皆様、こんにちは。
食品衛生コンサルタントの高薙です。
ネット上でもオフラインでも、ここだけしか「絶対に!」聞くことの出来ない神髄中の神髄、「プロが本気で教える衛生管理」を日々、お教えいたします。

防虫対策のプロがその基礎を「本気で」教える、このシリーズ。
前回の記念すべき1回目は、「管理」についてのお話でした。
PCO、「防虫管理」において最も重要で本質的な話であるがゆえに、少し抽象的で難しいお話をしてしまいました。
ですから2回目である今回はもう少し、違う角度からこの「防虫管理」について話していくことにしますね。
それは、「IPM」とは何か、という話です。

それでは、早速はじめましょう。

今日のポイント
  • IPM」とは、「Integrated Pest Management」の略で、日本語で言うと「総合的有害生物管理」という意味である
  • しかし、それを本質的に理解されていないケースがしばしば見受けられる
  • IPM」=「総合的有害生物管理」なのだから、当然「管理(MANEGEMENT)」としての「目的」と「目標」と「方針」がある
  • そしてそれらに向けて「PDCAサイクル」を回すことが、その本質である

 

「IPM」とは何か

皆さん、「IPM」というものをご存知でしょうか。
アルファベット三文字で、「アイ・ピー・エム」。
昨今の防虫管理において、必修とされているもの、それがこの「IPM」です。

PCO業界では、どの会社も、猫も杓子も「うちはIPMに基づいて防虫管理を行っています」と、口を揃えたかのようにそう言います。
判ってなくても、そう言います。
判ってなくても、そう言うように教えられているので、ナントカの一つ覚えのように、そう言います。
IPMってどこで叩き売りされてんの?そんくらいに、そう言います。
でも、実際は何も判っていません。

言葉で判っているつもりで、言葉を知っているだけで、実際のところは中身、なかんづくその本質が全く判っていません。
例えば、「管理」なんてものは中学生でも知っているけれど、でもその本質を前回のように判っていないように、この「IPM」についても所詮はそんな程度の薄っぺらい認識なので、結局その本質は欠片も判っていません。

では、「IPM」とは何なのか。
今回はそれについて触れていきたいと思います。

まず一般的な知識として、「IPM」とは、「Integrated Pest Management」の略です。
日本語で言うと「総合的有害生物管理」という意味になります。

うーん。
なんだか、判るようで判らない日本語ですね。
分解すれば、「総合的」な「有害生物」の「管理」。
つまりは「総合的(Integrated)」な「有害生物(Pest)」の「管理(Management)」。
それぞれの頭文字を取って、「IPM」です。

日本語でもう少し判りやすく言うならば、「有害生物」を「総合的」に「管理」する。
この「有害生物」というのは、要は昆虫類だと思ってください。あとはネズミも含みます。
つまりは、「総合的」に「防虫管理」を行う、それが「IMP」だということです

おいおい、ちょっと待て。
「総合的」って何をどう総合するんだよ、「総合」ってどういう意味だよ。
はい、そう思った方、いいですねえ、鋭いですね!
次の項でもう少しそれを深堀りしてみます。

ちなみにこの「IPM」というのは、元々は農業害虫対策のための考えでした。
しかしそれが近年、ここ十数年くらいでしょうか、PCOに取り入れる考え方が主流になっています。
尤も、「ビルメン」と「工場」での防虫管理については少々分けて考える必要があるでしょうが。

「IPM」をどう理解すべきか①「総合的」とは

では、「IPM」はどのように理解、解釈すればよいでしょうか。
前項で述べましたね、「総合的」に「防虫管理」を行う、それが「IMP」だ
で、何が「総合的」なんだ、というところまで話は進んだはずです。
それを踏まえて、次のステップに行きましょう。

まず、一番簡単な「IPM」の説明は、こちらにあります。
この内容に、一応、私も同意し理解しています。

以下、ここにある説明を以下、引用させていただきます。

総合」とは、様々な防除対策を組み合わせて行うという事で、
薬剤偏重による環境への悪影響を低減すると共に、
より効果的な防除を目的とした手法です。

具体的には、
予め防除対象生物や場所ごとに「維持管理基準」を定め、
事前調査により問題点や維持管理基準を超える場所をその都度見定め、
状況に見合った最適な防除対策を実施し、
実施後にはその効果をきちんと判定します。

はい、なんだかよく判らない文章に一見見えますが、これでも少しでも読みやすいように引用文ですが文字を大きくし、また勝手に太字&改行させていただいてます。
大丈夫、順番に解説しますから。

成程、ここには「総合的」の解説が出ていますね。
どうやら「総合」とは、「様々な防除対策を組み合わせて行う」ということだ、という。

これはどういうことかというと、「防虫対策」というのは多々あって、それらを組み合わせて行うのだ、ということを言っているようです。
その意は、古来的な薬剤をむやみやたらに使うような対策ではなく、例えば清掃だったり、設備の補修工事だったりと、様々な手法の対策を複合的に考える…といったように「一般的には」捉えられています。

勿論、それはそれで間違いではありません。
昔からこのPCO業界、ぼくが入った20年以上前は「まいてなんぼの薬剤」でしたからね。
そういう旧態依然とした防虫対策だけではなく、もっと広くあらゆる対策を複合的に行う、というのは環境への負担軽減という意味でも重要でしょう。
昨今の社会的な流れ、SDGsにも適合することなので、なにもケチを付けることではありません。

しかし。
それはそうとして、それじゃあ薬剤以外の「あらゆる対策」って何でしょうか。どこまで含まれるのでしょうか。
そして、ここに踏み込んでいないPCO業者が、現状の9割程度です。

例えば、こんな提案をしてくるPCO業者がいます。
「昆虫の発生要因になるから、清掃してください。」
以上。

いやいや、お金払ってそれですかあ?
そんな業者は、契約を見直したほうがいいでしょう。

大体、そんなこと現場だって知っています。
んじゃ、どのくらいの頻度で、何を使って、誰が行い、それを誰がチェックするのか。
そこまで踏み込まないから、問題の根源が解決されない。
つまり「あらゆる対策」には「仕組み」の見直しも、当然ながら含まれるのです。

おわかりでしょうか。
つまり「あらゆる総合的な対策」というのは、食品企業という組織が運用する管理の「仕組み」そのもの、それは管理者によるルールの見直しだったり、現場指導や従事者教育だったり、改善活動の取り組みようだったり運用計画だったり、そうした「仕組み」への対策をも織り込んでこそ、総合的対策となり得るのです。

おっと、ここから先は話がべらぼうに長くなってしまいますし、コンサルタントの有料情報となりますので、ここでは触れません。
ですが、この「総合的」というのを、ただ「薬剤だけを使わない」などと安直に理解しているPCO業者は余りに多く、無知だとしかいいようがありません。

「IPM」をどう理解すべきか②「管理」とは

さて、次にいくとしましょう。
その前に、ここで前回のおさらいです。
「管理」とは、何でしたか?

前回、ぼくはこう言いました。

「管理」、というからには
①まず「目的」があって、
②それを果たせうる「目標」があって、
③それに向かうための「方針」がなくちゃいけない。

それがここにも大きく関わります。

「管理」に必要なもの
  1. 目的:何のため
  2. 目標:このくらい
  3. 方針:こうやって

そうです、
「管理」とは、
「目的」と「目標」と「方針」があるものです。

そして、その意味でも「IPM」は、なるほど確かに「管理」です。
だって、しっかりここにも書いてありますよ。

もう一度判りやすく、少しばかり赤字や追記を加えて引用しますね。

「総合」とは、「様々な防除対策を組み合わせて(方針①)」行うという事で、
薬剤偏重による環境への悪影響を低減すると共に、
より効果的な防除を「目的」とした手法です。

具体的には、
予め防除対象生物や場所ごとに「維持管理基準(目標)」を定め、
事前調査により問題点や維持管理基準を超える場所をその都度見定め、
「状況に見合った最適な防除対策を実施(方針②)」し、
「実施後にはその効果をきちんと判定(方針③)」します。

これらを整理すると、つまり「IPM」=「総合的な防虫管理」というのは、次のような「管理」だということになります。

「IPM」は管理である
  1. 目的:「薬剤偏重による環境への悪影響を低減すると共に、より効果的な防除」
  2. 目標:予め防除対象生物や場所ごとへの「維持管理基準」
  3. 方針:「様々な防除対策を組み合わせて」、「状況に見合った最適な防除対策を実施」し、「実施後にはその効果をきちんと判定」する

どうでしょうか。
上の引用文は、このように「IPM」というものがこのようなものであることが、しっかりと明文化されていることがわかりますね。

ちょっと字面通りのこれでは、読む気もなくなるでしょうから(笑)、少し判りやすく、シンプルに、キレイなかたちにまとめ直しましょう。
つまり、こういうことです。

まとめ直し:「IPM」は管理である
  1. 目的:環境影響の低減、および効果的な防除
  2. 目標:防除対象生物や場所ごとに定められた「維持管理基準」
  3. 方針:様々な防除対策の組み合わせと、その適切性のための事後の効果判定の実施

そう。
このように、「IPM」とは、「有害生物」=生息昆虫に対する「管理(MANAGEMENT)」の手法です。

で、その手法(方針)は、大まかに言うなら前項のように「総合的」に行うこと。
そして当然、「管理」なので、
これらのためにPDCAサイクルを回す必要があります。

では、この場合の、つまりは「IPM」におけるPDCAサイクルとは、どのようになるか。
つまりこういうことです。

「IPM」におけるPDCAサイクル
  • P(Plan):「IPM」に基づいた計画と「維持管理基準」を設定し、
  • D(Do):最適な複合的対策を選択・実施し、
  • C(Check):その適切性への効果判定を行い
  • A(Action):効果がなければより適切な対策を総合的に模索する

さあ、いかがでしょうか。

このようにして捉えなおして見ると、どうも薬剤に頼らないこと(例えばモニタリングを行うこと)だけがその本質だと偏った解釈をされがちな「IPM」も、もう少し違った見方が見えてくるはずです。

まとめ:結局IPMも「管理」が重要!

このように、「IPM」の本質は「管理(MANEGEMENT)」です。
つまり、「総合的」に、「有害生物」(虫)を、「管理(MANAGEMENT)」する。それが「IPM」です。

いいですか、
この「管理」が、前回も話したように、実は重要なんです。

じゃなかったら、
例えば先のような「薬剤だけでなく、違った手法も様々取り入れる防虫対策」だったら、
「IPM=総合的有害生物管理」じゃなくて、例えば「総合的な有害生物“防除”」、でいいじゃないですか。

そうではなく、ではなんでここで「管理」なのか、ということ。
それは、「目的」をもって「目標」に向かい、そのためにPDCAサイクルをまわすことを意味しているから、です。
ただ駆除作業をするだけではない、そこに「管理」があるには、ここで話してきたようなそれなりの意味があるからなのです。

 

…さあ、いかがだったでしょうか。

ちょっと今回は2回目にしては難しかったかもしれませんね。
ですが、基本の考え方としては非常に重要なものでもあります。
どうぞ、何度も読んで噛み締めてみてください。
なにせ、普通はこのようなぐっと入り込んだような内容は、有料の講習会でないと話されないことですので。
そしてそんなことも、ここではガシガシと書いていきますので今後もお楽しみに。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。