★公開日: 2021年8月28日
★最終更新日: 2021年8月28日
皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。
防虫対策のプロがその基礎を「本気で」教える、このシリーズ。
前回までは「管理」についての、一番最初で一番基礎となるお話でした。
続く今回の3回目では、ぼくら衛生管理屋のお仕事とはどのようなものであるか、についてお話しようかと思っています。
そしてこれが「管理」にどのように関わるかについてまでを、お話していくことにします。
それでは、早速はじめましょう。
今日のポイント |
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Contents
「衛生管理屋さん」の仕事とは?
さて、皆さん。
我々、衛生管理屋さん、防虫管理屋さんの仕事とは、一体なんでしょうか。
これを知ることは、自身の工場の防虫管理をどのように進めていくかを知ることでもあります。
勿論、これまで書いてきたように、衛生「管理」、防虫「管理」ですので、当然ながらある「目的」のため、「目標」を設けて、「方針」をたて、それに沿ってPDCAサイクルを回す。
そうすることで、食品衛生上のある「目的」を果たそうとする、
或いはそうした工場での営みをサポートする。
こうしたことがその主軸となっているのは言うまでもありません。
ですが、そんなぼくらの仕事において、中でも重要な4つの要素があります。
そう、衛生管理屋さん、防虫管理屋さんのお仕事の4大要素。
それは、ズバリ、次の4つです。
- 「評価」
- 「問題」
- 「要因」
- 「対策」
これがぼくらの仕事の多く、いやほぼ全てを占めているといってもいいでしょう。
これについて、今回はより深堀りしていくことにしましょう。

防虫管理は、評価・問題・要因・対策の4要素で構成される
ことほどさように、衛生管理屋の仕事とは、それ即ち「評価」、「問題」、「要因」、「対策」の4要素です。
つまりこれは、「防虫管理」はこの4つの要素で行われるものだ、ということと同意です。
「防虫管理」とは |
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ではこれらの要素を、順に見ていくとしましょう。

「評価」とは、
「評価」とは、現状について、それがいいのか、それとも悪いのか、その状況を診断し「評価」する、ということです。
総体的にはどうなのか。
問題があるのか、ないのか。
あるとすれば、それがどのくらいよろしくないのか。
その根拠は何なのか、何に基づいているのか、など。
そのためには、現状を反映したデータの集積が必要ですし、そのデータの分析・解説が必要です。
ですから「なんとなく」ではなく、どういった根拠に基づいてそれが導かれるのか。科学的な数値データがそこには必要です。
その上で、状況を精察・診断し、現状を把握します。
つまりはその後の改善や維持に向かう上での総合的な評価軸が、ここで定まります。
まず、最初にこれがしっかりされていないと、どのような状況で何をすべきなのかが定まりません。
防虫管理においてであれば、「評価」とは現状の清浄度評価(つまりは昆虫汚染進行状況と潜在リスクの評定)になります。
「評価」とは |
現状における各種集積データの分析・解析に基づいて、その状況を精察、診断し、把握することである。 防虫管理においては、現状の清浄度評価(昆虫汚染進行状況と潜在リスクの評定)がこれにあたる。 |
「問題」とは、
「問題」とは、先の「評価」に対して、それでは具体的にどう悪いのかを提示することです。
何が、何処が、どう、どのくらいに悪いのか。
その問題をはっきりさせることが、次に重要になります。
この場合も、生じている現象、事象として指摘できることが必要です。
「なんとなくこういうふうなことがありそう」ではなく、どのような問題が幾つそこにあって、重特性の高い問題はどれなのか。
それは現時点でどのくらい問題が進行しているのか。
また、その根拠となるデータはどれなのか。
それをはっきりと示すことが重要です。
防虫管理においてであれば、「問題」とは防虫対策上の問題点(外部侵入、内部発生)の指摘と優先順位の選定になります。
「問題」とは |
現評価結果に基づいてどこが何がどう悪いのか、現状の具体的事象・現象を明示することである。 防虫管理においては、問題点(外部侵入・内部発生)の指摘と優先順位の選定がこれにあたる。 |
「要因」とは
「要因」とは、先の「問題」に対して、ではその問題がどうして起きているのか。
その原因は何なのか、どこにあって、それは何故なのか。
その「根因」を探り、究明することです。
防虫管理においてであれば、昆虫の外部侵入要因、内部発生要因の指摘になります。
これが、一言で言うのは簡単なのですが、実はかなり難しく奥深いことでもあります。
何故なら「評価」と「問題」は数値評価によってある程度見えるものですが、「要因」というものは得てして隠れているものを探る作業だからです。
ですから、この「要因分析」こそがぼくらの仕事の腕の見せ所でもあります。
「要因」とは |
「問題」に対し、その「根因」を究明することである。 防虫管理においては、昆虫の外部侵入要因、内部発生要因の指摘がこれにあたる。 |
「対策」とは
「対策」とは、先の「要因」に対し、ではその要因をどのようにすれば改善出来るのか。その具体的な処方箋を示すことです。
防虫管理においてであれば、外部侵入要因、内部発生要因に対しての具体的かつ現実的な対策提案となります。
もっとも多くの二流三流の防虫業者にいえることですが、具体的対策といっても、ただ「シャッターの開閉管理を強化してください」、「掃除してください」では何の価値もありません。
こんなそんなわかりきっている提案ばかりをしてくる業者とは、契約を考えたほうがいいでしょう。
では具体的に、現実的にどうすればいいのか。出来ないのであれば、次はどうするべきなのか。
それが出来てこそ、わざわざコストを払う価値があるというものです。
また示すだけでなく、実際にそれを行って、「問題」を解決することで管理の「目的」「目標」達成に一歩進める。という行為も当然ながら含まれます。
ですから、これまたぼくらの腕の見せどころでもあります。
「対策」とは |
「要因」に対して、どうすれば改善・解決出来るのか、具体的かつ現実的な処方箋を示し、また実際に行うことで、管理における「目的」「目標」の達成に近づくことである。 防虫管理においては、外部侵入要因、内部発生要因に対しての具体的かつ現実的な対策提案がっこれにあたる。 |

衛生管理屋の仕事は「医者」と同じ
さあ、どうでしょうか。
ご理解できたでしょうか。
え、これでもまだ抽象的で判りづらいですか?
であれば、例えを挙げながら、もう少し噛み砕いてみることにしましょう。
ぼくたちの仕事は、しばしばお医者さんに例えられます。
これに例えると、もう少しばかり見えてくるかと思います。
つまり、この4要素は、お医者さんも同じだということです。
「防虫管理」は医者と同じ |
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ちょっと自分の体の調子がおかしくて、あるいはちょっと心配になって病院に行くことを考えてみてください。
みなさんが病院に行くと、お医者さんはどう対応してくれるでしょうか。
まず、貴方は健康なのか、そうでないのか。
健康だが問題があるのか、重要な今すぐ処置が必要な状態なのか、
まずはレントゲン写真や血液検査、問診その他、あれこれと検査を行って診察をしますよね。
で、そのデータにもとづいて診断結果、つまり①「評価」することでしょう。
次にお医者さんは、どこがどう悪いのか、貴方の体の②「問題」を告げるでしょう。
例えば、「胃に胃潰瘍ができている」だとか、ですね。
勿論、それも「なんとなく」ではなく、検査の結果に基づいてそれを指摘することでしょう。
それからその病気の病因について、問題への③「要因」を教えてくれるのではないですか?
「日々の暴飲暴食によるものだ」などと。
そして最後に処方箋を、つまりは問題に対する要因への④「対策」を、お医者さんは貴方に与えてくれるでしょう。
例えば「このお薬を飲んでください」、
「すぐに手術が必要だ」、
「生活改善をしてください」等々。
これはそのまま防虫管理にも言えることです。
ぼくらは、お医者さんと同様、貴方の工場や店舗を診断、①「評価」します。
勿論そのためには、幾つかの検査や調査が必要であり、それらの結果データに従ってそれを提示するわけです。
そして、様々なデータに基づいて、そこにある②「問題」を指摘します。
例えば、捕獲データからチョウバエ類が発生している、等。
或いは、金属の異物混入リスクが高い、等。
そして、我々はその③「要因」について、分析します。
日々の、この箇所の清掃不足だ、では清掃不足なのは責任部署の不明確さからだろう、あるいは清掃頻度とその方法が適切ではないからだ、等。
さらに、その「要因」に対して、④「対策」を伝えるでしょう。
例えば、
(お薬→)殺虫薬剤による駆除が必要だ、
(手術→)構造上の補修が必要だ、
(生活改善→)清掃による環境改善が必要だ、組織的な責任の明確化が必要だ、など。
これらの4要素が、どれだけ高度に出来るか。
言ってみれば、その「精度」こそが、我々の仕事の腕、プロとしてのレベルに他なりません。
言い換えれば、これがしっかり出来てこそ、理解してこその衛生管理屋、防虫管理屋なのです。
(だってお医者さんもそうですよね?)

衛生管理屋の4要素とPDCAサイクルの関係
そして、これらの4つの要素は、管理のためのPDCAサイクルの各要素それぞれにも関わるのです。
なかでもこれらは特に「Check(検証)」に関わる要素であります。
そう、このように衛生管理屋、防虫管理屋にとって、「管理」のPDCAサイクルの中でも、「Check(検証)」の要素は非常に重要なものなのです。

まとめ
どうでしょうか、
なんとなく衛生管理とは、防虫管理とはどういうものなのか、
少し見えてきましたか?
まずはこの流れを、よく覚えておいてください。
「防虫管理」とは、すべからくこの流れにしたがって行われるものですから。

さて。
先程の前項でこんなことをぼくは解説していました。
さらに、その「要因」に対して、④「対策」を伝えるでしょう。
例えば、
(お薬→)殺虫薬剤による駆除が必要だ、
(手術→)構造上の補修が必要だ、
(生活改善→)清掃による環境改善が必要だ、組織的な責任の明確化が必要だ、など。
当然ながら、これらの「対策」は「要因」に対して行うものです。
ですから、そこには「問題」を引き起こしている「要因」があって、それについてどう解決すればいいかということで、これらを例として出しているわけです。
いや、そりゃ当たり前だと思うかもしれません。
でもちょっと待って下さい。
一言で、「問題の要因」といっても色々と種類がありますよね。
それは構造上の問題なのか、それとも何らかをしそこねている運用上の問題なのか。
そこらへんはしっかりと区分けして考えていく必要があるのです。
ではどうやって区分けすればいいのでしょうか。
次回はその区分けについてお話していきたいと思います。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。
