★公開日: 2021年10月24日
★最終更新日: 2021年10月30日
「冷凍食品」とは何か。「そうざい半製品」はそれとどう違うのか。
そんなことを、ここ数回にわたってお話してきました。
今回は、実際にスーパーマーケットに行ってみた、の続きです。
前回の、スーパーでの実際の「冷凍食品」「そうざい半製品」のチェック。
これを受けて、今日は買ってきたそれらを実際に食べてみることにします。
おっと、そこは言うても食品衛生のプロフェッショナル、言っておきますがただのグルメレポじゃあありませんからね!
(本当かな…)
なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

Contents
実際に「そうざい半製品」を買ってみた
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)
さて、先日10月18日は、「冷凍食品の日」でした。
そこでそれを受けて、何度かに分けて「冷凍食品」のお話をしてきましたね。
まず、「冷凍食品」とは何なのか。
それを、食品衛生法上での成分規格などを紹介しながら、解説してきました。
それらによって、「冷凍食品」とは次のようなものであることがわかりましたね。
「日本冷凍食品協会」による「冷凍食品」の4条件 |
|
そして、次に「そうざい半製品」とは何なのか。
それは「冷凍食品」とは何が違うのか、を「一応」解説しましたね。
「そうざい半製品」とは |
|
要は、区分が難しい。
と、なんかモヤっとしたものだということもわかりました。
そして。
前回では、それらの基礎知識をもって、実際にスーパーマーケットに行って「冷凍食品」や「そうざい半製品」を確認、購入してきました。
さあ。
続く今回は、それらを開封し、実際に食べてみながら、「冷凍食品」と「そうざい半製品」はどこが違うかを実際に検証していきましょう。
おっと。
一応強調しておきますが、今回の目的は「そうざい半製品」の実学であって、それをつまみに晩酌することが目的ではありませんからね!
そう、全ては食品衛生の学習のためにするのです!
では、その前に学習のための準備を…。
プシュリ。
んじゃ、乾杯ー!

「そうざい半製品」の「冷凍餃子」を食べてみる
ぷはー。
くー、んめえーっ。
えー、さて。
今夜は「そうざい半製品」で楽しい晩酌…じゃねーや、食品衛生の学習会です。
どっさり買ってきた冷凍食品の山。
まずはどこから行こうか。
うーん、
やっぱりビールつったら、餃子ですよね。
じゃあ、餃子からやっつけていきますか。

ヤオコーさんオリジナルの、冷凍餃子。
ぱっと見、普通に「冷凍食品」。
包装もしっかりしているし、保存温度も-18℃。
どこが半製品なのか、他の冷凍食品と比べても、一見全く判らない。

でもこれ、「そうざい半製品」なんです。
名称の上を見てください。そう書いてありますね。
その場合、細かな表示義務はなくなります。
だって惣菜ですからね、区分上は。
そのため、表示はかなりシンプルに簡略化されている。
ちなみにこれが「冷凍食品」の餃子。
派手な包装以外、なんか変わります!?

わっかんねー!!

開封した様子。
うーん、全然わっかんねーわ。
ではこれをフライパンで、加熱していくとしましょうか。

冷凍餃子の中心温度をはかる理由
さて、ここからが食品衛生のプロの出番。
面目躍如というもの。
そして出したるは、いつもの中心温度計。
こいつを餃子の中に、ブスリ。

現在、49℃。
うーん、全然まだまだですね。
冷凍餃子の原材料は、生の豚ひき肉です。
病原大腸菌やカンピロバクターなどの、食中毒の原因となる細菌は、実は肉の表面に付着しています。
だから一般的な肉は表面をしっかり加熱すれば食中毒になることはありません。
しかし挽き肉の場合、それを内部に練り込んでしまいますので、表面だけ炙っても食中毒になる可能性があります。
だからこそ、中心温度が重要になります。
これはその確認のための中心温度計です。

「そうざい半製品」の解説の際、メンチカツでO-157による食中毒が発生したというお話をしましたね。
これはそういう理由です。
練り込まれた食中毒菌が揚げそこねで、加熱不足によって死滅されなかった。
メンチカツも、やはり豚ひき肉が原材料ですからね。
ではどのくらい加熱すればいいのか。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、食中毒防止の加熱温度として中心温度75℃1分とされています。
これではまだ全然、至ってない。
2.加熱調理食品の加熱温度管理
加熱調理食品は、別添2に従い、中心部温度計を用いるなどにより、中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で90秒間以上)又はこれと同等以上まで加熱されていることを確認するとともに、温度と時間の記録を行うこと。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」より引用

とはいえ、ぶっちゃけ今回のこれはある意味、確認でやっているものです。
別に中心温度計を買ってきて、わざわざ毎回ぶすぶすやる必要もないでしょう。
メーカーだって当然ながら商品開発の段階で、検査を行っています。
だからメーカー推奨の作り方をしっかり行っていれば、まあ常識の範囲内で普通食中毒などおこることもないでしょう。
おっと、そうこうしている間に、フライパン上にはおよそ水がなくなってきました。

それではもう一度ぶすり、と…

お、91℃。
これならもう十分でしょう。
食中毒菌も死滅したことでしょう。
んじゃ、いっただっきまーす!
いやあ、作りたての餃子は冷凍ものでも美味いねえ。
何たってビールによく合うもの。
ぷっはー、美味い!
…え、なに?
あ!
…ええと…結論。
美味い。
マジに、食べても冷凍食品との区別は判りませんでしたあー。
(ほろ酔い)
(注:今回の目的は現場での実学です。晩酌では断じて以下略)
「そうざい半製品」の「クリームコロッケ」を食べてみる
さて、次はコロッケ。
これもしっかり包装されているように見えるのですが、「そうざい半製品」。

これです。
さて、包装の左下に注目ーっ。
うちに帰ってよく見ると、保存温度に「-5℃」以下ってありました。
てことは、「冷凍食品」の求める「-18℃」まで至らなくてよい。
そこで「冷凍食品」の規格からは外れますわけですね。なるほど。
「日本冷凍食品協会」による「冷凍食品」の4条件 |
|
うん、まあそういうことかー。
さあ、んじゃあこれも揚げていきましょう。
揚げたての熱々コロッケで、ビール。
くー、これまたたまらん!

油の温度を確認。
170℃。
そろそろいんじゃないですかね。
なお、レシピによれば「170℃~180℃で約4分30秒の加熱」とのこと。
んじゃあ、追っていきましょか。
3分加熱。
71℃。
うーん、もう少しだな。
何せ凍っていますからね、温度上昇にも時間がかかる、ということでしょう。

4分30秒加熱。
84℃。
これならいいでしょう。
出来上がりです。

さて。
上にも描きましたが、数年前に「そうざい半製品」のメンチカツで、O-157の食中毒が発生したことがあります。
この場合、消費者の加熱不足が原因であるとされました。
上の検証からも判るように、冷凍されている食品はある一定の時間をかけてゆっくりと揚げないと、内部まで熱が届きません。
そもそも冷凍されているため加熱が中心に伝わるのに時間がかかります。
しかも、今回のようなクリームコロッケなら具材はすでに調理されて加熱殺菌済みでしょうし、液状になっているので熱も伝わりやすいから、これでもそこそこ温度の上昇がしやすいほうでしょう。
しかし、メンチカツなどのような場合、冷凍された挽肉ですから、さらに温度が上がりづらいのです。
さて、この揚げられたクリームコロッケを割ってみましょう。

うん、よく加熱されていますね。
これでよし、と。
それじゃあいっただきまーす!
…うーん!
いやあ、
揚げたてのコロッケ、めちゃ美味いんですけど!
はっきり言って、既に加熱された「冷凍食品」をレンチンするより、実際に「そうざい半製品」を自分で揚げたほうが、100倍は美味しいです。
って、そんなん、そりゃそうですわ、
だって作りたては何だって美味いんですから。
こればっかりは仕方ない。
そういうものです、料理というのは。

揚げたての「そうざい半製品」を至福の笑顔で食べてるうちの娘ちゃん小五。
おかわり必至。
結局全部たいらげてしまいました。
うん、結論。
自分で調理したての「そうざい半製品」は、美味い!
(注:今回の目的は現場での実学ですからゴニョゴニョ…)
同じ白身魚の冷凍された食品で、何が違うのか
さて、次はこの二つ、行きまっせー。

そう、「そうざい半製品」の解説の際、最初に紹介していた、こちらの二品です。
左が「冷凍食品」である「白身魚と野菜の黒酢あん」、
右は、「そうざい半製品」である「白身魚のバジルソテー」。
ぱっと見て何が違うか、外観からはわからない。
こいつらを実際に開封し、調理していけば何か見えてくるかもしれません。
うーん…。
両方とも、白身魚を使ってる。
包装もしっかりと真空パックされています。
保管温度も-18℃となっている。

作り方だって、外装を見るにそんな変わらない。
フライパンに凍ったまま7分間加熱してください、以上。
まあ、確かに包装に関しては「そうざい半製品」である「白身魚のバジルソテー」のほうがシンプルな真空包装です。
でもだからといって「適切な包装がなされている」を逸脱しているわけではないでしょう。
惣菜ゆえに、表記内容も少ない。
では、中身はどうなのか。
こいつらを実際に開封し、調理して比較してみましょう。

まずは「冷凍食品」の「白身魚と野菜の黒酢あん」を、ご開封。
あ、これすでに加熱調理されてますね。
白身魚は、フライ状になってるし、ポテトも同様です。
他の野菜もそうだな。
成る程、そうすることで食中毒菌を死滅したまま商品としているわけです。
蓮根が凍結してくっついたままで、調理が少々手こずりましたが、まあ普通にフライパンで加熱して、出来上がり。
めっちゃ簡単。
この簡単さが冷凍食品ならでは。
では、いただきまーす。

うん、確かに黒酢がきいてる。
でも少々、白身魚がボソボソするなあ。
えーと、正直に言います。
食べられないわけじゃないけれど、正直、そんなすごく美味しい、という印象は感じられない。
さて、ではもう一つの「白身魚のバジルソテー」。
これいってみましょう。

あ、白身魚がそのままです。
ただし野菜は一旦加熱されているっぽい。
でも、メインの白身魚は生ですね。

出来上がり。
こりゃあビール案件で。
うっっめー!
全然違うぞ、いやあ全く違う。
バジルとオリーブオイルが効いていて、それに何より魚がほっくり軟らかい。
これが実にいい味付けで、普通にレストランで出てきたって、それほどおかしくない。てか多分、気付かない。
少なくともちょっと程度のワインバルでこれ出ても、普通に美味いって思うんじゃないかな。
確かにこれ、ちょっと高めでした。
二人前で400円弱。
二人前つっても一人前強程度なので、これメインディッシュに実際に二人で食べるなら×2くらいは欲しいところ。
ただし、確実に、美味い。
値段の差はあるでしょうし、これをもってしてそれが全てに言えるわけでは全くありませんが、でも少なく見積もったって先程の「冷凍食品」の数倍は、美味い。
いや、あれだな、
「美味い」っていうより、最早ちゃんとした「料理」ですねこれは。
先の「冷凍食品」は、本当に「冷食」って感じ。
でもこちらの「そうざい半製品」は、どちらかといえば下味の付けられたものを「料理」したというような出来。
ここら辺が、「冷凍食品」と「そうざい半製品」の違いなのかもしれないですね。
尤もこれひとつの例だけで直ちにそう結論付けるわけにもいかないでしょう。
ですが、そういう一つの指針にはなるかもしれない。
ちなみにこれ、あまりの美味さに、子供らにほとんど取られてしまいました。
パパは、「冷凍食品」のほう食べていいよ、とのこと。

くっそー、子供は正直やなあ。
仕方ないので、焼酎でもいかせていただきます。
くー。
きくねえ!
…と、そんなわけで冷食晩酌の夜は更けていくのであった…。
(注:今回の目的は現場での実学です。晩酌では断じてありません。いやほんとに)

まとめ
今回は「そうざい半製品」がどのようにスーパーマーケットなどで取り扱われているか、などを探りながら、実際にそれらを実食してみる、という新たな試みをしてみました。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
