皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいています。

防虫管理実践編。
というわけでリスクアセスメントにおいて、「状況評価」にならぶもう一つの項目、「管理評価」について、前回に引き続いてお話します。
もう一度言っておきますが、今回は前回を含めて、かなりハイレベルな内容となっています。
ですが、ぶっちゃけそのぶん、有料級の話でもあります。
だって、これらは普通に防虫管理のコンサルを依頼されてお話するような内容です。
それでは、早速はじめましょう。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

今日のポイント
  • 管理評価」とは、防虫管理上、PDCAの何が問題なのかを知り、そのリスクマネジメントレベルを評価することである
  • そのためには「状況評価」において最も重要、優先的な問題を複数並べ、それらに共通、通底する「システム上の問題」を見出す必要がある
  • マネジメントシステム上の「要因」を探るためには、事象であるそれらの「問題」に共通する「何故?」をつきつめていくといい
  • 「P(Plan:計画)」につまづいている工場・店舗は、「管理」に対する組織的な問題を抱えている場合が多い
  • 「D(Do:実行」につまづいている工場・店舗は、「ヒト」に関する問題を抱えている場合が多い
  • 「C(Check:評価)」につまづいている工場・店舗は、「やりっぱなし」な場合が多い
  • 「A(Action:改善)」につまづいている工場・店舗は、長期間問題を放置している場合が多い
挿画:「PDCA」は「管理の仕組み」

 

防虫管理上、PDCAの何が問題なのか

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

さあ、この「プロが本気で教える防虫管理」も、なんと20回を迎えてしまいました。
記念すべき…と思ったら、前編・後編のうちの後編と、えらく中途半端なポジションになってしまったのですが、しかし!
そのかわりスペシャル、というわけでもないのですが、今回は…いや正確には前回からなのですが、これはもう普通はプロとしては有料じゃないとお話しないという非常に重要なお話となっています。
しかもボリュームも、かなりのものになってしまいました!(汗)
なので、どうぞ是非ともしっかり読んでいただければと思います。

…というわけで本題なのですが、さて。
前回のお話、いかがだったでしょうか。
結構難しい、そんな意見が多かったかもしれませんね。

あるいは、成程そういうものか。
そうなった方もいるでしょう。

しかし!
それを実際の現場に落とし込むとなると、これがなかなかに難しい。
なぜか。
それだけリアルで具体的な「事象」を、「抽象」に結びつけることって、そんな簡単なものではないからです。

だって、当たり前です。
一つのある現実のその「事象」には様々な要因が、それこそ無限に思えるくらいの事柄が絡まっている。
そうして起こるのがある一つの「事象」です。
そしてそれがまた、いくつもあって、現実の現場というものは動いている。
つまりは、「現実とは複雑」なのです。
なので、そんな簡単に、あーこれだよ、と「真因」という「抽象」に結びつけるのは、はっきり言ってろくに考えてない。そういう場合がおうおうにあります。

この工場は、厨房は、「P(Plan)」だけがダメだ。
いや、「D(Do)」だけがなってない。
はたまた、「C(Check)」だけが問題なのだ。
じゃなくて、「A(Action)」だけに真因がある。

それ”だけ”に「決めつける」のは、ややながら無理があるものです。
どこも悪い。だけど、色々見てみると、ここに引っかかりがある。
ここをもうちょい整備して、改善してあげれば、もう少し管理はスムーズにいくだろう。
つまりはPDCAはスムーズに回るだろう。スパイラルアップ出来るんじゃないだろうか。
そういう感じで、ぜひとも捉えてみてください。

では、それを実際に見つけ出す方法をこれからお教えいたします。

つまり、前回に出したこの「問題」に、どうやって答えればいいのか。
その解答の導き出し方、です。

問題

あなたの工場・店舗では「管理」の「仕組み」、つまりはPDCAサイクル上のにおいて、「P」「D」「C」「A」のどの要素に問題を抱えていると思いますか?
またそれは、どんな理由からですか?

挿画:問題はP?D?C?A?

一番の問題と、その要因は何?

さて。
いきなりこう問われても、どこから手を付けていいか判らないですよね。
そりゃそうなんです。

でもあなたは、すでにこれを解くある大きな鍵を、もう持っているのです
そう。
それです!

その、問題をとく最大にして最重要の鍵こそが、「状況評価」の結果なのです。
それこそが、問題をとくヒントとなる重要な情報なのです。

挿画:状況評価

そこで、まずはあなたの工場や店舗の「状況評価」の結果をよく見てみてください。
そのなかで、とくに重要と思われる問題。とくにソフト(管理運用面)の問題に目を向けてみてください。
何故なら、「管理」がしっかりされていないから、うまく機能していないからこそ、そういう問題が生じるのだからです。
そしてそれらのなかで、これはちとやばいんじゃないかな、という根幹となるような問題を、3つくらいあげてみましょう。
例えば、こんな感じ。

【例】「状況評価」結果から見た、重要なソフト上の問題
  1. (発生リスク)汚水の滞留が放置され、昆虫が発生している
  2. (発生リスク)製造室内の壁面にカビが生えており、昆虫の発生源になっている
  3. (侵入リスク)外部マンドアが時々半開になっており、昆虫の侵入源になっている

どうでしょう。
幾つか挙がってくることでしょう。

では、これらから見えてくることはなんでしょうか。
ここで、これらの問題に対し、「何故?」と掘り下げます。

何故、この工場や店舗では、汚水の滞留が虫の発生に至るまで放置されているのか。
何故、この工場や店舗では、カビの除去清掃を、虫の発生に至るまでやらないのか。
「何故?」「何故?」「何故?」と、何度か極力客観視して、その問題の根っこを見てみるのです。

挿画:何故?何故?何故?

それは、そもそもとしてそうしたルール設定に欠けているのか。それがまと違いなのか。(P)
それとも、そういう決まりを現場が守らないのか。(D)
それとも、それを放置しておくことで起こされるリスクを共有していないのか。(D)
それとも、それ自体に気付いていないのか。(C)
それとも、やりたいのだけど手が回らないのか。(A)

そこには色々と理由があるでしょう。
でも、その中で「そもそも」となるものは何なのか。
そこを掴むのです。

さあ、このように進めていくと、やがて前回の表で見たような工場を管理する仕組み上の問題要因、いわばシステム上の「真因」が見えてはこないでしょうか。

あなたの工場の防虫管理においての根本的問題とその要因は、次のどれでしょうか。
それはマネジメントシステム上、「PDCA」の一体、どの要素にあたるでしょうか。

「管理評価」とはリスクマネジメント自体の評価である

管理の「仕組み」のどこに問題があったのか。
あるいは、その「仕組み」がどのくらいに機能していたのか。
これを知ることで、「防虫管理」の問題点、つまりは昆虫というリスクマネジメントがどのくらい出来ているか、出来ていないかがわかるでしょう。
とどのつまり「管理評価」とは、そうしたいわば「防虫管理」というリスクマネジメント自体の評価を行うのが目的です。

つまり、「状況評価」によって現状把握できた、あなたの工場や店舗のリスクの度合いや状況。
それに対して、どのようにそれらを「管理」出来ているか、というリスクのコントロール程度。レベル。

本来的には、これら双方の評価をかけ合わせることで、現状、あなたの工場や店舗にあるリスクがどんなもので、どんな状況で、それをどこまで抑制できているのか。いないのか。
またそれはどんなメカニズム、「仕組み」の不具合があるからなのか。
それらを知ることこそが、本来リスクアセスメントで行うべき内容なのです。

挿画:リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」のイメージ
リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」(イメージ)

「PDCAのこれが悪い」あるある例

どうでしょう、ここまでは理解がなんとなく出来ましたかね。

とはいえ。
いきなり、あなたの工場や店舗での防虫管理上のマネジメント要素のどれが悪いのか。それは何故か。
とそう突きつけられても、答えがすぐには出てこないかもしれませんね。

そこで、ここでは各要素別に、「これが弱い工場・店舗は、こういうところが多い」「これがダメなところというのはこういう工場・店舗だ」という解説を簡単にしてみましょう。

「P」がダメ:組織的な問題が大きい

「P(Plan:計画)」、つまり計画、設計、ルール設定。
そういう最初の段階でつまづいている工場・店舗というのは、そもそもとして組織的な問題が大きい場合、あるいは多く見られる場合が多いです。

何故なら、「管理」という組織単位として動くべきその根底自体が、そもそもとして出来ていないために生じていることがままみられるからです。
つまり組織として「管理」という根底が出来ていない、という場合が多いということです。

「管理」とはそもそも「目的」があり、「目標」があり、「方針」があります。
これはずっと言ってきたことですね。
で「(Plan)」がダメという工場・店舗は、これがそもそもおかしい、というケースが多いです。
つまりは、「目的」、「目標」、「方針」が、ダメだというケースです。

作成画:「防虫管理」とは

例えば「目的」意識が弱い。
つまりその工場・店舗に本来的に求められている衛生管理意識が薄い。
だから、「目標」自体がズレている。
こんなもんでいいよ、くらいに思っている。
あるいはその逆ということもありますね。あまりに目標が高すぎて、現実的じゃない、という場合。

もしくは、意識を持とうとしているけれど知識がないから、どう「目標」設定して、「方針」を建てるか、つまりどう防虫管理すればいいかがわからず、何もやっていない。
いきあたりばったりの「対策」ばかりをやってはいるけれど、「管理」はしていない。

こういうところが多い印象です。

「P(Plan:計画)」に問題のある工場・店舗の例
  • 管理の目的意識が薄い(衛生レベルへの意識が薄い)
  • 管理目標が現場の実情にマッチしていない
  • 管理の方針(手法)がズレている
  • 目標に対し、実行項目が過剰である(無理な実行項目に現場が追い付けていない)
  • 実行項目が曖昧、或は責任所在が曖昧

「D」がダメ:ヒトの問題を抱えていることが多い

「D(Do:実行」
それは誰がやるのでしょうか。
「機械」ではないですよね。
あくまで、人間、ヒト。ソフトパワー、です。

いくらご立派な取り決めや計画を作っても、結局のところ、やるのは人間なのです。
その「人」がやらない。
やれていない。
この場合は、「ヒト」の問題を抱えていることが多いです。

言ってみれば、「管理」とは「目的」「目標」「方針」のもとで定めた「P」に対し、いかに人間を動かすか、ということになります。
これが出来ていないのですから、「ヒト」の問題が、ここに関わっているケースが多いのは当然です。

教育訓練の不足。
現場能力の不足。
あるいは体制によるヒトとヒトの連携不足。
こういう「ヒト」由来の問題が関わりがちなのが、この要素です。
ヒューマンエラーによる問題が度重なっている場合も、この場合が多いでしょう。

「D(Do:実行)」に問題のある工場・店舗の例
  • 理実行項目を現場の従事者が理解していない、伝達されていない
  • 現場従事者への教育指導が不足している
  • 現場を管理すべき担当者がその重要性を理解していない、遵守意識が薄い
  • 実行能力自体にそもそも問題がある
  • 管理者側と現場側の解離、相互理解不足が大きい

「C」がダメ:何でも「やりっぱなし」

「C(Check:確認)」
確認、評価、効果判定、検証。
ここに問題がある場合、その多くが「やりっぱなし」です。
あるいは、「場当たり的」。
とにかく、なんとなくやってみた。以上。

そういう「やりっぱ工場」に多いのが、このケースです。
トップが、上司が、上長が、工場長が、いいから黙ってあれをやれというから、やってみた。以上。
こういう、強権型のトップダウン型組織にこのパターンが多いのも、特徴的です。
「あれをやれ」「いいからやれ」で、「P」と「D」を現場は、やら「される」。
でも、その繰り返し。
いいですか?「Do」は「やる」であって「やらされる」ではありません。

またその一方で、それとは逆の「自己流派」も、多いです。
「自己流」すぎて、「C」に及ばない、というパターンです。
「P」と「D」はやった。でも「C」をやらない。どうやればいいか、わからない。その重要性が、わからない。

こういう場合、「目的」「目標」「方針」はなんとなくだけどあるけれど、その「目標」をクリアしたのか。
それによって「目的」を果たし得たのか、それが「やりっぱなし」になっている。
つまり、「管理」にまで至らない。

その結果、問題が深刻化、顕在化するまでそれに気付かないことが多いです。

「C(Check:評価)」に問題のある工場・店舗の例
  • 防虫管理結果が曖昧(データ化されていない)
  • モニタリングデータが活用されていない
  • 問題は知っているが、評価に反映されていない、問題認識が甘い
  • 現場への実行指示を出したまま、放置している(改善確認と効果判定を軽んじている)
  • 日々のチェックが不足している

「A」がダメ:わかっているけれど何もしない

「A(Action:改善)」。
これができていない工場・店舗というのは、「問題放置」型というのが多いです。

何が悪いのかも、とりあえずわかっている。なんとなくわかっている。
でも、何もしない。
今すぐ致命的な何かにならないだろう。
そうタカをくくっている。

あるいは純粋に、お金がないので、出来ない。
いや、本当は応急措置的にもある程度出来るものも多いのに、それを理由にやらない。
「忙しい」から。
「稼働が止まらない」から。
こういうのも、それを後押ししてくれます。
まあ、理由なんてなんでもいいです。
どんな理由でもそれはさておいて現実的に、結果的に、リスクマネジメントとしては、リスクを放置している。

この「A」がダメな工場・店舗というのは、決まって問題が未解決のまま長らく放置されているケースが多いです。

「A(Action:改善)」に問題のある工場・店舗の例
  • 改善意識が薄い(諦念を抱えている)
  • 改善出来ない事情がある(コスト他)
  • 改善方法を知らない
  • 改善項目が山積していて、現場対応が追い付いていない

まとめ&「管理評価」を採点しよう

…ふうー。
かなりな長文になってしまいました。
もう、これだけで十分に有料級です。

では、まとめます。
「管理評価」を行うには、そのリスクマネジメントの仕組みである「PDCA」のどこに問題があるのか、を探っていく必要があります。

で、ここで必要になるのが、「状況評価」の結果。
なかでも、ソフト(管理運用)にまつわる評価結果です。
これらのなかで、重要と思われる問題、優先順位の高い問題などを並べ、そこから共通、通底する問題を見ていきます。
ここでは、「何故?」を活用するのがポイントです。
その問題が起こっているのは、何故?と見るわけです。

そこにおいて参考にすべきは例として書き出しました。
これらを参考に、自身の現場はどうなのかと考えてみてください。

そして。
もう十分に長文になってしまっているんですが。
これだけは加えないといけません。
そう、折角なので今回は評点を付けてみましょう。

ただし、先に注意を一点だけ。

本来、このようにPDCAサイクルの要因分析診断結果に評点を付けるのは余り意味がないことである、とぼく自身は思っています。
何故なら、これは本来、評点付けが目的なのでは全くなく、自身の工場において「システム上の問題」がどこにあるかを知ることこそが目的であるからです。
勿論管理レベル自体が高まることはいいことではありますが、しかしこうした折角の分析や診断が単なる評点の獲得を目的化したものになってしまうことだけは、是非とも避けるように意識すべきです。
よって点数付けは、はっきり言って主目的ではなく、判りやすさ重視の行為であることは、一応踏まえておいてください。

ということで、改めて。
厳密な数値化が出来るはずもありませんが、ここでひとまず自己採点してみます。
自分の工場は、大体どの程度のマネジメント水準なのか。
何となくで構いません。

ですが、
一応の採点基準として、私の経験上ですが、PDCA、と流れるサイクルですからこのぐらいの配分が妥当ではないでしょうか。
それぞれの要素がどのくらいに足りているか、評点し、10点満点で足してみてください。

「管理評価」の評点配分(10点満点)
  • P(Plan:計画):3点満点中E点(0~3点)
  • D(Do:実行):3点満点中F点(0~3点)
  • C(Check:評価):2点満点中G点(0~2点)
  • A(Action:改善):2点満点中H点(0~2点)
  • E+F+G+H=あなたの工場・厨房の「管理評価」評点

繰り返しですが、これはなんとなく、で構いません。
大体自分の工場・店舗がどこが弱く、どのレベルにいるのか。
あくまでそれを知るための分析だと考えてください。

挿画:ビジネスのイメージ

さあ、次回はそれらを使って。
自身の工場・店舗の総合評価をしてみるとしましょう。
それによって今後の進むべき「方針」が定まってくることでしょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:ビジネスのイメージ