前回、前々回と「冷凍食品」についてお話してきました。
そしてその中で最後に「そうざい半製品」という、冷凍食品なのか何なのかよく判らないものが話題に出てきましたね。
では「そうざい半製品」とは一体何なのか。今回はそれについて解説をしていこうかと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

挿画:冷凍食品

 

冷凍食品なのに冷凍食品じゃない?「そうざい半製品」って?

※注意:この記事は2019年10月に書かれたものを編集し直して書かれたものです。

先日10月18日は「冷凍食品の日」。
というわけで、前回、前々回と、二回に分けて「冷凍食品」というものについてお話をしてきました。

このように、よくよく見ると奥深くて、結構面倒くさいというか複雑で分かりづらいなのが、冷凍食品です。
しかもその面倒くさくて複雑で分かりづらいものの一つとして、「そうざい半製品」ってのがあるのです。

ええ、何それ?
「冷凍食品」なのに「冷凍食品」じゃないの?
そうざいなのに半製品って?
ていうかそもそも半製品って?

こんなところに今回は迫っていこうかと思っています。

挿画:冷凍食品

スーパーの冷凍ケース内にある「冷凍食品」ではないもの

さて。
前回、最後の最後の「まとめ」のところで、スーパーやコンビニの冷凍ショーケース内で凍結状態で売られているものの中でも、「冷凍食品」ではない存在のことについてお話しました。
その中でも、「そうざい半製品」というちょっと聞き慣れないものものがあるよ、とお話しましたね。

んじゃ、「そうざい半製品」ってなんだろう。
今回はその正体に迫ろうかと思っているのですが、その話を始める前に、まずは何よりも実際に先に見てもらったほうが話が早いかもしれないですね。

撮影画:2つの商品

こないだぼく自身が買った、スーパーの冷凍食品コーナーに置かれていた二つの食品が、こちらです。

ほんとうちのすぐ近くのいきつけのスーパーマーケット。
そこで同じ冷凍ケースに入っていた、同じ白身魚と野菜を使った製品。
調理法も、ほとんど変わりません。
ぱっと見しっかりと包装もされています。
それに、ともにフライパンで7分炒めるだけ。
調理法が大きく変わるとは、ここからは思えない。
これの何にどう違いがあるのか、それだけでは全くわかりません。

ですが、まず左側「白身魚と野菜の黒酢あん」。
実はこっちには「冷凍食品」の表記がある。

撮影画:冷凍食品の表記

ほら、「名称」の上に「冷凍食品」という表記があるでしょ?
これは、もうそのとおりで間違いなく「冷凍食品」です。
前回お話したように、「冷凍食品」にはその表記が法的に必要だからです。

しかし、いっぽうで右の「白身魚のバジルソテー」。
こちらはどうでしょうか。

撮影画:白身魚のバジルソテー

ここでちょっと前回の「食品衛生法」上の区分を、もう一度見てみましょう。

作成画:冷凍食品の分類図
冷凍食品の分類図

下の、緑色の括りを見てください。
食べる前に加熱調理が必要な冷凍食品である「加熱後摂取冷凍食品」ってのがありますよね。
この製品も、フライパンで熱して加熱調理しないと食べられません。
だからここなのかな?ってまず思いますよね。
先の「白身魚と野菜の黒酢あん」も、同様にそこに含まれますしね。

で、そこから更に二つに分けられる。
製造工程上、凍結する前に加熱をしていない「凍結前加熱」ってのがある。
つまり製造工程上、凍結する前に加熱している。
この製品は若干ながらも加熱されていそうなので、ここかなってやっぱり思いますよね。
そう思って裏をめくります。

撮影画:そうざい半製品の表示例

あ、あれ!?
「冷凍食品」の表示はおろか、何も書かれてない!?
ということは、「冷凍食品」の表記がないので「冷凍食品」の条件を満たしていないことになる!?

じゃあこれは一体なんでしょうか。
そう、実はこれが「そうざい半製品」です。

なんやそれ。
どういうこと?
意味が全くわからないよ冷凍食品ーっ!

挿画:驚きのそうざい半製品

「そうざい半製品」とは

一見、冷凍食品にしか見えない。
てゆーか、それ以外の何者にも見えない。
にも関わらず、実はそうじゃない。
「冷凍食品」の表記がない。
それが「そうざい半製品」です。

では、このような「そうざい半製品」とは、どんなものでしょうか。

一言でいうなら、「そうざい半製品」とは、消費者が加熱調理をほどこすことで惣菜として完成する、その言葉のまんまな「惣菜の半完成品」のことです。

撮影画:白身魚のバジルソテー

この「白身魚」も、ぼくが冷凍庫から出してフライパンで加熱してあげることで、やっと料理として食べられる「そうざい」に完成するわけです。
「そうざい半製品」には、このほかにも衣をつけたトンカツやエビフライ、冷凍グラタン、生のハンバーグや餃子などが入ります。

って、いやちょっと待って。
さっきの「白身魚と野菜の黒酢あん」だって「フライパンで加熱して」こそ食べられるよね?
そこの何が違うっていうの?

そう、
そこにあまり明確な線引がないのです。

実を言うと「そうざい半製品」はその全てが冷凍というわけではありません。冷蔵されているものも少なくありません。
それを自宅で焼いたり揚げたりなどの調理を施すから「そうざい半製品」です。
で、その中にはこのように冷凍の状態になっているものが、ある。
で、その場合には、「冷凍食品」との区別がほとんどない。
そう、冷凍されている「そうざい半製品」の場合、どこまでが「冷凍食品」なのかは、結構曖昧なのが実状です。

ええー、さらに訳が判らなくなってきたよ冷凍食品ーっ!

挿画:理解不能

「総菜」の規格はどうなっているのか

とどのつまり「そうざい半製品」ってのは、要するに「惣菜」の一種なのです。
食品の区分としては、「惣菜」に含まれます。
ですが、これが「そうざい半製品だ」というような規格があるものでも実はありません。

そもそも惣菜自体の定義や規格が曖昧なので、こっちは更に曖昧です。
ですから、「冷凍食品」などと違って、「食品衛生法」には「惣菜」の具体的な規格基準はありません。
よって「そうざい半製品」の規格基準も同様に、食品衛生法の対象外です。

それでも探すとすれば、一応次のようなものが適用対象となります。

「そうざい半製品」の基準
  • 弁当及びそうざいの衛生規範
  • 各自治体の定める基準

うーん、この二つくらいでしょうか。
ちなみに後者は、どこの自治体でもあるわけではありません。というか無い方が圧倒的に多いです。

では前者、「弁当及びそうざいの衛生規範」はどうでしょうか。

挿画:調べる

「弁当及びそうざいの衛生規範」による「そうざい半製品」の基準とは

第161号厚生労働省環境衛生局食品衛生課長通知、いわゆる「弁当及びそうざいの衛生規範」。
これが総菜の基準に触れています。

以下、引用してみます。

製品のうち、サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、検体1gにつき細菌数(生菌数)が100万以下であること

3 製品
(1) 製品は、次の①及び②に適合するものを使用及び製造するようにすることが望ましい。

① 製品のうち、卵焼、フライ等の加熱処理したものは、次の事項に適合すること。
ア 細菌数(生菌数)は、検体1gにつき10万以下であること。
イ 冷凍食品の規格基準で定められたE.Coliの試験法により、大腸菌は陰性であること。
ウ 黄色ブドウ球菌は、陰性であること。

② 製品のうち、サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、検体1gにつき細菌数(生菌数)が100万以下であること。

おお、一見、結構踏み込んで規定しているように見えますよね。

しかし、ここにも問題がいくつか、あります。

まず一つめ。
この「衛生規範」ってのは、あくまで「規範」です。
何せ、これは本来「厚生労働省環境衛生局食品衛生課長通知」、つまり厚生労働省の環境衛生局が保健所に出した「通知」であり、その本来の目的は、そのように現場指導しなさいねという、要は保健所への指導通知です。
ですから法的強制力をもって製品を規定するようなものではありません。

そしてもう一つ。
確かに「卵焼、フライ等の加熱処理したもの」については、大腸菌の陰性を規定しています。
①のイがそうですね。
では、生のもの、例えば「衣を付けただけのメンチカツを凍結させたもの」のような「そうざい半製品」についてはどうか。

そう、未加熱のそうざいに関しては、大腸菌が陽性でも問題がないことになっています。
だってメンチカツの生肉はどうしたって大腸菌の陰性には無理がありますからね。
そうするためには、加熱処理しないといけません。

確かに②には未加熱そうざいについての規定があります。
「サラダ、生野菜等の未加熱処理のものは、検体1gにつき細菌数(生菌数)が100万以下」ってやつですね。
でもこれは「サラダ」や「生野菜」についての話であって、「メンチカツ」のようなものを想定していません。
その場合、買った消費者の加熱がしっかりなされないと、食中毒になりかねません。

それから、もう一つ。
そもそもとして、すでにこの2021年6月1日において、「弁当及びそうざいの衛生規範」は厚生労働省によって廃止されました。
これによって、その規定自体がすでに向こうとなっているのです。

挿画:厚生労働省

「冷凍食品」と「そうざい半製品」の違いは「規格基準があるかないか」

これらをまとめていくと。
「冷凍食品」と「そうざい半製品」の最大の違い、
それは法的な規格基準があるかどうか、です。

「冷凍食品」については、前回も触れた通り「食品衛生法」における明確な規格基準が存在します。

作成画:冷凍食品の成分規格
冷凍食品の成分規格

とまあ、このように菌数も定められており、これを越えたものは市場に出せません。

また「JAS法」によって、はっきりと「冷凍食品」と表示され、保存方法も農林水産省の定める「-18℃以下」が表示されています。

しかし一方、「そうざい半製品」には厚生労働省の定める規格基準がありません。
ですから、「そうざい半製品」には表示規定がありません。
「冷凍食品」ではないので勿論そう書かれているわけがないのですが、かといって「そうざい半製品」とも書かれていないことも多い。
こちらも、このように商品名だけしか書かれていません。

撮影画:そうざい半製品の表示例

だって、そういう表示上の決まりがないのだから、書く必要がないのです。

勿論、工程上からの双方の一番大きな違いは、「生に近いものか、いくらかの加工がされているのか」です。
そりゃあそれくらいの違いはあるものです。

例えば、先の「冷凍食品」のほうの「白身魚と野菜の黒酢あん」を開封し、見てみると、白身魚や野菜類がフライ状になっていました。
一方、「そうざい半製品」のほうの「白身魚のバジルソテー」はといえば、味付けはされていますが生の状態です。

この違いこそが、実は「冷凍食品」か「そうざい半製品」かを分ける大きなポイントでもあります。
でも、それだって曖昧といえば、曖昧でしょう。
わからないっすよね、普通ぱっと見で。

その結果、ぶっちゃけ、「冷凍食品」の規格基準に満たないものが「そうざい半製品」として市場に出ているケースもあるようです。
勿論、全部が全部そういうものばかりだ、というわけではないことは強調しておきますが。

そんなわけで、ひとまず地方自治体レベルでこれら「そうざい半製品」について指導基準を設けているところもあるのですが、それでも国が動かないことにはどうにもならんというのが、実はこの「そうざい半製品」だったりします。

ええー!?
それでいいの冷凍食品ーっ!?

挿画:そうざい半製品

2016年に発生した「そうざい半製品」でのO-157食中毒

まあ、あれなんですよ。
当然ながら良い訳がそんなにないわけです。

覚えている人もいるかもしれません、およそ3年前。
2016年の10月に、「冷凍メンチカツ」で、広域に渡っての腸管出血性大腸菌O157食中毒が発生しました。

結果、1都5県に渡って、最終的には患者数67名が発症。
さあ、もうお判りですね。
ところがこの冷凍メンチカツ、「そうざい半製品」だったのです。
だから法令規定自体が存在しなかった。

もう一度言います。
そうざい半製品」の規定には「弁当及びそうざいの衛生規範」、あるいは「各自治体の定める基準」などがあります。(ありました)
ですが、前者は法的強制力のないただの「規範」でしかなく、また後者は自治体単位の基準でしかない弱いものです。
そして「弁当及びそうざいの衛生規範」には、未加熱そうざいに対する大腸菌の規定はありませんし、しかもそれもすでに廃止されてしまっています。

「そうざい半製品」に対する注目が俄然高まったのもこの時でした。
皮肉なことに10月、「冷凍食品月間」に、奇しくも「冷凍食品」の問題が浮上、注目されたわけです。

普通は、こんな食中毒を起こしたら製造メーカーの責任ガー!となるところでしょう。
ですが、これをあげて食べたのは消費者自身です。
製品にはしっかり加熱条件や保存条件が書かれていた。
それをやっていないのは、消費者の問題でしょ、ということになる。

これにはさすがに行政もケツを叩かれました。
今後、HACCPの義務化とともに、このあたりも改訂の対象へとして、「冷凍食品」への統合が進んでいくのかもしれません。

挿画:冷凍食品?

まとめ:実は高品質で美味しい「そうざい半製品」

今回は冷凍された食品のなかでも、「冷凍食品」との区分の曖昧な「そうざい半製品」について解説しました。

これまでのことをまとめると、このようになるでしょう。

「そうざい半製品」とは
  • 「そうざい半製品」とは、消費者が加熱調理をほどこすことで惣菜として完成する、その言葉のまんまな「惣菜の半完成品」のこと
  • 「加熱後摂取冷凍食品」との製造工程上の違いは、ほぼ生の状態かどうか
  • 「加熱後摂取冷凍食品」との製品上の違いは、しっかり包装されているかどうか、また「冷凍食品」の表記があるかどうか
  • 「そうざい半製品」には、「冷凍食品」と違って食品衛生法上の規格基準がない
  • 要するに、製品の表示以外で「そうざい半製品」か「冷凍食品」かを正確に区分けするのは難しい

そして。
最後に誤解されては困るので、断っておきます。
ぼくは何もここで「そうざい半製品」がダメだ悪いと言っているのでは、全くありません。

このように、確かに「そうざい半製品」の規定は曖昧です。
ですが、だから製品として劣悪だ、衛生管理レベルが低い、食べるな、食中毒になるぞ、という話ではコレ、断じて!全く!ありません。
いいですか?そんなことをぼくは一言も書いてないですからね!
ただ基準がないよ、という行政上の話をしているだけですよ。
ここ、本当に強調しておきますからね。

実際、各メーカーは努力して、「冷凍食品」並みの製造管理に基づいて製造していることでしょう。
自社規定では「冷凍食品」規定並み、あるいはそれ以上の品質を目標にしているところが、まあほとんどだと思います。
だけど、そもそも冷凍メンチカツのような生肉だけのものを大腸菌陰性なんて規格はそもそも無理、現実的では全くありません。
そういうものだ、と理解するべきです。でしかありません。

それともう一つ。
ぼくは「そうざい半製品」は「冷凍食品」以下だとも、微塵も思ってませんし、書いてもいません。
むしろぶっちゃけ、「冷凍食品」より「そうざい半製品」のが美味しいことはめっちゃ多いです。

だって、既に作られたものを冷凍するより、生のを作りたてで食べるほうが美味いに決まってます。
(とこうやって書くと、今度は「じゃあ冷凍食品が不味いってのか!?」ってな声が上がりそうなのが面倒臭いなあ/苦笑)

結論。
「そうざい半製品」は、美味しい。

これ本当です。
ただし、しっかり加熱しましょうね、ってだけの話です。

……え、本当に本当かって?
よーし、わかった。
そんじゃあスーパーで実際に「そうざい半製品」選んで買ってきて、実食してやんよ!

→ということで、次回実食編に続く!?(マジカヨ!?)

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。