★公開日: 2021年10月17日
★最終更新日: 2021年10月17日
皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。
プロが本気で教える防虫管理、リスクアセスメントも終わりいよいよ設計編に入ります。
ですがその前に。
ここで見つかった問題に関しては事前に対応しておかなくてはいけません。
そこでこの初期対策、防虫管理における「プレ対策」について今回はお話していきましょう。
それでは、早速はじめましょう。
今日のポイント |
|

Contents
リスクアセスメントに対する是正措置としての「プレ対策」
さて、前回まで「リスクアセスメント」についてお話させていただきました。
これらの結果、あなたの工場において多かれ少なかれ幾つかの問題が、恐らく発見・確認出来たことだと思います。
それらのうち看過しがたい重要な問題については、今後の防虫計画のプランニング、導入・構築の前に、まずは優先的に解決しておく必要が、当然ながらあることでしょう。
さて。
「管理」という仕組み上、「「C(Check):評価」」において基準値を逸脱した不具合が生じた場合、何らかの措置、「A(Action):改善」を行う必要があります。
その改善活動の各々一つ一つが、いわゆる「是正措置プログラム」(Corrective Action Program)というものです。
ここにおいて、「CAPDサイクル」、つまり「P→D→C→A」ならぬ「C→A→P→D」のサイクルに則って言うならば、
以前にも何度も伝えように、先に行った「リスクアセスメント」は言うまでもなく、そのサイクルの最初の「C(Check):評価」にあたります。

そして。
この「C(Check):評価」に続く「A(Action):改善」こそが、発見された問題への「是正措置プログラム」である、この初期対策なのです。
言ってみればこの初期改善とは、その後続く「P(Plan):計画」に向けた「A(Action):改善」としての、「管理準備段階の事前の是正措置」ということになります。
そこでこれらは管理の前の「プレ対策」とも言われているわけです。

「プレ対策」の目的
「管理準備段階の事前の是正措置」。
つまり防虫管理に向けた準備段階での事前な措置ですから、この「プレ対策」の目的は以下のように明確です。
「プレ対策」の目的 |
|

…ん、「アラートレベル」?
そう訝しんだ方もいますよね。
これについてはまた後に詳しく解説します。
ですが、簡単にお話してしまうと、「アラートレベル」とは(GMP上の)専門用語です。
簡単に言うなら「アラートレベル」とは、警戒水準、つまりは「これ以上リスクが高まると危険であると警告されるレベル」のことです。
防虫管理においては、評価基準値、つまり「いいか悪いか」をジャッジする基準となるレベルのことを言います。
で、それを踏まえて考えると。
まずは現存するリスクを「アラートレベル」、つまりは「評価基準値」である、ある程度の管理が可能なレベルであると想定される許容範囲内にまで押さえることで、工場の問題をある程度リセットすること。
そして、その環境整備の上で、これから設計する防虫管理計画をスムーズに取り込むこと。
この二点こそが、「プレ対策」を実施する目的となります。
よって「プレ対策」においては、当然ながらその管理の「許容範囲を越えたリスク」が対策の対象となります。
すごく乱暴に判りやすく言えば、「よく見たら見つかった、放っておけない深刻なヤバい問題」、ということですね。
で、その「ヤバい問題」を「ヤバくない」レベルにまで軽減させる。それがこの目的、というわけです。

プレ対策では何をするのか
要は、これまでのリスクアセスメントによって発見された「ヤバイ問題」に対し、管理の事前に初期改善を行う。
それがこの「プレ対策」だというのはわかりました。
では、その「ヤバイ問題」であることをどのようにジャッジすればいいでしょうか。
つまり何がこのプレ対策の対象になるのか。
何を基準に「ヤバイ問題」=「防虫管理上の許容範囲外」となるのか。
これについては大きく分けて、二つあります。
「プレ対策」の対象 |
|
昆虫による汚染要因は、大きく2つ。
それは、大量な「内部発生」か大量な「外部侵入」の2つです。
よって結論から言えば、このいずれか或いは両方が生じているとき、これらのリスクに対する何らかの「プレ対策」が必要になります。
例えば。
場内を目視踏査していたら、工場の製造室内で汚水の滞留箇所からコバエが発生していたのを発見した。
或いは、他にもドアの隙間が生じていて、ここから大量に外部の生息昆虫が侵入していたのを発見した。
などなど。
こうした問題が発見された場合は、やはり何らかの「プレ対策」、
つまりは早急な事前の対応が必要になってくることになります。

対策を行う以上、その問題に対する要因分析が重要だ
ただしここで2点ほど、押さえておくべきポイントがあります。
「プレ対策」を行う上で注意すべきポイント |
|
順を追って説明しましょう。
何らかの「問題」を発見した場合、その「問題」の「要因」に対する「対策」が必要になる。
この話も既にしてきたことでしょう。

つまり「要因」がブレると、「問題」は基本的に解決されません。
違う病気なのに違うところを手術したり薬を飲んでも良くはならないですよね。
そういうことです。
至極当たり前に聞こえるかもしれませんが、その「当たり前」を不意に忘れがち、見逃しがちです。
何故か。
「悪いところ」、つまりは「要因」がわからないからです。
「問題」かどうかは、大量な「内部発生」か大量な「外部侵入」の2つだ。
ではその「要因」は何か。
これをしっかりと踏まえることが重要です。
これらのことについては前に詳しくお話しましたね。

詳しくは遡って上の記事を参考にしてください。
とりあえずもっかい簡単に言うと。
昆虫が「そこにいる」という問題には2つの要因があります。
それは「外部侵入要因」と「内部発生要因」です。
これらを取り違えると、対策が空回りします。上の図のような状況ですね。
先のたとえで言うなら、「違う病気なのに違うところを手術したり薬を飲んでも良くはならない」という話です。
例えば、ドアに隙間があって侵入している。
つまり「ハードの不具合由来」から入っている「外部侵入要因昆虫」に対し、いくら場内清掃をしても、つまりは、いくら「ソフト上の不具合」による「内部発生要因昆虫」の対策をしても意味がない、ということです。
…と。
ここまでこうやってロジックに基づいてお話をすると「そりゃそうだ」と理解出来ることでしょう。
しかし、これがそれを実際にやろうとすると、実はなかなか、というかかなり!難しいのが現実です。
何故か。
その虫が、外部侵入要因なのか内部発生要因なのか、
或いは、どんなところで発生するのか、
それが一般の方には判断が難しいからです。
そして、そこが実は防虫管理屋のプロの腕前や知識や経験値だったりするわけです。
取りあえず、これ以降のお話をすると長くなってしまうので、ここでは割愛します。
近く、自社管理、自社での駆除施工のお話をする予定ですので、これ以降はそこでしっかり詳しく触れることにしましょう。
まずは、こうした理由からもし問題があったらプロの手を借りたほうが、最初はいいのではないか、ということだけ知っておいてください。
(あ、プロといってもこの要因分析力のレベル差はかなり大きいですからね。
それも加えておきます)

対策はいつも「効果検証」で実証する
もう一つ、重要なことがあります。
それは、
「プレ対策を行ったら、必ずその効果検証を行って、対策効果を実証する」
ということです。
つまり、PDCAでも、CAPDでも、必ず「A(Action):改善」の後には、その改善に対する小さな「C(Check):効果検証」がある、というのを忘れないでください。

実際の「効果検証」の方法としては、何らかの是正措置を施した箇所の周辺に、複数の組立式の簡易床置き捕虫トラップを設置します。
1~2週間後、そのトラップの中の捕虫状況を確認し、
対象昆虫の捕獲数が減っていれば、効果ありと評定出来るかと思います。
もし減っていない、あるいは増加しているのであれば、
その「対策」のピントがずれています。
別途対応が必要です。

まとめ
今日は「リスクアセスメント」結果に対する是正措置、「プレ対策」についてお話しました。
ではまとめていきましょう。
今回伝えたかったこと |
|
何度にもなりますが、これらに基づいて、まずは深刻な問題を有る程度軽減させることが、この「プレ対策」の役割です。
では次からはいよいよ設計編。
具体的な防虫管理計画のプランニングです。
ぼく的には、ここが実は一番楽しかったりします(笑)。
では、今日はこの辺で。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
