★公開日: 2021年9月1日
★最終更新日: 2021年9月1日
皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。
防虫対策のプロがその基礎を「本気で」教える、このシリーズ。
そろそろ4回目と勢いがついてきました。
今回は、防虫管理における「ソフト」と「ハード」の捉え方についての話をさせていただきます。
ハード?ソフト?え、なんのこと?コンタクト?え、夜?
ちげーよ!真面目にいきますからね!
それでは、早速はじめましょう。
今日のポイント |
|

Contents
前回のおさらい:「衛生管理屋」の仕事とは?
さて、本来に入る前に、前回のお話を少しだけ振り返ってみます。
というのも今回のお話というのは、その前回のお話の上に成り立っている話だからです。
そのため今回の話を理解するためには、前回の話を踏まえる必要があります。
そして結論から言いますが、この考え方は防虫管理において非常に重要な基礎となるものです。
というのも、これを間違えてしまうと防虫対策を行う上で効果が変わってくるからです。
つまり、何をいっくらやっても効果がない、ただコストを払うだけで終わってしまう、ということになりかねない、ということです。
では振り返りです。
前回は、私たち「衛生管理屋」がどのようなことを仕事としているのか、その根幹を踏まえながら、工場の防虫管理の本質についてのお話をさせていただきました。
つまり、防虫管理とは「評価」、「問題」、「要因」、「対策」という4つの要素で出来ているのだ、ということです。
「防虫管理」とは |
|

つまり工場において、これらの4要素を適切に行うことが、我々の衛生管理、防虫管理における重要な仕事です、というのが前回でのお話でした。
さあ、今回はここからもう少しだけ、先に進みます。
その要因は「ソフト」か「ハード」か
さて、これらの4要素のうち、②「問題」に対しての③「要因」について、それらを各々、次のように分けて考えていくことが重要になります。
つまり、ある問題が生じたときに、当然ながらその原因となっている「要因」があるはずです。
そして、その「要因」とは、「ソフト」つまり「管理運用面」での問題なのか、それとも「ハード」つまり「設備構造面」での問題なのか、それを分けて考える必要がある、ということです。
要因を分析し、区分けする |
|

ソフト(管理運用面)的な要因
「ソフト」とは、管理運用におけることがら、つまりは「人(ヒト)」に関する事柄です。
管理運用。
何かを「管理」するのも、「運用」するのも、結局は人間(ヒト)ですよね。
こうした人間に関する問題、人に関しての「管理」、あるいは何かを人が使うことに対する「運用」上での問題。
或いは情報、サービスといったものが不足、不適切、不十分なことによる問題。
これらを「ソフト」的な要因、あるいは「ソフト」上の要因、と言います。
防虫管理上においてであれば、例えば場内の衛生ルールであったり、或いは従事者の教育に由来するものであったり、清掃や整理整頓などの5Sに基づくものであったり。
いずれにせよ、それらは「ヒト」的な要素に不具合が起因している問題であり、それに対して対策提案をしなければいけない状況のこと。
それらの「管理運用」に由来ている要因を、総じて「ソフト」上の要因だと考えましょう。
防虫管理における「ソフト」上の要因例 |
|

ハード(設備構造面)的な要因
一方で、「ハード」とは、設備構造としての「モノ」に関する事柄です。
工場も店舗も、モノで囲まれています。
そのモノを動かし管理するのが人間(ヒト)=「ソフト」でしたが、そうして動かされる機械や施設、あるいはその場となる建屋自体がモノ=「ハード」です。
これらのハードにおける問題要因を「ハード」的な要因、あるいは「ハード」上の要因、と言います
例えば、建屋自体や機械自体の構造的な不具合、劣化や破損、故障や欠陥などで生じているというような、モノに対して不具合が起因している問題。
或いは器具、機械の不足や不適切さによって問題が発生しているような場合。
そして、これに対して補修工事や購入・導入の必要な、設備投資が対策として求められる状況のこと。
それらの「設備構造」に由来した要因を、総じて「ハード」上の要因だと考えましょう。
防虫管理における「ハード」上の要因例 |
|

「対策」の効果はソフト・ハードの「要因分析」で決まる
実はこの考え方は、衛生管理においてもさることながら、なかんずく防虫管理を考える上で非常に重要になってきます。
何故でしょうか。
知れば知るほどに、虫というものは面白いほどにその環境を非常に反映させて生きる生物です。
虫は多種多様であり、それぞれ生態が異なります。
そんな虫から工場や店舗を守る、つまりは防虫管理を行っていくためには、その「環境」についての対策を行わなければいけません。
この話は、もう少し先でじっくりと話そうと思っていますが、先回りするかたちで少しだけ触れておきます。
例えば、貴方は工場や店舗での防虫管理の責任者だとします。
そんな工場や店舗の中で、仮に1匹の昆虫を見つけたとします。
貴方はそれをどう捉え、どういう措置を指示しますか?

ここでようやく、これまでの知識が役立つことになります。
まず、そこに「虫がいた」という現実的な事実。
これは「虫がいた」という②「問題」ですね。
では次。
その虫がいたのはなぜでしょうか。
どうして虫はそこにいたのでしょうか。
これが、③「要因」です。
そして貴方は、この「要因」、「虫がいたのはこういう理由だからだ」に対して、対策を行わなければいけません。
その虫をつぶしておしまい、というのも一つの手でしょう。
ですがそれは暗に、③「要因」に対して「たまたま紛れこんできた、危険の少ない虫だから」という判断をしているからでしょう。
ぼくらもそういうときはあります。
「突発的な迷入」と専門用語で言います。
ここに虫がいた「要因」は、たまたま何かで入り込んだだけに過ぎない「突発的な迷入」だ、というわけです。
でも常にそうだとはいえませんし、またそうだとしたって何らかの要因があるはずです。
例えば、「資材に付着していた虫を、たまたま場内に持ち込んでしまった」、とかね。
そうであればこの要因は、「資材・包材の持ち込み管理不足」というソフト上の要因となります。
いずれにせよ。
「要因」とは、「何故?」というものです。
だから、この「何故?」の判断を間違えると、問題の解決が出来ません。
だから対策が効果を果たせなくなります。

ソフト・ハードの要因を間違えるとどうなってしまうのか?
例えば、先の話に戻るとして。
この虫は内部発生、つまり「工場内の清掃が足りなくて、発生してしまっていた」ものだとするとしましょう。
これはつまり、「清掃不足」。典型的な「ソフト」上の要因ですね。
そのような、「ソフト」(管理運用)面での不具合によるものだとしたら、当然ながらこれには「ソフト」(管理運用)面の④「対策」が必要ですよね。
だったらいくら「ハード」的に新しい設備を導入したって、この問題には清掃強化という「ソフト」面での対策をしないと余り意味がないでしょう。
そうではなく、今度は、例えば建物に破損があって、そこから入ってきたものだったとするとしましょう。
これは「ソフト」ではなく、設備構造的な「ハード」の問題ですよね。
このような「ハード」(設備構造)面での不具合によるものであれば、当然今度は逆に、「ソフト」ではなくて、「ハード」(設備構造)面の④「対策」が必要になってきます。
そうなると今度は、「ソフト」的な対応としての清掃をさせたって、まあ確かに工場が綺麗になること自体に多少の意味はあるかもしれませんが、少なくとも問題の根本的解決にはならないでしょう。
これらのことから、この「ソフト」(管理運用)と「ハード」(設備構造)という考え方をしっかり踏まえていくこと、それが防虫管理には大切なのです。

まとめ
第4回目の今回は、要因の分析における「ソフト」と「ハード」という考え方をご紹介いたしました。

この要因の「ソフト」「ハード」の区分けは非常に重要です。
なぜならそれによって対策の効果が変わってきてしまうからです。
そして、ですね、
いやだからこそ、というべきでしょうが、
実は!
これがプロにとっても、非常ーっ!に難しいのが、この世界だったりするんです。
これについては、また折に触れてお話していくとしましょう。
以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
