★公開日: 2021年10月16日
★最終更新日: 2021年10月16日

皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

プロが本気で教える防虫管理。
実践編を迎えながらいよいよ20回目を越えて、後半戦に入ってきました。
今回は「リスクアセスメント」編の最終回。
リスクアセスメントの診断結果を導き出し、あなたの工場や店舗の防虫管理レベルがどのくらいなのかを、お教えいたします。
今回はもうサクサクといきますよ!(多分)

それでは、早速はじめましょう。

挿画:リスクアセスメント

 

既にリスクアセスメントは完了している?

さて、前回は「管理評価」のまとめ方についてお話させていただきました。

つまりすでに貴方のお手元には、それらの診断結果があることになります。
初心者、これからというかたのもとには、「状況評価」の診断結果が。
中級者以上、すでに防虫管理を進めていたかたのもとには、「状況評価」「管理評価」の双方の診断結果が、それぞれあることになります。

これらの結果に基づいて、あなたの工場の状況がどうなっているのか。
既にある程度の状況把握をされたのではないでしょうか。

さて、その際、各評価においての評点を付けていることでしょう。

で。
ここまで来て言うのもナンですが、(管理評価のときにも触れたように)正直言ってこの数値自体には、それほど強く意味があるものではありません。

挿画:「え…!?」

…て驚かれたかもしれませんが、「有る程度」まではコレ、本当のお話です。

何故なら、この「リスクアセスメント」の目的というのは、その名の通り、工場の現状を客観的に把握してリスクがどのように潜在しているか。その実情を知ることだからです。
高い評点をとること自体が、本来の目的ではありません。

よって、当初の目的、つまりは「CAPD」における最初のステップ「C:Check(評価)」は、実は既にもう果たされているのです。
だから後は、の際に顕在化された重要なリスクに関しての改善、つまりは「A:Action(改善)」である「是正措置プログラム」を行ったり、それがなければ続く「P:Plan(計画)」、つまりは防虫計画の設計に移行すればいいでしょう。

作成画:CAPDで始める防虫管理のイメージ
CAPDで始める防虫管理のイメージ

ただ、今後の管理目標として、またその方針立てのために、今回はその評点に少しばかり目を向けたく思います。

挿画:ビジネスのイメージ

貴方の工場・店舗の診断評点はこちら

では皆様の診断結果をふりかえってみてください。

まずは「状況評価」。
こちらの【18】での記事の最後のほうで、ぼくは「状況評価」の評点方法をお話いたしました。

「状況評価」の算出法①(○は5点満点)
  • 環境リスク:○×1=A点
  • 侵入リスク:○×2=B点
  • 拡散リスク:○×3=C点
  • 発生リスク:○×4=D点
  • A+B+C+D=X点

で、ここで出た「X」というのは50点満点となっていますので、これを「管理評価」と合わせるために10点満点に換算しておきましょう。
簡単ですね、ここに「0.2」を掛けてあげればいい。

状況評価の算出法②
「X」×0.2=あなたの工場・厨房の「状況評価」評点

さて「管理評価」の診断をしていないかたは、まだ防虫管理の計画すらも至っていない段階です。
ですから、「管理評価」の評点は、「1」としておきましょう。

一方で、「管理評価」の診断を行ったかた。
前回【20】のこれも最後のほうで、書いてありますので、そちらを参考にしてみてください。

「管理評価」の算出法
  • P(Plan:計画):3点満点中E点(0~3点)
  • D(Do:実行):3点満点中F点(0~3点)
  • C(Check:評価):2点満点中G点(0~2点)
  • A(Action:改善):2点満点中H点(0~2点)
  • E+F+G+H=あなたの工場・厨房の「管理評価」評点

さあ、これで双方の診断結果が出揃いましたよ。

挿画:リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」のイメージ
リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」(イメージ)

「状況評価」と「管理評価」結果から見えるもの

先の項目で、それぞれの評点は出されたでしょうか。

「リスクアセスメント」診断結果の評点(それぞれ10点満点)
  • 「状況評価」の評点 →○点
  • 「管理評価」の評点 →○点
    (管理評価の診断を行っていない場合は、1点とする)

では、これらの結果をそれぞれ、上のグラフの縦軸と横軸に示します。
するとAからDまでのいずれかのゾーンに、区分けされることになるでしょう。

例えば、
「状況評価」が7で「管理評価」が8という優秀な工場はAのゾーンに、
「状況評価」が3で「管理評価」が6という工場はBのゾーンに、
「状況評価」が9で「管理評価」が2という工場はCのゾーンに、
「状況評価」が1で「管理評価」が4という工場はDのゾーンに、
それぞれ示されるでしょう。
5だというかたはそのどちらかなのですが、まあAかCのゾーンに入っていいでしょう。

作成画:リスクアセスメント診断評点から導く自身の工場・店舗の防虫管理レベル
リスクアセスメント診断評点から導く防虫管理レベル

あなたの工場・店舗の防虫管理レベルを診断します

いかがでしょうか。
あなたの工場の状況はどのゾーンに区分されたでしょうか。

防虫管理レベルはどのゾーン?
  • Aゾーン:防虫管理が構築され、効果的に機能している
  • Bゾーン:防虫管理が構築されているが、効果的に機能していない
  • Cゾーン:防虫管理が構築されてないが、効果を果たしている
  • Dゾーン:防虫管理が構築されておらず、防虫対策も進んでいない

では、これら各ゾーンの解説をしていきましょう。

挿画:ABCDゾーンの解説

Aゾーン:防虫管理が構築され、効果的に機能している

あなたの工場は、既に防虫管理のシステムがある程度構築されており、またそれによって防虫対策の効果を果たしている、といえるでしょう。

よって現状の防虫管理を継続しながら、PDCAサイクルの弱い要素を強化していくことで、更にその管理レベルは高まるものと思われます。

またリスクも有る程度把握されていることでしょうから、それに対してのモニタリングを継続、或いは強化し、監視していくようにしてください。

その際に、アクションレベルを逸脱するような異常が発生した場合、即座に是正措置プログラムを発動出来るよう準備しておくことをお薦めいたします。
(具体的には、駆除施工の事前準備や、清掃の計画など)

Bゾーン:防虫管理が構築されているが、効果的に機能していない

あなたの工場は、防虫管理のシステムが構築されているものの、それが効果を発揮していない状況にあります。

この場合、防虫管理のシステムが実は構築不足で、何処かに致命的な問題を抱えている。
或いは、自己流で防虫管理のピントを外している、
といったケースが考えられます。

このような工場は多くの場合、PDCAサイクルにおいての「C(Check):評価」や「A(Action):改善」に問題を孕んでいるケースがまま見受けられます。

日々の点検やモニタリングの見直し、問題の確認、或いは、効果の検証会議と、問題解決のための検討会議などが、もしかしたら必要なのではないでしょうか。

とくに「C(Check:評価)」というのは自己流になりがちなものです。
何故なら、その良し悪しのジャッジが判らないからです。
また多くの問題に関しても、やはりプロの手を借りて向かうのが一番早道です。
プロはやはり、そう言われるだけの解決の術を持っているものですし、
意外と簡単、格安で解決出来ることだって珍しくありません。

挿画:PDCAの「C」がダメ

Cゾーン:防虫管理が構築されてないが、効果を果たしている

あなたの工場は、防虫管理のシステムが構築されていないにも関わらず、有る程度の効果を発揮しているという状況です。

この場合、設備構造の整った新しい工場であるためそう防虫管理上の問題が少なかったり、製造品目上、それほど防虫管理上の問題が生じない環境であったりといった製造環境に恵まれていることが多いです。

また或いは、評価機能(C)が機能していないため、本当は問題があるのにもかかわらずそれに気付かないといった状況も大きく考えられます。

ちなみに新設工場は最初のうちは綺麗なので何の問題もないように見えますが、数年もすればあっという間に経年劣化します。
私の経験上、3年もあればどこかしら問題が生じてくる工場がほとんどです。
数年経って久々に訪れたら、とんでもなく劣化していた工場だって珍しくありません。

なお、基本的に管理システムが構築されていないにもかかわらず、問題が見られない、というのは正直診断不足だとういう他にありません。
恐らくは何らかの見えていない問題が、既に隠れているのではないでしょうか。
しかもそうした場合、気付かず放置していたために、得てして重要な問題に発展していたりするものです。
(こういうケース、本当に多いです!)

実際のところはDゾーンだった、などとならないよう、Bゾーン以上に、このゾーンの工場は要注意が必要です。
一度プロの目から診断調査してもらう、或いは現在委託している業者とは違った目から見てもらう、ということも考えたほうがいいかもしれません。

Dゾーン:防虫管理が構築されておらず、防虫対策も進んでいない

あなたの工場は、防虫管理のシステムが構築されていないため、防虫対策が効果を出してないという状況です。

このゾーンの工場は、比較的小規模クラスの工場に多く、防虫管理を委託せず自社内で賄っている。
或いは、実のところ何もやっていない、というよりも寧ろ何をやっていいかわからない(こういう工場さん、実は多いです!)、という方も見られるのではないでしょうか。

更に、こうした場合はよく「P(Plan:計画)」に要因を孕んでいることが多く、組織的な問題があるのが特徴的です。
加えて現場も、ハードの弱さを言い訳に諦めが広がっている、
或いは、問題が常時化しているということも珍しくありません。

まずは現状をしっかり把握した上で防虫管理を構築し、
問題に対しては優先順位を付けて取り組んでいくようにしてください。

挿画:PDCAの「P」がダメ

Aゾーンに向かうために必要なことは?

如何でしょうか。
工場で不足しているもの、適していないものが少なからず見えたのではないでしょうか。

最終的にはAゾーンを皆が向かうことが望まれます。
そのためには、Bゾーンのかたは「状況評価」を、Cゾーンのかたは「管理評価」を高めていかなくてはいけません。
またDゾーンのかたは、その双方をこれからじっくりと進めていく必要があります。

どうぞそれを意識して、今後の防虫管理の構築に向かうようにしてみてください。

リスクアセスメント結果から工場の防虫管理レベルを知る
  • Aゾーン:防虫管理が構築され、効果的に機能している(状況評価5点以上、管理評価5点以上)
    そのまま管理の継続を進め、弱いところを強化していってください。
  • Bゾーン:防虫管理が構築されているが、効果的に機能していない(状況評価5点未満、管理評価5点以上)
    システム上(多くはC、Dに)大きな問題があってピントを外しているのでは?
  • Cゾーン:防虫管理が構築されてないが、効果を果たしている(状況評価5点以上、管理評価5点未満)
    要注意!環境に恵まれているが、実は重要な問題が見えていないケースも
  • Dゾーン:防虫管理が構築されておらず、防虫対策も進んでいない(状況評価5点未満、管理評価5点未満)
    比較的小規模工場に多い。組織的な問題(P)に悩まされているケースも多い
作成画:リスクアセスメント診断評点から導く防虫管理レベル
リスクアセスメント診断評点から導く防虫管理レベル

まとめ

今日は、「リスクアセスメント」のまとめと診断結果についてお話しました。

各ゾーンの方はこれらを参考に、自身のレベルを知るとともに、今後の方針へと役立ててみてください。

リスクアセスメント結果から工場の防虫管理レベルを知る
  • Aゾーン:防虫管理が構築され、効果的に機能している(状況評価5点以上、管理評価5点以上)
    そのまま管理の継続を進め、弱いところを強化していってください。
  • Bゾーン:防虫管理が構築されているが、効果的に機能していない(状況評価5点未満、管理評価5点以上)
    システム上(多くはC、Dに)大きな問題があってピントを外しているのでは?
  • Cゾーン:防虫管理が構築されてないが、効果を果たしている(状況評価5点以上、管理評価5点未満)
    要注意!環境に恵まれているが、実は重要な問題が見えていないケースも
  • Dゾーン:防虫管理が構築されておらず、防虫対策も進んでいない(状況評価5点未満、管理評価5点未満)
    比較的小規模工場に多い。組織的な問題(P)に悩まされているケースも多い

さあ、防虫管理の最初の一歩がこれでようやく整いましたね。
ご自身の工場の状況もしっかり把握出来たことでしょう。

それではいよいよ、これから防虫管理計画に着手です。
おっとその前に、改善が必要な工場はそれを先に行ってみてください。

作成画:CAPDで始める防虫管理のフロー:プレ対策

なお、これについては次回にお話いたします。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:ビジネスのイメージ

 

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