★公開日: 2021年9月8日
★最終更新日: 2021年9月18日
皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。
防虫対策のプロがその基礎を「本気で」教える、このシリーズ。
6回目、7回目と「虫をどのように区分するか」を前編・後編の二部編成でお届けしたばかり、なんですが!
もう少しだけ、書き加えておきたかった「補足」というか追記というか、触れておくべきことがあるので、今回はそのプラス分ということでお話したいと思います。
それでは、早速はじめましょう。
今日のポイント |
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Contents
「要因」で虫を区分する
さて、皆さん。
前々回から前回にかけての二部構成で、「防虫管理」の一般的な意味でいう、基礎中の基礎。
「外部侵入」と「内部発生」というものについて、前編・後編でお話させていただきました。
これらで話した重要なポイントをまとめると、少し長いけれど、次の通りになります。
これまでのポイント |
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詳しいお話は、前編および後編をじっくりとお読みください。
今回は、これらを踏まえた上でのものとなります。
つまりは、言うてしまえば補足回です。
なんですが、じゃあおまけなのかよというと、必ずしもそうではありません。
かなり大事なことを話します。
どうぞ、読み飛ばしたり、読み漏らさずに。
そしてせめて、下のクイズだけでもちょっと覗いてみてみてください。

すぐ外で発生したコバエは「内部発生」か
さて。
このようなお話をすると、たまに次のような質問を受けることがあります。
それを逆に、皆さんにクイズとして出したく思います。
はい、その問題が、これです。
問題 |
工場や店舗のほんのすぐ外の側溝で発生したコバエは、内部発生要因昆虫なのですか? |
どうでしょうか。
皆さん、どう思いますか?
いや、これはすぐ外で「発生」しているって言っているんだから、「内部発生」だろ?
いや、これはすぐ「外」って言っているんだから、「内部発生」じゃないだろ?
どっちともそれらしく聞こえませんでしょうか。
これ、かなりよくある話ですし、よく聞かれる質問です。
例えば、工場や店舗の敷地内のすぐ外にあるグリストラップで、コバエが多量に生息している。
例えば、工場や店舗のすぐ脇を走っている排水溝で、虫が発生した。
こういう場合は、「内部発生」とは呼ばないのか。
では、これらは一体どのように考えればいいのでしょうか。

「内部発生」の「内部」とは何か
さあ、この問題。
問題 |
工場や店舗のほんのすぐ外の側溝で発生したコバエは、内部発生要因昆虫なのですか? |
どうですか?答えが出ましたか?
要するにこの問題は、「内部発生」の「内部」とは何を意味しているのか、ということです。
これを発展させると、同じような意味から、では「外部侵入」の「外部」とはどこのことを言っているのか、ということにもなるでしょう。
でも、もしかしたらここまでをよく読んでこられた方には、あるいは簡単な問題だったかもしれませんね。
すでに何度か、これまでのお話でぼくはヒントや答えになりそうなものを出してきていますからね。
さて、答えをサクっと教える前にちょっと引っ張り引っ張りで、少しばかりこれらを考えながらそこに至るとしましょう。
まず、こういう質問者は、「管理」について、少し考え直す必要があります。
最初に、私は、「管理」とは、というお話をしました。

前回までもお話しました。
管理にいける「管理対象(領域)」の問題です。
「管理」には、必ず「管理対象」が、「管理領域」が、存在します。
「管理」には、まず「管理対象(領域)」があって、
そしてその上で、その「管理対象(領域)」においてその管理を行うなんらかを遂げるための「目的」があり、
その「管理対象(領域)」がそれを果たすために目指すべき「目標」があって、
そしてその「管理対象(領域)」がそのために行うべき「方針」がある。
この「管理対象(領域)」、つまり「領域」ということをここでもう少し取り上げてみるとしましょうか。

「管理対象(領域)」という存在
さて、この「管理対象(領域)」という考えは、意外と盲点になりがちなのですが、よくよく考えてみればそりゃそうだろという、「管理」においては必ず「あるべき存在」であることがわかるかと思います。
例えば、健康でも美容でも何でもいいんですけど、もし「自己管理」だといったら、その対象は、自己、あるいは自己の生活環境などが「管理対象」、「管理領域」となりますよね。
他人は、あくまで管理領域外ですよね。
他人とのお付き合いにおける「自己管理」といって、対象外、領域外になる接点はあったとしても、それは所詮は接点であって、やっぱりその対象、領域はあくまで自分に他ならない。
他人、つまりは「管理外部」との接点、つまりは境界線において、「管理内部」つまりは管理の対象、領域内たる自分をどうするかってものじゃないですか。
これ、わかりますよね?
もう少し例を出しましょう。
企業における、「財務管理」だったらどうでしょうか。
その管理の対象は自分の会社、或いはなんらかのそうした業務であれば、委託されたお客さんの会社が「管理対象」、「管理領域」ですよね。
よその会社の財務は、当然ですけど管理領域外ですよね。
これなんかわかりやすい。
やっと連載が再スタートした、あの漫画もそうですよね。
自らのコントロール下となる管理対象、領域を広げて明確化させ、展開させる。
ゆえに、
「領域展開」。

「伏魔御廚子!」
あれさー。野薔薇さんってホント死んじゃったの?
てことは今ヒロイン不在ってこと?
もしかしてあの殺戮人形がヒロイン候補なんの?
…と話題がズレそうになるのを戻すとしてですね(汗)。
とどのつまり「防虫管理」にも同然ながら、「管理対象」、「管理領域」というものが存在します。
例えば「工場の防虫管理」、ということは、その管理対象は「自分の工場」の中です。
工場の外は、管理対象外、となります。
つまり、内部発生の「内部」というのは、「工場の中」のことです。
そして管理外の、つまりは領域外のところから入ってくるから、「外部侵入」なのです。

いや呪術廻戦ネタはもういいから。
工場のすぐ外は「内部」なのか
いや、そこまではわかるんだよ、でもすぐ外はどうなんだ。
そういう声がすぐに返ってきそうですね。
これについては、その前提として
「では貴方はどこまで管理ができますか?」
というのがあります。
あなたはどこまでを自己の管理領域とできますか。
どこまでを様々な要因をもたらす自然環境という外部要因、管理の「外部」のものとせずに中のものと出来ますか?
そりゃあ隣の施設の土地内はさすがにどうも出来ないだろう。
でも工場の敷地内はどうだろうか。
成る程、ではそこを完全に管理出来るのですか?
自然現象を、雨や風を、貴方はコントロール出来ますか?
突発的なすぐ付近環境での変化、例えば緑地帯に風に飛んできたアブラムシの発生を、あなたは抑制できますか?
あるいは、その見えている緑地帯ではなく、その下の土中から梅雨明けくらいに巣立ちのために大量に出てくるアリを、あなたはコントロール出来ますか?
そこに生えている樹木が秋冬に落とす落葉を、あなたはコントロール出来ますか?
このように敷地内とはいえ、そしてそこに例えば緑地整備や排水管清掃など、多少の働きかけは出来るとしても、やはりコントロールが完全に及ばない範疇は、あくまで「管理領域外」とすべきです。
なぜならそれは、あなたの「管理」が及ばないエリア、「領域」だからです。
つまり。
あくまで内部発生の「内部」とは、「管理領域内部」である。
そして、外部侵入の「外部」とは、「管理領域外部」である。
これが最大の前提、原則になります。

この図で考えてみるといいでしょう。
ちなみに○は管理出来るもの、つまりは「管理対象内」
△は難しいもの、×は不可能なもの、という意味です。
例えば、下水内で発生している昆虫は、薬剤などを流せば多少は駆除出来るかもしれませんが、完全にコントロールは難しいですよね。
なぜなら、下水というのはもう管理の外に出てしまったエリア、つまりは管理領域外だからです。
そしてその場合、ここで発生したコバエなどは「内部発生」なのでしょうか。
いいえ、違いますね。
だって下水というコントロール不可能な「管理領域外」から生まれて育って発生したものが、工場の中という「管理領域内部」に入ってくるのですから、「外部侵入要因昆虫」となります。
はい、これが答えです。
答え |
いいえ。 工場や店舗という「管理対象(領域)」の外で起こった問題が、その「管理対象(領域)」の中へと影響を及ぼそうとしているのですから、これは管理の「内部」での発生ではありません。 よって、「内部発生要因昆虫」ではなく、またその昆虫がもし工場内や店舗内という「管理対象(領域)」内へと侵入してきた場合には、「外部侵入要因昆虫」となります。 |
どうでしょうか。
ご理解いただけましたか?
勿論ですが、工場の外周設置のグリストラップや緑地帯などもそうでしょう。
ここ、割とプロでも間違えて考えている人は多いです。
こういう人は、しっかりと腹の中で「内部発生」と「外部侵入」という基礎的な事象を踏まえてまともに考えていないから、そういう理解に至るのです。
プロとしては失格です。

まとめ、とさらなる補足
以上、補足と称しながら、結構な量をお話してしまいましたね。(笑)
まず最初の問がこれでした。
問題 |
工場や店舗のほんのすぐ外の側溝で発生したコバエは、内部発生要因昆虫なのですか? |
これに対し、答えがこちらです。
答え |
いいえ。 工場や店舗という「管理対象(領域)」の外で起こった問題が、その「管理対象(領域)」の中へと影響を及ぼそうとしているのですから、これは管理の「内部」での発生ではありません。 よって、「内部発生要因昆虫」ではなく、またその昆虫がもし工場内や店舗内という「管理対象(領域)」内へと侵入してきた場合には、「外部侵入要因昆虫」となります。 |
これらにおいては、管理の対象、領域という考え方が重要になります。

と、ここまでが今回のまとめです。
そして補足をいくつか、またしていきますね。
まず一つ。
尤も多くの場合、そうした「管理領域」は曖昧なものとなるでしょう。
ですが、まずはこのように「管理領域」を有る程度設定し、管理していくことが有効です。
これはシンプルに、そういうものです。
それからもう一点。
ここを、誤解なきように。
「では管理領域外である外部環境、例えば敷地内の緑地帯には何もしなくていいのか」
と誤解される方がおられると困りますので、最後に補足しておきます。
私がここで解説しているのは、あくまで「管理領域」の話です。
ですから、管理領域としての、例えば「工場内(管理領域内)である前室」と「(管理領域外としての、例えば)植栽などの緑地帯」では、防虫対策が違いますよ、ということです。
つまり、防虫管理における管理対象かどうかは、防虫対策の範疇とは異なる、ということです。
…………え?
え?
ちょ、え?
えっと、何?
この人、最後にいきなり何言い出してんの?
そう思うかもしれませんが、やむなしです。
大丈夫、これらについては以降もゆっくり解説していきます。
まずは今のところは置いていただいても結構です。
とりあえず、防虫管理という以上、管理の領域というのがしっかりと定められていて、そしてその領域外部からやってくるものが外部侵入であること。
そしてその外部においても、ある程度のなんらかの対策はすべきでしょう、放っておいてもいいもんじゃないですよ、という断りを最後にしただけです。
このお話は後日詳しくいたしますが、とにかくここでは、決して外部環境はどうなろうが放置せよ、と言っているわけではないことを、どうか誤解しないでください。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
