★公開日: 2021年10月30日
★最終更新日: 2021年10月30日

皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

プロが本気で教える防虫管理、リスクアセスメントも終わりいよいよ「防虫管理計画設計編」に入ります。
さあ、その計画を実際に作っていく前に知っておくべき知識があります。
今回はそんな、目標設計の基礎知識についてお話したいと思います。
しかも、実は目標というのは2つあるのです。

それでは、早速はじめましょう。

今日のポイント:防虫計画の設計にあたって
  • 「目的」を明確化させる
  • その「目的」を果たしうる「目標」(「上位目標」)を設定する
  • その「上位目標」を果たしうる「達成目標」を設定する
挿画:上位目標と達成目標

 

管理の「目的」と「目標」を明確にする

さて、ちょっと間が空いてしまいました。
軽く全体を振り返ってみるとしましょう。

まず、防虫管理を始める、あるいは見直すには「PDCA」ならぬ「CAPD」で始めたほうが効率がよろしい、というお話をしましたよね。

作成画:CAPDで始める防虫管理のイメージ

そこで皆さんはこれまで、自身の工場や店舗や厨房がどのような状況であるかを、細かにみてきたかと思います。
それが「リスクアセスメント」でした。

これまではいいですかね。
もし判らなければ、改めて戻って確認してみてください。

さあ、そのリスクアセスメントの細かいやり方などはこれまで解説しましたよね。
実際には「状況評価」と「管理評価」を行い、それらの評価によって現状をジャッジする、というものでした。

そして、そのリスクアセスメントによって抽出された問題に関して、まずは最初に対処しておくべき対策を施す。
そんな「プレ対策」について、前回はお話させていただきました。

これは「CAPDサイクル」の中での「A(Action):改善」にあたります。
つまりは「C(Check):評価」にあたる「リスクアセスメント」に対し、その結果に対しての改善活動「A(Action):改善」として、「プレ対策」を実施した、というわけですね。

作成画:CAPDで始める防虫管理のフロー:プレ対策
CAPDで始める防虫管理のフロー:プレ対策の位置付け

ですから、次に向かうべきは「P(Plan):計画」。
つまり「防虫管理計画のプランニング」というわけです。

というわけで、いよいよその「P(Plan):計画」、つまりは「防虫管理計画のプランニング」なのですが。
ちょっとその前に。
「防虫管理計画」の計画とは、何を満たすために行うのでしょうか。
実はここをはっきりしておかないと、曖昧で効果の低い計画しか出来ません。

前からお話してきたように、「管理」には、「目的」「目標」「方針」が必要です。
何のためにそれを「P(Plan):計画」するのか、という「目的」がないと、計画設計が立てられないからです。
そのため、まずはこの「目的」と「目標」について向かうことが必要です。

どんな計画でも、その根幹となる「目的」とその「目標」が重要です。
何故なら全てはそこにむかって、それを果たすべく、計画というものが立てられるからです。
一番最初に話した、「防虫管理」の「イロハのイ」です。

「管理」に必要なもの
  1. 目的:何のため
  2. 目標:このくらい
  3. 方針:こうやって

つまりこの「防虫管理計画」というものは、昆虫というリスクに対して、ある「目的」を果たすための「目標」に向かって、具体的にこうやってやるのだという「方針」を設計する、というものだということです。

そりゃあ勿論、工場の製品や店舗の商品への昆虫の異物混入リスクを減らしたい、などといった、防虫管理の前提となる「目的」は当然のように個々にあると思います。
そこは割と共通しているはずです。
だからこの「目的」自体は防虫管理において、それほど多岐に及ぶわけではないでしょう。

ですがここで重要なのは、
ではその「目的」を果たしうるため、どのくらいを「目標」とすればいいか、
ということです。
何故なら、その「目標」は個々の状況によって各々違ってくるからです。

さあ、ここでようやく「目標」に向かい、各工場、各企業、各店舗などなど、それぞれ抱えている様々な実状と対峙することになるでしょう。
ここをしっかりと踏まえることが重要です。
すると、「目的」の下に、あなたなりの実状に合致した「目標」が必ず見えてくるはずです。

ですが既にあなたは「リスクアセスメント」を通して、工場の現状をしっかりと把握していることでしょう。
ですからここでは、その結果を踏まえて丈にあった「目標」を定めるべきです。

例えば、これまで何もしていない受験生が東大を「目標」にいくら目指しても、そう簡単に現実には合格は出来ませんよね?
或いは、それ相応の相当な覚悟と、惜しみない努力というコストが必要ですよね。
少なくとも、であれば段階を追って基礎から一つずつ身にしていくしかないと思いませんか?
防虫管理だって基本的に変わりません。

まずは、以下から「最終的にどのくらいのレベルにしたいのか」「どのような状況になりたいのか」という、「目標」としてのゴール設定を行ってください。

「目標(上位目標)」の例
  • 現在構築している管理システムを、より高度なレベルにまでスパイラルアップさせる
  • 現在の防虫対策を、管理システムとして整備する
  • 新たに防虫管理の基礎を導入、もしくは再構築する
  • 場内の生息昆虫数を問題のないレベルにまでとにかく減数させる
挿画:目標を考える

「目標」を「上位目標」と「達成目標」に分類する

それでは、ここで防虫管理の「目標」を整理していくことにしましょう。

まず、実際にあなたの工場において「管理」の「目的」を達成させるために必要な「目標」を考えます。
すると、各工場のレベルに沿った、先のような「目標」が挙げられると思います。

次に、それ自体を達成するための更なる下位的な「目標」、つまりは下位目標としての「達成目標」が必要になります。

「目標」を分類する
  • 上位目標
    目的を果たすために必要な目標
  • 達成目標
    上位目標を目指すために、現段階で必要な目標(下位目標)

つまり、こういうことです。

作成画:管理の中で、上位目標と達成目標を設定する
管理の中で「上位目標」と「達成目標」を設定するイメージ

少し難しいかもしれませんが、例えば「健康管理」、「食生活の自己管理」などで考えてみると判りやすいかもしれません。

「健康管理」という「管理」において、
(自分の体や生活環境という「管理対象(管理領域)」に対し)
「ダイエットして美しく健康になる」という「目的」がそこにはあって、
ここでは「5kg減量」という最終ゴールとしての「上位目標」が設定されたとします。
そしてその下に、それを果たすための「1日3食の摂取カロリー××kcal」といった下位目標としての「達成目標」が設定されます。

防虫管理で言えば、先のような「上位目標」を達成させるため、「達成目標」として「月度の昆虫捕獲数」を設定する、或いは「月度清掃の実施」といった具合にです。

さて、ここで一つ押さえるべきことは、管理において「目的」は(ある程度)揺るぎないものですが、「目標」は不変ではない、ということです。

ある一定期間において達成率は勿論のこと、それ自体の適切性や有効性が「評価」され、場合によっては見直しすらも必要なものが「目標」です。
そのため、「目標」には具体性が必要ですし、また下位に向かえば向かうほど、その度合いが高まります。
つまりは「上位目標」に対して「達成目標」のほうが短期的であり、また数値化が細やかにされていく、ということです。

防虫管理の「目的」と「目標」について押さえるべきポイント
  • 「目的」は不変だが、「目標」は不変ではない
  • 「目的」に対し、「目標」はより評価・見直しが可能なもの
  • 「目的」は抽象性を含むが、「目標」はより具体性のあるもの
  • 「上位目標」がより長期評価なのに対し、「達成目標」は短期評価
  • 「目標」は下位に向かうほどより数値化されていく
    (「上位目標」よりも「達成目標」のほうが数値化されている)

このように「目標」を上下位で段階別に分類することで、何をどこまですべきなのかが明確化されていくことでしょう。

挿画:上位目標と達成目標

具体的に「上位目標」を設定する

さあ、それでは貴方の工場や厨房の「上位目標」を具体的に考えてみましょう。
既に行っているであろうリスクアセスメントの結果を、改めてご覧下さい。
あなたの工場はどのゾーンにありましたか?

作成画:リスクアセスメント診断評点から導く自身の工場・店舗の防虫管理レベル
リスクアセスメント診断評点から導く防虫管理レベル

Aゾーンの上位目標

このゾーンの工場や店舗は、既に一定レベル程度の防虫管理が整備されていると思います。
そこで、「上位目標」も当然ながら管理のスパイラルアップに向けられることでしょうし、それにあわせての管理目標においてもより高いものが実現可能なことでしょう。
当然、外部業者への管理委託においても、そうしたマネジメントシステムを効果的に機能できるような計画を設計すべきです。

Aゾーンの上位目標
  • 現在構築している管理システムを、より高度なレベルにまでスパイラルアップさせる

Bゾーン、Cゾーンの上位目標

このゾーンの工場は、ある程度まではマネジメントシステム構築への取り組みがなされているものの、不足がある、あるいは効果的に機能していない、といった問題を抱えています。
ですからそれを踏まえて、防虫管理の整備や再構築などがまずはその「上位目標」となるでしょう。
現状の防虫管理計画の適切性確認や、モニタリングにおける新たな評価軸の設計をはじめとした、管理体制を含めた様々な見直し・検討がそこに含まれていくはずです。

B,Cゾーンの上位目標
  • 現在の防虫対策を、管理システムとして整備する

Dゾーンの上位目標

このゾーンの工場は、防虫管理におよそ手つかずといった状況が想像されます。
その場合、管理以前に現状の昆虫の深刻な問題にあたることが必要になってくるでしょう。
と同時に、例えば委託業者に丸投げな防虫対策などがある場合は、その反省も踏まえて改めて取り組むべきでしょう。
まずは問題をなくしながら、段階を追っての管理体制構築が望まれます。

Dゾーンの上位目標
  • 新たに防虫管理の基礎を導入、もしくは再構築する
  • 場内の生息昆虫数を問題のないレベルにまでとにかく減数させる
挿画:上位目標と達成目標の設定

まとめ

防虫管理計画を立てるうえでその根幹となる「目的」と「目標」がお判りになったでしょうか。

防虫計画の設計にあたって
  • 「目的」を明確化させる
  • その「目的」を果たしうる「目標」(「上位目標」)を設定する
  • その「上位目標」を果たしうる「達成目標」を設定する

そして、その「上位目標」というのは、各工場や厨房の状況によって、これらのようなものが考えられることでしょう。

「上位目標」の例
  • 現在構築している管理システムを、より高度なレベルにまでスパイラルアップさせる
  • 現在の防虫対策を、管理システムとして整備する
  • 新たに防虫管理の基礎を導入、もしくは再構築する
  • 場内の生息昆虫数を問題のないレベルにまでとにかく減数させる

と、これが今回のお話です。

さて、ここで一つ疑問が浮かぶことでしょう。
「上位目標」は判ったけれど、「達成目標」はどのように設定すればいいの?と。

これを説明する前に、一つ知っておくべき事柄があります。
それが、「評価基準値」というものであり、また「アラートレベル」「アクションレベル」という考え方です。
そしてそのためには、あなたの工場や店舗内をゾーニングしなければなりません。
これはまた次回にお話するとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画

 

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