★公開日: 2021年9月14日
★最終更新日: 2021年9月18日
皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。
防虫対策のプロがその基礎を「本気で」教える、このシリーズ。
がっつりと基礎中の基礎からお話してきましたが、そろそろそうした基礎知識を踏まえて実践へと向かいたいと思います。
そんなわけで9回目、10回目と二回を使ってお話するのは、防虫管理をどのように貴方の工場に導入すればいいのか、というお話です。
そろそろ本格的、具体的に考えていきましょう。
なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)
それでは、早速はじめましょう。
今日のポイント |
|

防虫管理をどうやって始めるのか
(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)
前回までで、工場や店舗にいる虫をどのように捉えればいいか、ということを学んだかと思います。
それでは次のステップにいきましょう。
工場に防虫管理を導入する、というときに一番悩むこと。
それは「一体何をすればいいかわからない」という、根本的な話かと思います。
ぼく自身、20年以上そういうお客さんに、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!
マジで何度も出会っては、ここからやってはどうですか、というアドバイスをしまくってきた身です。
そんなぼくが、ではどのように工場に防虫管理を導入するかを、教えます。
すでに自社、あるいは外部業者に委託している、というかたは、これを読みながら、果たして自身の工場や店舗での防虫管理にマッチしているか、考えてみてください。

管理の「仕組み」とはPDCAサイクルだ
さて、「管理」とは何だったでしょうか。
そう、これまで何度となく繰り返してきましたね。
最初に解説した通り、「管理」とは定められた「管理対象(領域)」に対し、「目的」と「目標」と「方針」を定め、それに従って「PDCAサイクル」を駆動させることを言います。


そして「防虫管理」もまた「管理(MANEGEMENT)」ですから、当然基本的には変わりません。
つまり、工場や店舗内という「管理対象(領域)」に対し、「虫による異物混入リスクを減らす」という「目的」のため、管理目標値という「目標」を設定し、防虫管理計画という「方針」にしたがって「PDCAサイクル」を駆動させる。
それが防虫管理です。
さてこれまでその「PDCAサイクル」についてはそれほどまでに語ってきませんでしたね。
もっともこのPDCAサイクルについては、今更説明するほどでもないでしょう。
まあ、一応すごく簡単に説明だけしておきます。
おっと!
「そんなもん知っているよ」、という方も読み飛ばさずに軽くでいいですから目を通してみてください。
きっと発見があるはずですよ!
さて、「PDCAサイクル」とは、「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(確認)」→「Action(是正)」(→「Plan(計画)」…)を絶えず繰り返すことによって「管理」を継続的に改善していく、という概念のことです。
PDCAサイクルの要素 |
|

PDCAサイクルの「P」とは「Plan(計画)」、つまりは「管理の設計」、「決まりごとを設ける」、「ルールの制定」です。
つまりは、「管理対象(領域)」に対し、その管理の「目的」を明確にして、そのための「目標」を設定し、それを達成しうる「方針」を作る。
それが管理におけるPDCAサイクルの「P」です。
食品製造の衛生管理においては、場内ルールを作ったり、教育計画を作ったりというのも、ここに加わります。
そしてそれを次の「D」、つまりは「Do(実行)」で行います。
「P」で設けた取り決めにしたがって行うのが、「D」です。
なお、衛生管理においては、ここには「従事者に対する衛生教育の実施」というのも含まれます。
そしてそれを行ったことを文書化、記録する、というのも衛生管理においては重要な「D」の項目です。
そして「D」で行ったことを次の「C」、つまりは「Check(確認)」で評価・検証する。
つまり「P」で定めたことを「D」で実際に行って、その効果がどうであったか、しっかり出来ているのか、「目的」と「目標」、「方針」を踏まえているのかを評価・検証する。それが「C」です。
ちなみによく間違えられますが、防虫管理において、モニタリングというのは実はこの「C」の項目です。
なぜならば防虫管理がその「目的」と「目標」、「方針」を果たしているかを捕獲昆虫数によって評価・検証する行為こそがモニタリングだからです。
そして「C」での評価に従って、もし問題があるようだったらそれを直す。そんな「A」は「Action(是正)」、つまりは改善活動や問題解決、修正です。
防虫管理ではモニタリングの結果に従って、もし問題があれば、例えば工場内でコバエが内部発生していたことがわかったのであれば、駆除施工や清掃、補修などを行い、改善につとめます。
それが「A」です。
かくしてP、D、C、Aとつなげてきた活動を、またPに戻ることで、サイクルを回していく。
そしてそれを繰り返し行うことで、よりそのサイクルを成長、向上させていく。(スパイラルアップ)
それが「PDCAサイクル」です。

PDCAはオワコン?
一点だけ先に断っておきます。
実はこれ、声を大にして言いたいことでもあります。
さて、この「PDCAサイクル」は、どこにでも使える汎用的な考えです。
ですから、しばしば「意識高い系」用語、「コンサルビジネス」用語としてあちらこちらで使われ陳腐化している節があります。
その結果、あまつさえ出てくる「PDCAオワコン」論。
あのですねえ。
得てしてそういう輩こそ、「PDCAサイクル」の重要性を本当に理解せず、ウワッツラで捉えているものです。
はっきり言います。
こういう、この手の「PDCAオワコン」論には一切、耳(目)を貸さなくて結構です!
なぜか。
ITだの金融だのなんだの他の業界のことはぼくは知りませんが、少なくともこの食品衛生の世界においては、この「PDCAサイクル」はことさらに重要です。
なぜなら、HACCPもISO22000もみんな、この「PDCAサイクル」に基づいて作られているからです。
具体的に言うなら、これら「マネジメントシステム」の根幹とはまさにこの「PDCAサイクル」そのものです。
つまりそれは、「マネジメントシステム」=「管理の仕組み」とは「PDCAサイクル」だということです。
だからこの食品衛生の世界で「PDCAはオワコン」と言うことは、それらを差してそう言っているにほかなりません。

「CAPD」で「管理」に挑む?
このように管理の根幹である「PDCAサイクル」ですが、それを踏まえながら、さてこれからが寧ろ本題です。
PDCAサイクルというのは確かにある程度確立された管理を進めるには有効な手段です。
だから既にこうした「管理」の仕組み(システム)を完全に社内構築しているようなお客様ならいいのです。
しかしもし貴方の工場や店舗が、初めて本格的な防虫管理に挑む、
或いは、そこまで企業組織としての管理体制が整っていない、という方においては、こうした導入はやや敷居が高く思われることでしょう。
中小規模の工場であれば、なおさらそうだと思います。
そこで。
私は、まず防虫管理を行うのであれば、「PDCA」ではなく、
「CAPD」から始めることを強くお薦めしています。
いや、企業規模に関わらず、
およそほとんどのお客様は、防虫管理を新たに行うにあたり、
まずは「CAPD」から手がけたほうが絶対によろしかろうと、私は強く主張したいところです。
ではその「CAPD」とは一体何でしょうか。
少し長くなってきてしまいましたので、それはゆっくりと後編で解説することにしましょう。

まとめ
今回は、前編、後編と二部にわたって「CAPD」についてのお話をさせて頂いています。
そしてこちら前編では、PDCAサイクルの基礎的な説明と、「CAPD」というものを紹介させていただきました。
次回の後編では、ではその「CAPD」がいかなるものであるかを、詳しく説明していきたいと思います。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
