★公開日: 2021年9月28日
★最終更新日: 2021年10月10日

皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。

さて、防虫管理実践編。
前回は特別編だったということで、いよいよここからが実践編。
まず最初にすべきは現状把握。あなたの工場や店舗はどのようになっていて、何をすべきか、を知ることです。
ではそのために何をしなければいけないのか。それを今回はお話いたしましましょう。

それでは、早速はじめましょう。

今日のポイント
  • 防虫管理の最初のステップは、「リスクアセスメント」である
  • リスクアセスメントは、「状況評価」と「管理評価」の2つの評価軸によって評価される
  • 状況評価」とは、主にハード(設備構造)やあるいはその取扱い(ソフト)を中心とした工場や店舗の現状に対しての評価のことである
  • 管理評価」とは、防虫管理に対する工場のマネジメント(管理)という、ソフト(運用状況)に対するシステム的な評価のことである
  • 最初は難易度の高い「管理評価」ではなく、「状況評価」だけを行うとよい
挿画:リスクアセスメント

 

CAPDから始める防虫管理

さて、リスクというものにはどんなものがあるのか。
それを貴方は、前々回「14」と前回「15」の前編後編を通じて、これまで学んできたかと思います。

防虫対策のリスク区分
  1. 環境リスク:虫が工場に誘引されるリスク
  2. 侵入リスク:虫が工場に侵入するリスク
  3. 拡散リスク:虫の生息が工場内に拡散するリスク
  4. 発生リスク:虫が工場内で発生するリスク
4つのリスクのための防虫対策イメージ

ここまではいいですよね。
判らない、というのであればまた上まで戻って、確かめてきてください。

さて、防虫対策を新たに構築するときは、何から始めればいのでしたっけ?
そう。
「PDCAサイクル」ならぬ「CAPD」です。

作成図:防虫管理におけるCAPDのイメージ

このことは「09」、「10」での「CAPDで始める防虫管理」にてお話したことですね。
これもまた、判らなければ上に戻って、確かめてきてください。

作成画:CAPDで始める防虫管理のイメージ
CAPDで始める防虫管理のイメージ

そして今回はその次です。
ではその「CAPD」のうちの「C」である「リスクアセスメント」とはどんなものなのか。
そしてどういうことを具体的にするのか。
それらについてお話していきます。

防虫管理の「リスクアセスメント」とは

リスクアセスメント」というのは、その名の通り、本来そこにあるリスクをアセスメント、調査することです。

この「リスクアセスメント」というのはしばしば労働安全などで一般的には取り入れられているものです。
そこにおいては厚生労働省いわく、「職場にある様々な危険の芽(リスク)を見つけ出し、それにより起こることが予測される労働災害の重大さからリスクの大きさを見積もり、大きいものから順に対策を講じていく手法」である、と解説しています。

ここで言っている防虫管理におけるリスクアセスメントも、これにほぼ同様の意味を持つものです。
工場や店舗の環境や状況などに対し、どんなリスクがあるのかを見つけ出し、そのリスクの大きさから優先点に対策を行うための評価を行う。
それが防虫管理における「リスクアセスメント」です。

リスクアセスメントにはいくつか方法が存在します。
ですが、ここではぼくが従来行ってきたことを、まとめていきたいと思います。

挿画:リスクアセスメント

リスクアセスメントの2つの評価軸

それでは実際に、「リスクアセスメント」とはどのように進めればいいのでしょうか。
具体的に話していきましょう。

まずリスクアセスメントは、次の2項目によって評価を下します。

リスクアセスメントの評価2軸
  • 状況評価
  • 管理評価

まずざっくりと説明してしまうと。

先の「状況評価」とは、主にハード(設備構造)やあるいはその取扱い(ソフト)を中心とした工場や店舗の現状に対しての評価のことです。

そして一方で後者の「管理評価」とは、そうした防虫管理に対する工場のマネジメント(管理)という、ソフト(運用状況)に対するシステム的な評価のことです。

挿画:リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」のイメージ
リスクアセスメントは「状況評価」と「管理評価」(イメージ)

先の「状況評価」というのは、割とシンプルだし簡単です。
なので、ここから行きましょう。

防虫対策を行う上での4つのリスク。冒頭で挙げたものですね。
これらが御社ではどのようにリスクとして具体的に存在しているのか。
それを確認していく、それが「状況評価」です。

防虫対策のリスク区分
  1. 環境リスク:虫が工場に誘引されるリスク
  2. 侵入リスク:虫が工場に侵入するリスク
  3. 拡散リスク:虫の生息が工場内に拡散するリスク
  4. 発生リスク:虫が工場内で発生するリスク

例えば、外部の照明が昆虫を誘引しているつくりになっていないか。(環境リスク
シャッターを開放などしていて、虫がどんどん入ってきている、なんてことはないか。(侵入リスク
工場や店舗内にちゃんと捕虫器があって、それが入ってきた虫をちゃんと捉えているのか。(拡散リスク
場内で虫の発生を抑えるようにちゃんと清掃されているか。カビなどは放置されていないか。(発生リスク

これらをつぶさにチェックしていく。
でその結果、この工場や店舗はどこが弱いのか、どこが問題なのかを知ること。
つまり現状把握、まさにCAPDの「C:Check」にあたるのが、この「状況評価」なのです。

挿画:4つのリスク

難易度の高い「管理評価」

ん?いや待てよ。
いや、「状況評価」ってのはなんとなくわかった。
現状の何が問題で、何がそうじゃないのか。
そういう現状の「状況」を評価する、ということだろう、と。

でもその後者の「管理評価」は、え、えーと、なんだって?
マネジメント?管理?システム?
何を言ってるんだ?

もしかしたらそうなるかもしれません。
それはそれで、いいです。
というのも、「状況評価」に比べると「管理評価」というのは、ぐーんと難易度があがっているものなのだからです。
なので、まずは入門としては「状況評価」を行ってください。
それで十分です。
飲食店などでの小ぶりの店舗や小さな厨房、工場などではこちらだけで、全然十分です。

ですが、ちょっと規模の大きな食品工場などでぼくが防虫管理を設計する、となると必ずこの後者「管理評価」を行います。
というのも「管理評価」というのは、先に結論から言えば、その工場で防虫管理がどう行われており、その管理の「PDCA」の一体何が弱いのか、を客観的に評価することだからです。

こんなこと、普通のPCO業者は、やりません。
やってません。
出来ません。
何故か。そういう能力を持っている業者のスキルが足りていないからです。

ですが、しっかり力量の備わった大手PCO業者の専門家であれば、必ずそれを行っている。
そうしたハイスキルなものが、この「管理評価」というものです。

「バカにするな」
彼らは、そういうかもしれませんね。
でも、これは事実です。
何故か。
そういうスキルを持った現場作業員は、数年もすれば現場から離れます。
やがてそっちの設計の専門部門員になっていったり、そのスキルを備えた力量者と認められて管理者になっていくからです。

また規模の小さなPCO業者は、ぶっちゃけ、そもそもからしてそういう知識がありません。
彼らは虫を駆除するスキルには長けていても、そうした「管理を構築する」ということを学んできていないからです。

つまり、逆に言えばそれほどに高度なことをするのが、この「管理評価」です。
ですから、一般的にはこれらはスルーしてしまってもかまいません。
やがて数年かして、立ち戻るかたちで取り組んでみてください。

挿画:考える女性

まとめ

今回は「CAPD」の最初の「C」で何をすべきか、についてお話いたしました。
それは「リスクアセスメント」です。

さて、「リスクアセスメント」は次の2つの評価軸によって総合評価されるものです。

リスクアセスメントの評価2軸
  • 状況評価
  • 管理評価

ですが、このうち「管理評価」はちょっと難易度が高く、敷居がかなり高いものなので、ここでは「状況評価」に重心を置いてお話していきます。

もちろん、「管理評価」についても別にお話しますので、ご安心ください。

では、次回はその「状況評価」を具体的に行う方法を、お伝えいたします。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

挿画:働く女性

 

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