★公開日: 2021年10月23日
★最終更新日: 2021年10月26日

前回までのお話で、「冷凍食品」とは何か。
そして、謎の存在でもある「そうざい半製品」についてもお話をしました。
なんとなくそれらがどういうものか、わかってきたのではないでしょうか。
ん?まだよく判らない?
ですよねー。はいはい、だってぼくも今ひとつまだ腑に落ちてないところもありますものね。
では今回は、実際にスーパーに行って、「冷凍食品」、それから「そうざい半製品」をチェックしてきましょう。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:スーパーマーケット

 

「そうざい半製品」とは

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

先日10月18日は、「冷凍食品の日」でした。
そこで込み入っていて複雑な「冷凍食品」について、これまでその補足回のような前回も含めて、計3回にわたって様々なことを話してきました。
とくに3回目は、「冷凍食品」には含まれない「そうざい半製品」についてのお話でした。

ここに詳しく解説した通り、「そうざい半製品」は、「冷凍食品」ではありません。
ありませんが、だからといって明確な区分けがあるわけでもありません。
この曖昧さが、「冷凍食品」のよく判りづらさの一つであったりもします。

前回のことまでをまとめてみましょう。

「そうざい半製品」とは
  • 「そうざい半製品」とは、消費者が加熱調理をほどこすことで惣菜として完成する、その言葉のまんまな「惣菜の半完成品」のこと
  • 「加熱後摂取冷凍食品」との製造工程上の違いは、ほぼ生の状態かどうか
  • 「加熱後摂取冷凍食品」との製品上の違いは、しっかり包装されているかどうか、また「冷凍食品」の表記があるかどうか
  • 「そうざい半製品」には、「冷凍食品」と違って食品衛生法上の規格基準がない
  • 要するに、製品の表示以外で「そうざい半製品」か「冷凍食品」かを正確に区分けするのは難しい

と、こんな曖昧な「そうざい半製品」ですが、
では!

実際にどんなものがあるのか、実際のスーパーマーケットに行って、探してみようではありませんか。

挿画:スーパーマーケット

実際にスーパーマーケットに行ってきた

食品衛生の生きた知識は、実学こそが重要。
ぼく自身が長年のこの職務で、イヤというほどに身に染みている事実です。
判らないことを知るのに一番手っ取り早いのは、現場で実際に見てみることです。

そんなわけで、よくわからないんだったら現場に行くべし。ってことでスーパーマーケットに行ってきましたよ。
某北関東の、地方都市。
少しばかり遠征していった先の近くにあった、天下の消費者の味方「ヤオコー」さん。
ここで「冷凍食品」、「そうざい半製品」の何たるかを学ばせていただきましょう。
ついでにそれらを買い込んで、今夜は冷食晩酌なんてしゃれ込むのもいいじゃないですか。

そう、食品衛生の生きた知識は、実学こそが重要。
だったらそれらを食べないと、始まりませんよね?
(えーっ?)

そう、これはあくまで勉強が目的。
決して酒飲みのツマミ探しではないのです!
あー、勉強だもの、仕事だもの、仕方ないよなー。(ワクワク

撮影画:ヤオコー

衣をつけただけのカツ類は「冷凍食品」か

まず、向かうは総菜コーナー。

すると、冷凍ケースに入れられた、衣を付けたカツなどが凍結状態で販売されていました。
スーパーのどこにでも、よくある光景。
決して珍しくはないでしょう。

撮影画::冷凍カツ

さて、これらは「冷凍食品」でしょうか。

そう、もうお判りですね。
違います。
これらは「そうざい半製品」です。

何故なら、「冷凍食品」の条件に、「しっかりとした包装がされている」というものがあります。
このように、白い発泡トレイの上に魚の切り身や生のカツ、フライ類が乗せられ、そのままラップ類で包装されて凍結されているものがよくありますが、これらはその「しっかりとした包装」に含まれません。
ですから表示も簡易的で、「冷凍食品」の表示規格を踏まえていません。

「日本冷凍食品協会」による「冷凍食品」の4条件
  1. 下処理がなされている
  2. 急速冷凍されている
  3. 品温を-18℃以下で保管されている
  4. 適切な包装がされている

これですね。
この場合、4を満たしていません。
うーん、少し見えてきたぞ。

それに、ハムカツかあ…。
揚げたてのハムカツにビール。
悪くないけど、今日はちょっと違うかなあ。
こういうのは、上野の立ち飲み屋さんや大衆居酒屋でやりたいもんなあ。
でも揚げたてハムカツとか、たまらんだろうなあ…。

…おっと、酒飲みのツマミ探しでは、あ、あ、ありませんよ!
実学、実学!…っと。
(じゅるり)

衣をつけた冷凍エビフライは冷凍食品か?

さて、もっと店内を探索していきましょう。

撮影画:冷凍ポテトベーコン巻き

ロールキャベツやポテトベーコン。
これらも同じです。
「冷凍」とは書かれてありますが、「冷凍食品」とは書かれていません。
なので「冷凍食品」ではありません。
つまりは「そうざい生製品」です。

でもポテトベーコン、多分普通に美味いだろうなー。
だってじゃがいもベーコンでまずい理由が欠片も見つからないもんな。
しかもビールにめっちゃ合いそうだなあ…。(じゅるり

撮影画:冷凍エビフライ

…と、。
隣の冷凍ケースに、衣をつけただけの生のエビフライを発見。

撮影画:冷凍エビフライ

こっちは「冷凍食品」だよ!

ええ?
「生のハムカツ」と何が違うの?

これはやはり、先の包装でしょうか。
こちらのほうがしっかりと包装されている感ありますからね。

撮影画:カニ入りクリームコロッケ

じゃあこの「かに入りクリームコロッケ」は?

それなりにしっかりと包装されていますよね。
少なくとも先程のエビフライと、ぱっと見変わらない。
しかもクリームコロッケ、だもんな。
具については生ってこたあ、ない。加熱調理済みでしょう。

撮影画:カニ入りクリームコロッケ

ええー!?
「そうざい半製品」なの!?

しかも表示もかなり細かく書かれています。
これだと、ほぼほぼ「冷凍食品」の表示規定と変わらない。

全然わかんないよ!
わからないけど、食べてみれば判るかも。
うーん、揚げたてのクリームコロッケで、ぐいっとビールかあ。全然アリだよ!(じゅるり)

(注:今回の目的は現場での実学です。酒飲みのツマミ探しでは断じてありません)

加熱調理された「白モツ」は「冷凍食品」か

更に進むと、「白モツ」発見。

撮影画:白モツ

いいねえ、日本酒で白モツ!
煮込んでもいいし、野菜と炒めてもいいな。
ビールでもいいし、日本酒も合うぞ。

(注:今回の目的は現場での実学です。酒飲みのツマミ探しでは断じてありません)

さてこれは…?
しっかり包装されているし、加工もされているぞ…?

撮影画:白モツ

ええー!?
「そうざい半製品」なの!?

裏の表示をよく読むと、実は「保存方法」に「-4℃保存」とあります。

そう、
上の「冷凍食品」の条件を見てください。
「冷凍食品」の保存条件は-18℃なのです。
でもこれは「冷凍食品」じゃないので、「-4℃保存」。

へー。面白いな。
あと美味しそうだな。
んじゃ、買ってきますか。
どーしよ、煮物で燗でもつけてやっつけるかな、いやここは塩炒めでビールか。
野菜はもやしとキャベツがいいかな…。

(注:今回の目的は現場での実学です。酒飲みのツマミ探しでは以下略

冷凍餃子は「冷凍食品」か

さて、そろそろ「冷凍食品」コーナーに行ってみましょう。

撮影画:冷凍食品売場

冷凍ケースに入った商品が所狭しと並んでいました。

その上に「冷凍食品がいつでも安い!!」とあります。
いつでもには点がふられて強調されてます。

成る程、保存のきく冷凍食品は、出来合のおかずや魚類などと違ってタイムセール対象にはなりにくい、そう考えがちなお客さんに対するアピールなのでしょうか。
あるいは、いくら待ってもこれ以上は安くなんねーよって意味なんでしょうか。

ところで「冷凍食品がいつでも安い」ってことは、
「そうざい半製品」は安くないのでしょうか。

ていうか、そもそもこの中に「そうざい半製品」は本当にあるのでしょうか。

色々と考えながら、ケース内を覗きます。

撮影画:冷凍食品売場

ケースの中に蟹クリームコロッケ。
お?と思いましたが、こっちは「冷凍食品」です。
わっかんねー!
ぼくが購入したさっきのものと、どう違うのか。
全く、わっかんねー!

撮影画:味の素冷凍餃子

冷凍餃子。
味の素が誇る、冷食王。
ウチでも時折買うやつです。

これは紛れのない「冷凍食品」。
焼かれてはいませんが、「冷凍食品」の表示がしっかり書かれてます。
いかにも「ザ・冷凍食品」って感じ。

撮影画:冷凍水餃子

一方、先程のコーナーで見つけたこちらの冷凍餃子。
まあ水餃子ですが、ちゃんとそれなりに包装されてますし、-18℃保管も書かれている。
似たようなものですよね。

撮影画:冷凍水餃子

でも「そうざい半製品」。
うーん。

んじゃヤオコーさんのオリジナルのこの冷凍餃子は?

撮影画:冷凍餃子

しっかりアルミ包装されてます。
-18℃保管。基本同じ。
先程の、味の素の餃子と変わるところが全く見られない。
いかにも、冷凍食品です。

でもこれ、実は「そうざい半製品」。

へー。
って、わかるかーーーーっ!

挿画:理解不能

んじゃ判らないから、これ買って食べてみようかな。
餃子でビールか、うん、鉄板だが、いいじゃないか。幸せじゃないか。

撮影画:冷凍ラーメン

冷凍ラーメン。
最近やたら人気の高い冷食ラーメン。
こんなもん作られたら、カップラの立場がないってもんですわ。
全く困ったもんだ。
けしからん、シメラーにしてやっつけてくれる。

…おい、待てよ…?

餃子、白モツ、コロッケ…てことはだな…

ビールに餃子、白モツ炒め、んでシメのラー飲み。
これ、かなりアリなんじゃないか!?
何ならコロッケもあんぞ!?

(注:今回の目的は現場での実学です。酒飲みのツマミ探しでは断じてありません)

「食肉」の比率で規格が変わる?

さて、晩酌買い出し…じゃねーや、「冷凍食品」調査も、そろそろ佳境です。

ラーメン買ったなら、チャーシューも欲しいよね。
これでいいかな。

撮影画:チャーシュー

そうそう、
一つ大事な話を忘れていました。

冷凍食品でも何でも、食肉の比率が50%以上のは「食肉」として取り扱います。

例えば冷凍ハンバーグのようなものの場合、 肉の重量割合が商品全体の50%を超える場合、これは「冷凍食品」でも「そうざい半製品」でもなく「食肉製品」となるのです。
この場合、当然ながら食品衛生法における「食肉製品」の規格基準が適用されることになります。
このチャーシューも、肉の比率が高いため、「加熱食肉製品」となっています。

(冷凍された食品で、食肉50%以上を含むものは、このように加熱済みなら「冷凍加熱食肉製品」、非加熱なら「冷凍食肉」となります。)

ただし、冷凍メンチカツのようなものの場合、衣や具なども含めると50%を越えないことが多い。
この場合、「食肉製品」ではなく、「冷凍食品」或いは「そうざい半製品」となります。
前回触れた「そうざい半製品」の冷凍メンチカツによる食中毒もそうだった。
肉の比率がもっと高ければ、「食肉製品」とされ、大腸菌に対する規格基準が適用されたのです。

おっと、それはそうと、そんなことよりももっと大事なことがありました。
ぼくとしたことが、冷凍食品に気を取られて、ついうっかりとしてしまった。

これ買わないと!

撮影画:ビール

うーん。
クラフトビール系も勿論いいんですけど、餃子にもつ炒めにラー飲みときたら、こうじゃないんだよなあ。

撮影画:ビール

そうそう。
こういうの。
こういうのを、がーっと飲みたいよねー、やっぱり。

(注:今回の目的は以下略

まとめ

今回は実際にスーパーに行って、「冷凍食品」と「そうざい半製品」の違いの確認・調査に行ってみました。
双方の微妙な違いなどもお判りいただけたでしょうか。

…ってわかんないよ!

次回、いよいよこれを実食してみましょう。
おっと、今回はあくまで勉強が目的。
決して酒飲みのツマミ探しではありませんからね!

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

 

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