう。
つまりそれだけ高額な材料を使っている、と消費者側からすればお得で実にありがたい話なのですが、しかし逆に店側からすればこれは利益を圧迫するかなり苦しい事情であることになります。

ということはどこかでコストを削減しなければ、ビジネスとしてはやっていけません。
そこで極力、店舗での作業店員数を減らすことで、人件費を抑制しようということになる。

だからタッチパネルを導入して注文を取る店員の必要をなくしたり、寿司の製造からお会計に至るまで、多くの作業を自動化、機械化、あるいは上のようなAIシステム化などによって人件費を抑えている、というわけです。
「くら寿司」のお寿司が100円で美味しく食べられるのも、そうした工夫の賜物なんですね。

挿画:くら寿司

回転寿司界の革新者「くら寿司」

1977年、大阪は堺市に開店された、普通の寿司屋。
そこから始まった「くら寿司」は、やがて「100円で本物」をキャッチフレーズとして、1984年に「回転寿司くら」を始めることになります。
今でも「くら寿司」の本社は、その大阪府堺市にあります。

そうして始まった「回転寿司くら」は、当時大型店では使われていなかった、直線型レーンタイプの回転寿司を導入し、回転寿司のパイオニアとなっていきます。

このように早くから店舗オペレーションの革新に積極的に取り込んできた「くら寿司」は、「株式会社くら寿司」から「株式会社くらコーポレーション」となった後にも、先のようなICチップ、あるいはQRコードによる製造時間制限管理システムを導入。
さらには1999年、長時間レーン上に置かれた寿司の自動廃棄システムをも導入し、店舗オペレーション革新を余念なく勧めていきました。

2000年代には、タッチパネル式注文システムを導入するとともに、お客さんが投入口(皿カウンター)に空き皿を投入することで洗い場まで自動的に回収されるとともに、枚数カウント精算がされる、というシステムを構築。
これによって店員の注文受けから片付け、精算の手間が大きく省かれることになります。
こうした工夫によって取得した特許は計50件以上もある、というから凄い。

そうした「くら寿司」の最新の取り組みは、といえば、受付からお皿の勘定、会計に至るまで、一切の人を介さずに行えるというwithコロナ時代に向けた日本初のスマート寿司レストランの設立である、「スマートくらプロジェクト」。

新しい生活様式のもと、最先端技術を駆使して非接触型の推進、利便性の向上を図り、
安心・安全そしてワクワクする夢のあるレストランを創造する「スマートくらプロジェクト」により、
コロナ対策としてコンタクトレス・タッチレス※を実現した新しい食空間が誕生。

しかもこのコロナ禍を受けて、昨年2020年から実際に「スマートくら寿司」として数店舗がすでに開店している、とのこと。
すごいな「くら寿司!」

まとめ

今回は「くら寿司」の岡本浩之氏が書かれた「お魚とお寿司のナイショ話」に触れながら、「くら寿司」の様々な工夫、これまでの革新の歩みや最新の取り組みなどについて、ご紹介していきました。

うーん。
段々寿司食べたくなってきたぞ。
ちょっくら「くら寿司」行ってくっか!?

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識、またその世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:働く女性